(2022年 アメリカ)
スピルバーグの自伝的作品だけど、本人が製作したがゆえか散漫なエピソードの積み重ねとなっており、他人から見てさして面白い映画ではない。途中からはお母さんのゲス不倫を中心に置き始めて、余計に何の映画だか分からなくなるし。
感想
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タイトルこそ『フェイブルマンズ(フェイブルマン家の人々)』ではあるけど、その内容は実質的にスピルバーグの自叙伝。文学の分野で自叙伝はよくあるが、映画の世界においてはなかなか珍しい。
この題材をとる以上、史上最高の映画監督スティーヴン・スピルバーグを作り上げたものは一体何だったのかという点に万人の興味は向かうのだけど、本作は明後日の方向へと走っていく。
やはりスピルバーグ自身が作ったことがよくなかったんだろう。客観的な視点や、分析的な切り口がなく、脈絡の弱いエピソードがダラダラと羅列された内容となっている。
スピルバーグを育んだと言えるものって、『地上最大のショー』(1951年)をスクリーンで鑑賞したという幼少期の原体験と、子供ながらに列車脱線シーンの再現を試みたエピソードくらいのもの。
ただしそれらは冒頭30分で消化されていて、残りは父親の転勤で引っ越したとか、学校で嫌な野郎に絡まれたとか、初めて彼女ができたとか、まぁどうでもいい話ばかり。
それでも2時間以内にまとめれば愛すべき小品になったかもしれないが、この内容で150分はしんど過ぎた。途中、何度も寝落ちしかけながら、何とか最後まで辿り着いたという有様だった。
さらに本作の感情移入を難しくしているのは、母親の不倫が裏テーマとなっていること。
スピルバーグの母はピアニストで、非常に衝動的な人だったらしい。
本作ではミシェル・ウィリアムズが演じているんだけど、テンションが上がって踊り始めたり、子供を乗せて竜巻の方向へと車を走らせたり、突如家で猿を飼い始めたりと、「もし自分の親だったら嫌だなぁ」と思わせる逸話をバンバン決めてくる。
一方父親は優秀なコンピューターエンジニアで、相手が理解しているかどうかはお構いなしに何でも論理的に説明するタイプの人なので、これはこれで厄介。
ただし順調にキャリアを重ねて家族の裕福な生活を保障し、我が子が欲しがる撮影機材をどんどん買い与えて未来の巨匠を育て上げたのだから、害よりも益の方が多い人物だったと言える。
しかし母親には害しか見当たらない。
そして極めつけは、家族ぐるみで付き合っている父の友人と不倫をしていたという衝撃のエピソードを決めてくる。
私も成人君主ではないので、「不倫はダメゼッタイ!」と言うつもりは毛頭ない。
ただし家族とここまで近い距離にいて、自分の子供達が懐いている人物との不倫というのは、あまりにも度を越している。これぞゲス不倫。
作品は、何となく母親への共感を持って描かれているんだけど、さすがにその価値観は私にはなかったな。
いい歳こいたおっさんが「気持ち悪っ」と感じてしまった。
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