MOTHER マザー(2020年)_全員の行動が不合理で面白くない【4点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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実話もの

(2020年 日本)
事実通りとはいえキャラクターの不合理な行動が多すぎてなかなか感情が入っていかないし、長澤まさみの熱演は認めるものの、上品な顔立ちの彼女が下品な役を無理やり演じているように見えてしまい、没入感はありませんでした。

あらすじ

秋子(長澤まさみ)は小学生の息子周平(郡司翔)と二人暮らしだが、定職に就かない上に浪費癖も治らず、生活は安定しなかった。恋仲になった名古屋のホストと共に市役所職員を詐欺に引っ掛けようとしたところ、思わぬアクシデントから計画が狂い、周平も含めた三人での逃亡生活を余儀なくされる。

スタッフ・キャスト

監督・脚本は『まほろ駅前多田便利軒』の大森立嗣

1970年東京都出身。駒沢大学在学中に映画サークルに所属したことから自主映画を製作し始め、大学卒業後には俳優として活動した後、助監督を務めるようになりました。

芥川賞受賞作の映画化『ゲルマニウムの夜』(2005年)で長編監督デビューし、国内外で高い評価を受けました。

瑛太と松田龍平が主演した『まほろ駅前多田便利軒』(2011年)はテレビシリーズと映画版の続編も製作される人気作となりました。

主演は長澤まさみ

1987年静岡県出身。小学6年生の時に受けた東宝シンデレラオーディションにて、史上最年少でグランプリを獲得し、『クロスファイア』(2000年)で映画デビュー。

スキンヘッドにして挑んだ『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年)がセカチューと呼ばれるほどの社会現象を巻き起こして興行成績85億円の大ヒットとなり、10代にして国民的女優の仲間入りをしました。

以降は映画、テレビ、舞台とあらゆる場で活躍をし、現在では日本を代表する女優の一人となりました。2021年には庵野秀明製作の『シン・ウルトラマン』が控えています。

作品解説

2014年の祖父母殺害事件の映画化

2014年、川口市で17歳の少年が祖父母を殺害するという事件が発生しました。

この事件が特殊だったのは孫が祖父母を殺したことだけではなく、加害者少年の生育環境が異常だったこと、母親の指示で祖父母を殺したということでした。

幼少期の少年は両親と親子3人で暮らしていたのですが、父親は愛人宅に入り浸って家に帰らなくなり、母親は水商売勤務の上に浪費癖があって家庭生活を営む気がありませんでした。当時小学生だった少年は両親のいない家庭で一人で過ごすようになり、そのうち小学校にも通わなくなりました。

ほどなくして両親は離婚し少年は母親に引き取られたのですが、母親はネットで知り合った名古屋のホストと遊ぶため、少年を残したまま1か月も家を空けました。

その後、少年を連れてホストの元に転がり込んだのですが、誰も働かないので生活が成り立たず、全国を転々とした後にラブホテルでの生活を始めました。宿泊費が払えなくなるとラブホテルの敷地内にテントを張って生活するという異常ぶりでした。

その頃、母親はホストの子を妊娠し女の子を出産。しかし出生届も出さず、兄となった少年が妹の面倒を見ていました。

一家はセーフティネットに引っかかった時期もあったのですが、あれこれ口出しされるのが嫌だからと言って宿泊所を出ていき職と住処を転々とする生活に戻りました。そんな中でホストも消えていき、またしても母と子だけの環境となりました。

数年後、10代半ばに成長した少年は塗装会社で働くようになったのですが、相変わらず母親の浪費癖で給料は消えていき、結局この職場からも姿を消しました。

いよいよ金に困った母親から出てきたのは「じいちゃんとばあちゃんを殺せば金が手に入るよね」という言葉であり、本心ではないと思った少年は曖昧な返事をしたのですが、母親は次第に本気になっていき、少年に殺すよう指示を出しました。

その通りに少年は祖父母を殺害し、現金やキャッシュカードを盗んで逃走。その1か月後に逮捕され、少年は懲役17年、母親は4年6か月の刑を言い渡されました。

感想

長澤まさみはミスキャストでは

長澤まさみは決して下手ではなく、むしろ演技が上手いと言えるくらいなのですが、役柄へのハマり具合には疑問符が付きます。

秋子は男を引き寄せる魔性の一面もあるため、ある程度の美貌は必要とされるのですが、美しさの方向性が長澤まさみとは違うんですよね。

もっとくたびれていて安っぽくて、でも簡単に落とせそうだから男が次々と近寄ってくる。秋子とはそういうキャラクターだと思います。

長澤まさみの上品な顔で下品な演技をしていることの違和感が終始付き纏っており、ちょっと汚い服を着た綺麗な顔の親子がラブホを出入りしたり路上で寝っ転がっていたりという、何ともシュールな絵面ができあがっています。

途中からは髪の毛に白髪を入れているのですが、合わせて老けメイクを施しているわけでもなく顔立ちは若々しいままなので、物凄い違和感となっています。この人は一体何歳の設定なんだろうかと。

当の監督も長澤まさみの美貌を邪魔に感じていたのか、修羅場と化すシーンでは髪で顔が隠れたり、背中からのショットになったり、声だけになったりと、あの美しい顔を映すまいという意図を感じました。

日本映画界は美男美女を使わなければ興行が成り立たず、こんな社会派作品にすら美人女優を起用することが製作の条件になっているのだろうか。また、監督は渋々起用した美人女優の顔をメイクで汚す自由すら与えられていなかったのだろうか。

そんなことが気になりました。

理解不可能なキャラクター達の行動

本作のキャラクター達はことごとく不合理な行動をとります。

秋子は母としてではなく女性として生きることを選択しており、息子・周平に対してはほぼネグレクトと言える態度をとっているのですが、その割に重要な決断の時には必ず家族一緒にという主張をして、邪魔であるはずの息子を手放そうとしません。

周平は周平で、本編中で何度か母・秋子から離れる機会があった上に、周平自身も自分の母親がおかしいという認識を持っていたにも関わらず、常に離れないという選択を下し続けています。

終盤で「共依存」や「母親が好きだ」という説明こそなされるものの、二人の関係を観客が理解するには不十分すぎる情報でした。

親子の愛憎関係を描きたいのであれば、秋子が周平に対して示す愛情も描く必要があったはずなのですが、全編を通じて秋子を悪く描いているだけなので、なぜこの親子が一緒に行動しているのかが感覚的に理解できませんでした。

そして彼らを取り巻く人々も同じくで、祖父母も叔母も別れた夫もソーシャルワーカーも全員が秋子の異常性を認識しており、かつその人生に巻き込まれている周平が被害者であることを知っているのに、誰もこの親子を引き剥がそうとはしません。

特に夏帆扮するソーシャルワーカーなんて、目の前で虐待が行われているのだから警察や児童相談所への通報をしなければならない立場なのに、周平の悩みを聞き、本を与えようとするだけですからね。

実際の事件がその通りなんだから映画もそれをなぞっているということは理解できるのですが、もっと突っ込まなければ映画として成立しないのではないでしょうか。

こうした社会派映画の役割って、数分のニュースだけでは読み取れない情報をリサーチし、クリエイターの想像力で補うことで、事件当事者の心境を観客にも理解可能な物語として再構築することなのだろうと思います。

しかし本作はその機能を果たせていないので、「私ってこんな演技もできるんですよ」という長澤まさみの技見せ大会の域を脱していません。

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