グリーン・ランタン_イケメンは死ね!とキレるヴィラン【7点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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DCコミック

(2011年 アメリカ)
2億ドルもの巨費を投じながら批評的にも興行的にも大失敗した作品であり、確かに『ダークナイト』三部作やMCUと比較すると随分と面白くないのですが、あらためて見るとそれほど悪くもないという印象でした。今回のヴィランであるパララックスに興味深い性格付けがあったので、その点に注目です。

作品解説

グリーン・ランタンとは

グリーンランタンは1940年に登場したDCでは古参のヒーローで、着用者の意思を具現化するパワーリングと、リングにエネルギーをチャージするランタン状のパワーバッテリーを用います。

惑星オアを中心とした警察機構グリーンランタン・コァは全宇宙を3,600のセクターに分け、各セクターに一人の隊員を派遣しており、その地球担当者がグリーンランタンを名乗ってヒーロー業を行っています。

そんな感じで人物ではなく役職に近いヒーローなので、コミックでは八代目までが登場済。当実写版ではもっとも人気の高い二代目グリーンランタンことハル・ジョーダンを主人公としています。

完成までの苦節14年

1997年頃にグリーンランタンの映画化企画は持ち上がっており、最初に脚本をオファーされたのはコミックオタクのケヴィン・スミスでしたが断られ、タランティーノを起用した時期があったもののうまくいきませんでした。

その後、2006年頃にジャック・ブラック主演のコメディ作品として企画されたのですが、ファンからの受けが非常に悪く路線変更。

次に雇われたのが『ドーン・オブ・ザ・デッド』(2003年)のザック・スナイダーで、ジャック・ブラックのコメディからザック・スナイダーの写実路線ってどんな振れ幅だよという感じですが、結局実現しませんでした。

2007年、テレビプロデューサーで後にDCの名物シリーズ『ARROW/アロー』(2012-2019年)のショーランナーを務めることとなるグレッグ・バーランティが監督として雇われ、共同脚本家として雇われたコミックライターのマイケル・グリーン、マーク・グッゲンハイムと共に初稿を完成。

しかしスケジュールの競合からバーランティは降板し、『007/カジノロワイヤル』(2006年)のマーティン・キャンベルが監督として雇われました。

なぜグリーンランタンの監督にマーティン・キャンベルだったのかはいまだによくわからないのですが、経験豊かなキャンベルはプロダクションをてきぱきと進めていき、2010年3月に撮影開始、2010年8月に撮影を完了し、1300もの視覚効果を加えるという気の遠くなりそうなポストプロダクションを経て、2011年6月に全米公開。

期待外れだった興行成績

本作は2011年6月13日に全米公開され、前週トップの『スーパー8』や『X-MEN/ファースト・ジェネレーション』を抑えて初登場1位。

しかし2週目には売上高が1/3近くにまで減るという異常な落ち込みとなり、あっという間にランキングは降下していって全米トータルグロスは1億1660万ドルと平凡な結果に。

国際マーケットでも同じく苦戦し、全世界トータルグロスは2臆1985万ドル。製作費2億ドルに加えてマーケティングに1億ドルもかけたため、完全な赤字映画でした。

この失敗に伴い予定されていた続編、および、世界観を共有する予定だった『フラッシュ』の製作が中止され、DC映画ユニバースはザック・スナイダー監督の『マン・オブ・スティール』(2013年)を中核として展開することとなりました。

そのスナイダーバースも『ジャスティス・リーグ』(2017年)の失敗により頓挫し、現在ワーナーは世界観を共有しない各キャラクターの単独作品に専念する戦略にシフトしています。

感想

漫画みたいな美男美女カップル

本作の主人公はパイロットのハル・ジョーダン(ライアン・レイノルズ)。

元空軍パイロットで現在はフェリス航空でテストパイロットを務めているのですが、同業者も引くほどの向こう見ずな操縦や、かつて同じ職業に就いていた父親の死が彼の人格形成に影響を与えている点など、実に『トップガン』(1986年)な性格付けがなされています。

