サンシャイン 2057_論理的で見応えあり【8点/10点満点中】(ネタバレ・感想・解説)

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(2007年 イギリス)
2057年、太陽の活動が衰え地球は寒冷化した。太陽を蘇らせるため、マンハッタン島サイズの核爆弾を抱えた宇宙船イカロスが太陽を目指す。

© 2007 Twentieth Century Fox

8点/10点満点中 設定とストーリーが見事に融合したSFサスペンス

スタッフ・キャスト

『28日後…』のトリオが再集結

2002年に公開された『28日後…』は、ゾンビ映画の王道を組み合わせてジャンルの総括的な内容としつつも、走るゾンビという新機軸も打ち出した良作でした。SF・ファンタジー・ホラー界のアカデミー賞とも言われるサターン賞では最優秀ホラー映画賞を受賞。

この『28日後…』の監督(ダニー・ボイル)、脚本(アレックス・ガーランド)、主演(キリアン・マーフィー)が再結集したのが本作『サンシャイン2057』であり、こちらもまた宇宙ものSF映画の落穂拾い的な作品でありながらも、『2001年宇宙の旅』と『イベント・ホライゾン』を同時にやるような器用さも兼ね備えています。主にアレックス・ガーランドの資質だと思うのですが、このチームはB級素材の決定版を作ることに本当に長けています。

後に有名になる人達が出ています

劇場公開時には知名度よりも実力重視のシブいキャスティングだという印象を持ったのですが、その後に売れた人が何人もいるので、現在の目で見るとなかなか豪華です。

クリス・エヴァンス

出世頭はクリス・エヴァンス。公開時には『ファンタスティック・フォー』のヒューマン・トーチのイメージだったのですが、2011年からのキャプテン・アメリカ役でMCUの顔となりました。4月26日公開予定の『アベンジャーズ/エンドゲーム』にて真田広之と再共演するはずです。

ベネディクト・ウォン

MCU関係だと、エンジニア役のベネディクト・ウォンは『ドクター・ストレンジ』で書庫を守る魔法使いにして、修行中のストレンジに助言も与えるウォン役を演じています。また硬派なSFとの相性も良いらしく、『プロメテウス』『オデッセイ』『アナイアレイション-全滅領域-』などにも脇役で出演しています。

マーク・ストロング

そして現在見て驚いたのが、マーク・ストロングがサイコキラー役(というか、ほぼ化け物役)で出ていることです。彼が演じるピンバッカーは太陽光で全身が焼けただれた化け物であり、特殊メイクでほとんど顔が分からない上に、登場場面は編集で誤魔化されていて全体像の把握すら難しいのですが、ストロングはこんな役柄でも全力投球でやりきっています。まさかこの人が後にハリウッドの悪役イギリス人の筆頭となり、『シャザム!』でスーパーヴィランをやることになるとは、当時は誰も予測していませんでした。

本作のBlu-rayに収録のオーディオコメンタリーで、ダニー・ボイルが「彼は将来必ず有名になる」と言っていたことが印象的でした。まだ世間には見つかっていない有望株を発掘する能力も、映画監督には重要な資質なんでしょうね。

登場人物

イカロス2号の乗組員

  • キャパ(キリアン・マーフィー):物理学者。核爆弾のコントロールを担当するため、船内でもっとも重要性の高い人材。
  • カネダ(真田広之):船長。常に先頭に立つタイプで、クルー内での人望が厚い。
  • コラゾン(ミシェール・ヨー):植物学者。船内酸素を得るための菜園の維持管理と、酸素の残量計算も行っている。
  • メイス(クリス・エヴァンス):エンジニア。アクティブで船内でも特に目立つクルー。キャパと衝突することが多い。
  • キャシー(ローズ・バーン):パイロット。キャパとは寝室を共にしており、二人は恋仲にある様子。
  • ハーヴィー(トロイ・ギャリティ):通信士兼副船長。クルー内での発言力は弱いのだが、カネダ亡き後にはリーダーとなる。
  • トレイ(ベネディクト・ウォン):エンジニア。犯したミスへの自責の念から精神不安定となり、サールから自殺のおそれありと判断されて鎮静剤を打たれた。
  • サール(クリフ・カーティス):精神科医。クルーの相談役を務めている。

イカロス1号の乗組員

  • ピンバッカー(マーク・ストロング):船長

SF描写が良い

太陽光の当たっている面の灼熱状態と、絶対零度の日影部分という、通常の映画が見落としがちな宇宙空間の特性を映画の見せ場に活かしており、太陽に向かって突き進む宇宙船はどんな脅威にさらされるのかという点が深掘りされていることには感心させられました。

また、太陽を再起動させるための核爆弾がマンハッタン島と同サイズというハッタリの効かせ方や、これを作るために地球上のすべての核物質を注ぎ込んだので、もしイカロス2号がミッションに失敗した場合、人類は3号を作ることができないという点はSF的な発想で面白かったし、イカロス1号に搭載の核爆弾を予備として持っておきたいという本編の流れに繋げた点は、実にクレバーでした。

