シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ【8点/10点満点中_アメリカ一国主義vs国連中心主義】(ネタバレあり・感想・解説)

スポンサーリンク
スポンサーリンク
マーベルコミック
マーベルコミック

(2016年アメリカ)
ヒドラ残党を追っていたキャプテン・アメリカは、戦闘の過程で市民に犠牲を出してしまう。これに対して自警団活動であるとの批判があがり、アベンジャーズを国連管理下に置くためのソコヴィア協定が提案されるが、キャプテン・アメリカは署名を拒否したことから追われる身となる。

8点/10点満点中 壮絶なアクションと深遠な社会派テーマの両立

アメコミ映画を越えた演出とテーマ

序盤におけるテロリストとの戦闘の時点で、「これは普通の娯楽作ではない」という雰囲気を漂わせています。ヒーローが暴れ回るという荒唐無稽な設定をとりながらも、現実世界で起きていることと錯覚させるようなルックスを作り上げており、フィクションとリアリティとの間で絶妙なバランス感覚を保っているのです。前作『ウィンターソルジャー』の時点でも凄かった兄弟監督のアクション演出はさらにキレッキレで、息つく暇もない大活劇には圧倒されました。

内容は徹頭徹尾重厚かつダークであり、アントマンとスパイダーマンが出ているところくらいしか笑える場面がないという有様です。スーパーパワーの執行を機関により管理するのか、それとも責任ある強者に委ねるのかという議論によってヒーロー達は二分されますが、このテーマは現実の国際政治の論点を反映したものであり、とにかく深いテーマを扱っているものだと感心しました。

キャプテン・アメリカ=アメリカ一国主義

清廉潔白なキャプテン・アメリカは、責任ある強者による独断行動を認めるべきだと主張します。まさにアメリカ的な思考ですね。そもそもアメリカはヨーロッパで迫害された清教徒により建国された国であるため、権力が個人の権利に踏み込むことを基本的にはよしとはしない国是があります。なので、スーパーパワーの持ち主の自由を奪い、外部機関に管理させようなどはもっての外。国民の武装の権利を認めた合衆国憲法修正第二条は、国家権力が失敗を犯した場合には民兵がこれに楯突くことまでが許容されていると読むこともできるのですが(普通の国ではまずありえない条文です)、キャップはそんなアメリカの根本思想を体現した存在なのです。

なお、前作『ウィンターソルジャー』においてミスを犯した組織と戦った経験も今回のキャップの判断に繋がっており、つくづく、MCUは作品毎の連携の取り方が凄いと感心させられました。

アイアンマン=国連中心主義

『アイアンマン』第一作において、トニー・スタークは自分の会社が作った武器が作成者の意に反してテロリストの手に渡り、間接的に虐殺の片棒を担いでいたという現実を目の当たりにしました。また『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』ではアイアン・レギオンをウルトロンに乗っ取られて人類滅亡寸前にまで持ち込まれたことから、トニーは個人の認識力・判断力・対応力には限界があるという感覚を抱き、スーパーパワーには管理が必要であるとの意見に行きつきました。

組織だって過ちを犯すことはあるが、個人の犯す過ちに比べれば圧倒的にリスクは低いという合理的な発想が、いかにもアイアンマンらしいと言えます。

イラク戦争開戦前の国連安保理

本作にてアメリカ一国主義と国連中心主義が対立する様は、イラク戦争前に開戦の是非を巡って大荒れした国連安保理を思い出させます。そして、再度のヒーロー大集合が描かれる2018年の『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』は、ついに開戦したイラク戦争を反映した内容となっています。また、前作『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』はテロ対策を口実にした自国民監視の是非を問うた内容だったし、MCUでも特にキャップが絡む回では現実世界の安全保障問題がテーマにされることが多く、大変に見応えがあります。

※ここからネタバレします。

どうせ途中で仲直り…しないのかい!

我々日本人は幼少期より何度も手痛い目に遭わされてきていますが、この手のヒーローバトルものは、共通の敵が登場したところで手打ちして共闘するというヌルイ展開を迎えることが常です。MCUのライバルDCEUにおいても、それまで戦ってきた両ヒーローが、お母さんの名前が同じというよく分からない理由から共闘を始めた『バットマンvsスーパーマン』という映画もありましたね。

しかし、本作はそんなインチキをしません。ヒーロー達は徹底して憎み合い、ボロボロになるまで相手を追い込むのです。ヒーロー同士の殺し合いは、まさに壮絶を極めます。さらには、この内紛を仕掛けた黒幕にも同情すべき背景があったことが明らかにされ、力の行使の判断がいかに難しいかを本作は描き切ります。

Captain America: Civil War
監督:アンソニー・ルッソ,ジョー・ルッソ
脚本:クリストファー・マルクス,スティーヴン・マクフィーリー
原案:マーク・ミラー,スティーブ・マクニーブン『シビル・ウォー』
原作:ジャック・カービー,ジョー・サイモン
製作:ケヴィン・ファイギ
製作総指揮:ヴィクトリア・アロンソ,ルイス・デスポジート,アラン・ファイン,スタン・リー,ネイト・ムーア,パトリシア・ウィッチャー
出演者:クリス・エヴァンス,ロバート・ダウニー・Jr,スカーレット・ヨハンソン,セバスチャン・スタン,アンソニー・マッキー,ドン・チードル,ジェレミー・レナー,チャドウィック・ボーズマン,ポール・ベタニー,エリザベス・オルセン,ポール・ラッド,エミリー・ヴァンキャンプ,マリサ・トメイ,トム・ホランド,フランク・グリロ,マーティン・フリーマン,ウィリアム・ハート,ダニエル・ブリュール音楽:ヘンリー・ジャックマン
撮影:トレント・オパロック
編集:ジェフリー・フォード
製作会社:マーベル・スタジオ
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ
公開:2016年5月6日(アメリカ),2016年4月29日(日本)
上映時間:147分
製作国:アメリカ合衆国

スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク
記事が役立ったらクリック
スポンサーリンク

コメント