その個性からもわかる通りルックスも性格も男前。直情的でルーズだが、それが欠点ではなく魅力に転化しているタイプであり、男性からも女性からもモテます。

これを演じるライアン・レイノルズは長身イケメンで、私生活でもモテまくっており(当時の奥さんはスカーレット・ヨハンソン)、まさにコミックヒーローを具現化したような人物なので役柄へのはまり具合が違います。

そしてヒロインはハルの幼馴染にして元相棒パイロットであり、フェリス航空の社長令嬢で現在は経営に専念しているキャロル・フェリス(ブレイク・ライヴリー)。

これまた容姿端麗、才色兼備、文武両道などの四文字熟語の踊る理想的な人物として設定されているのですが、演じるブレイク・ライヴリーの完璧な美貌とも相まって浮世離れした漫画みたいな人物として完成されています。

そしてレイノルズとライヴリーの美男美女カップルが実にスクリーン映えするんですね。この世は二人のものって感じです。現実にレイノルズとライヴリーは2012年に結婚しました。

普通の映画だとキラキラしすぎてしんどいくらいのカップルではあるのですが、アメコミの実写化企画ではこれくらいインパクトのある俳優は実にしっくりきます。二人の存在感は世界観の構築に一役買っていました。

僻みの塊ハモンド博士

そんなハルとキャロルにはもう一人の幼馴染がいます。それが生物学者のハモンド博士(ピーター・サースガード)なのですが、こいつが理想的なルックスの二人とは対照的にチビ&ハゲで哀愁を漂わせています。

一応、3人は友情でつながっており、ハルもキャロルも彼を下に見ることはないのですが、殊恋愛関係となるとハモンドは絶望的なまでに不利な状況に置かれます。

ハル&キャロルには肉体関係があるのですが、実はハモンドも内心ではキャロルに恋をしています。しかし絶望的なまでの見た目の格差から二人にはその思いを全く気付かれていないし、ハモンド自身も卑屈になって気持ちをオープンにはしてきませんでした。

トライすることすらできないほどの絶望的な見た目格差、これはしんどいですね。キャロルからまったく思いを気付かれていないという点にしても、「まさか私を好きってことはあり得ないわよね、お前が」という悪い含みも感じ取れるし。

内向的なハモンドは数十年に渡って「良いお友達」に徹してきたのですが、恐怖の化身パララックスに接触したことから事態は急変します。

「どいつもこいつも俺をバカにしくさって!」とこれまで蓋をし続けてきた妬みつらみが大爆発し、怪物のような見た目に変貌していくのです。

ハモンドはパララックスに乗っ取られたのではなく、自らその力を受け入れたように見受けるのですが、見た目で勝負にならない非イケメンが、圧倒的な力を得てイケメンに復讐しようとする様は応援したくなりましたね。

「畜生!順調な人生送りやがって!」「イケメンは死ね!」と言って暴れる様にはカタルシスが宿っており、もはやハル=グリーンランタンではなくハモンド=パララックスを応援する自分がいました。

ラストバトルはAKIRA

このハモンドですが、私は『AKIRA』の島鉄雄を思い出しました。鉄雄は主人公金田の幼馴染なのですが、肉体的にも屈強でナチュラルに人望のある金田に対して、友情と共に劣等感を抱いてきました。

そんな鉄雄が超能力者として覚醒するのですが、長年の鬱屈が爆発したかのようにタガが外れ、「見ろ、金田。俺の方が強いんだぜ!」と言わんばかりにパワーと凶暴性を開花させ、手のつけようのない状態へと突入していきます。

本作のハモンドも同じく。

どうやっても勝てないと思っていたハルに対する劣等感、キャロルとの関係を巡るジェラシーが一気に爆発し、シャレにならない狂気でハルを圧倒しようとします。

最後は巨大な肉塊と化して町を飲み込むのですが、これもまた『AKIRA』のクライマックスそのものでしたね。

このクライマックスが気持ち悪すぎたのも本作が観客から嫌われた原因の一つではないかと思うのですが、『AKIRA』に馴染んでいる日本の観客ならばすんなり受け入れられるのではないでしょうか。

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