プロフェッショナリズムの描写が良い

情で話が進んでいかない

この手の映画で興ざめなのが、「俺が行く」「いや、私が」みたいな自己犠牲の押し付け合いなのですが、本作はそうしためんどくさい展開がないので、実に見やすかったです。情ではなく、ミッションの成功のためには誰が生き残るべきなのかという軸ですべての意思決定が進んでいくのです。

人類の存亡がかかったミッションで人ひとりの命がどうなるかなんて些末な問題でしかありません。しかも史上最大の核爆弾を投下するために太陽を目指すという、十中八九死ぬとしか思えないミッションへの参加者は死ぬ覚悟をして来ているに決まっているわけで、彼らが命に対して非常に冷淡な態度をとることは理にかなっているようにも感じました。

また、彼らがまったく情を挟まないことが、このミッションの重要性を観客に認識させることにも繋がっています。菜園の焼失後、もう地球に戻ることはできなくなったことが判明しても取り乱す者がおらず、「そんなことよりもミッションは大丈夫なのか?」という姿勢でいることが実に象徴的でした。

意思決定を重く扱っている

クルー達は二度、大きな意思決定を迫られます。

一つ目は、行方不明だったイカロス1号の救難信号をキャッチし、予定の進路を変更してでも1号のもとへ行くか、それとも進路を維持して1号を素通りするのかという選択。1号に搭載の核爆弾を回収することでミッションの成功可能性を高められる一方で、進路の変更自体にリスクがあり、メリット・デメリットを総合的に勘案した意思決定が求められるのですが、その際には民主的な多数決ではなく、核爆弾のコントロールを担当しているキャパの独断に委ねるという点がプロっぽくて気に入りました。『エイリアン: コヴェナント』など、これをうまく描けていない映画は意外と多いのです。かつ、進路変更に反対していたクルーも、キャパがやると決めた以上はそれに黙って従うという動きをとることも良かったです。

二つ目は、酸素不足でこのままでは投下地点までクルーが生存できないので、精神的に不安定で現状では何の役にも立っていないトレイを間引きしてミッションを守るかどうかという意思決定。ここでも情緒的な判断を下す者がおらず、ミッションを守るには誰かが犠牲にならなければならない。しかし役割を持ったクルーは最後まで生きていなければならないから、誰でもいいわけでもないという、冷静な意思決定が下される点にとても納得できました。地球の存亡がかかっている場面でくじ引きをして点火係を決めていた『アルマゲドン』に必要だったのは、こういう描写だったのです。

間抜けな失敗がない

私は、愚かな人物が足を引っ張ることで危機的状態が発生し、それによって進んでいくような映画が大の苦手なのですが、本作はその罠に引っかかっていませんでした。

きっかけはトレイのたった一つのミスではあるのですが、イカロス1号とのランデブーという予定にはなかった意思決定によって突貫での対応が求められ、トレイはいくつもある課題のほとんどをやりきったものの、たった一つ、進路変更に伴い遮光パネルの向きを変えるという作業のみを見落としており、そのことによって危機的状況が発生しました。

ただしトレイが決して無能なのではなく、そもそも無茶な指示に対して100%の力で対応したものの、人ひとりの頭で考えられる範囲には限界があって、どうしようもなくミスを犯してしまったという点が観客にも伝わるようにできているので、決して見苦しくはありませんでした。

その後は些細なミスが雪だるま式に大きくなっていき、計画自体が危うくなっていくという流れを作り出せています。

遮光パネルの破損

日傘でカバーできていない部分が船体に発生

予想外の角度での太陽光の反射が起こり、その反射を受けた菜園が火災で焼失

イカロスは酸素を生み出す機関を失い、投下地点まで酸素が足らない

さらに、リーダーのカネダを失ってクルーの統率がとれなくなる

最終的に一人の狂人に集約した点はちょっと微妙

最後に場を引っ掻き回すのは、イカロス1号から乗り移ってきたピンバッカー。「太陽様を人類風情がどうこうしようとは何事か!」と言ってミッションの成功を阻む殺人鬼と、生き残り組の攻防戦が最後の山場になるのですが、ここで『イベント・ホライゾン』のような安っぽい展開になるので、それまでの硬派な雰囲気が犠牲にされたような印象を持ちました。『イベント・ホライゾン』でも思ったのですが、基本的には生身の人間のはずなのに、狂うと怪物並みのパワーを発揮するようになるのはいかがなものかと。

ただし、そういうものだと割り切って見れば、これはこれでよく出来てはいます。4人しか生き残っていないはずの船内に5人目がいるというAIからの指摘から一気にアクセルがかかり、投下時刻が迫る中でミッションの準備も進めねばならない状況でピンバッカー対策も必要になるというストレスの与え方も良くできていました。

まとめ

硬派なSF映画として非常に見応えがありました。ただ科学考証にこだわっただけではなく、人類の存亡を担ったクルーとはどんな人間なのかという人物像にまで迫っているので、まったく隙がありません。狂人が暴れ回るラストはちょっとアレでしたが、ダニー・ボイルとアレックス・ガーランドがB級SFの決定版を狙っていたのであれば、これはこれでありだと思います。

何せ、かの『クライシス2050』と基本的には同じ話ですからね。

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