ギヴァー 記憶を注ぐ者_パクリと矛盾のオンパレード【2点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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(2014年 アメリカ、カナダ、南アフリカ)
2010年代に量産されたティーン向けSFの一作なのですが、特に出来の悪い部類に入る作品。ありがちなストーリーラインに過去作品からの流用が目立つプロットと、オリジナリティという点ではほぼ壊滅的だし、自我の目覚めというテーマも似詰めきれていません。なぜこんな駄作にメリル・ストリープとジェフ・ブリッジスが出演承諾したのかは大きな謎です。

© 2014 The Weinstein Company. All Rights Reserved.

あらすじ

未来において人々は争いのないユートピアを実現していた。そこに暮らす若者ジョナス(ブレントン・スウェイツ)は成人するにあたってレシーヴァー(記憶を受け継ぐ者)に任命され、ギヴァー(記憶を注ぐもの)の元に通うことになったが、その任務において封印されていた人間の感情や、人類史について知る。そして、それらの感情を封印する現在の管理社会への疑念を抱き始める。

スタッフ・キャスト

監督はジャック・ライアンシリーズのフィリップ・ノイス

1950年オーストラリア出身。若い頃のニコール・キッドマンが出演したスリラー『デッド・カーム/戦慄の航海』(1988年)などを母国で撮った後にハリウッド進出し、『パトリオット・ゲーム』(1992年)と『今そこにある危機』(1994年)の2本のジャック・ライアン映画を撮りました。両作は興行的には成功したものの、原作者トム・クランシーからの評価は低かったようです。基本的に凡庸な監督であり、傑作の類は一本も撮ったことがありません。

主演は『キング・オブ・エジプト』の影の薄いイケメン

主演は監督と同じくオーストラリア出身のブレントン・スウェイツ。アレックス・プロヤス監督の『キング・オブ・エジプト』(2016年)で主人公を演じ、『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』(2017年)でもあらすじ上は主人公格とも言えるヘンリー・ターナー役を演じたのですが、どちらの映画でも観客の記憶にはほとんど残ることがなく、以降は見かけることがなくなりました。

こういう影の薄いイケメンを見ると、脇役であっても強烈な存在感を示していた若い頃のトム・クルーズやレオナルド・ディカプリオって本当に凄かったんだなと思います。

やたら豪華な共演者

ティーン向けSFには大御所俳優を組み合わせることが半ばセオリーとなっていますが、そんな中でも本作は特に共演者に力が入っています。

まず世界の管理者としてメリル・ストリープとジェフ・ブリッジスというオスカー常連者2名を配置。加えて、主人公の育ての親には当時のトム・クルーズの奥さんで、久しぶりの映画出演となるケイティ・ホームズ、主人公の前任者にはグラミー賞10回受賞の人気歌手テイラー・スウィフトですからね。

共演者の顔ぶれだけ見るとえらいことになっています。

感想

オリジナリティ欠乏症

2010年代はティーン向けSF映画が多く作られた時期でした。嚆矢となったのは『ハンガー・ゲーム』(2012年)の大ヒットであり、そこから『ダイヴァージェント』(2014年)、『メイズ・ランナー』(2014年)と同種の作品が多くリリースされました。本作もそんな中の一作。

このジャンルの作品には共通点があって、若い主人公の自分探し、社会から押し付けられた役割の否定、狭苦しい世界からの逃避行、おおよそこの3点はどの作品にも描かれています。

自我に目覚めた少年・少女の巣立ちの過程や社会での役割の模索をSF作品でトレースしているということなんでしょうね。そこに独自の設定や展開を加えることで独立したオリジナル作品として仕上げることが、このジャンルの基本的な作り方です。

本作もまさにその3点を押さえているのですが、問題は独自設定部分が非常に弱いということです。薬剤で精神を抑圧された住民達という設定や、その管理の枠組みから外れた主人公が世界の境界線を目指すというストーリーラインは、ジョージ・ルーカスの監督デビュー作『THX-1138』(1971年)とまるっきり同じものです。

また、平和だが味気ない世界がモノクロで表現され、登場人物達が感情や人間味を獲得していくことで世界が色付いていくという映像表現は、後に『ハンガー・ゲーム』を製作するゲイリー・ロスの監督デビュー作『カラー・オブ・ハート』(1998年)とまったく同じ。

つまりこの映画は、ジャンルのありふれた構造の上に、既視感溢れる設定や表現方法を覆いかぶせた、オリジナリティ欠乏症を患った作品なのです。

ジェフ・ブリッジスの記憶の伝え方悪すぎ

本作の舞台となる世界はディストピアの中に築かれた小さなユートピア。どうやら人類は一度滅びかけるところにまで行ったらしく、その反省を踏まえて現在の社会では感情を抑制して人類の攻撃性を抑え込むという管理方法がとられています。

加えて、ややこしい歴史のことは知らんでもええということで、過去に関する知識は支配者層が独占管理しています。この辺りは『猿の惑星』(1968年)っぽくもありましたね。

ジェフ・ブリッジス扮するギヴァー(記憶を注ぐ者)が記憶の管理者。そして成人式においてブレントン・スウェイツ扮する主人公ジョナスがその後継者レシーヴァー(記憶を受け継ぐ者)に指名され、ギヴァーの元へ通うようになることが前半部分のあらすじとなります。

ただし、ここでのギヴァーによる記憶の伝え方が荒っぽく、そら失敗するわと言いたくなりました。彼らは手と手を触れることで記憶を伝達することが可能なのですが、何の説明のなくいきなり記憶の伝達をするので、ジョナスはかなり戸惑います。

まずは人類史の概要を説明して、本来の人間とはこういうものなんだよということを座学レベルで理解させてから実際の記憶の伝達に入ればいいものを、いきなり記憶を注がれれば今の世の中しか知らない若者は驚きますよ。

しかもギヴァー、かつて自分の娘ローズマリー(テイラー・スウィフト)をレシーヴァーにして喪った過去を持っており、その後悔の中で生きているのだから、尚のこと今回は慎重にやらなければならないのに、相変わらず荒っぽい指導をするわけです。

何も学んでいないのは人類ではなくお前と言いたくなりました。

メリル・ストリープの管理体制杜撰すぎ

メリル・ストリープが演じるのはこの小さなユートピアを維持している主席長老。

彼女自身は悪者ではない、むしろ共同体参加者全員の生活を守るために秩序維持を徹底している善良なる管理者なのですが、そもそもの管理方針に非人道的な部分もあることから、結果的に悪人にもなっているという複雑な個性を持っています。

ただし細かい部分の詰めがどうにも甘いことから、このキャラクターが本来持つべき個性を発揮できていませんでした。

この社会の基本的な管理方針は徹底した予防にあります。住民全員に精神抑制剤を飲ませ、町中に監視カメラを設置し、監視用ドローンを飛ばし、異常行動のモニタリングをしています。

ただし問題なのは、これらがいちいち穴だらけだということです。社会に対する疑念を持った主人公は精神抑制剤の注射を避けるため、注入器にリンゴ(キリスト教世界における禁断の果実)を押し当てることで管理網をすり抜けます。精神抑制剤はこの社会の秩序維持の要なのに、そんなにも簡単に誤魔化せていいものなのかと拍子抜けしました。

加えて監視網もザル状態です。主人公はヒロインとキスをしたり、危険なソリ遊びをしたりするのですが、この社会が忌避している刺激に当たる行為の割には検知がかなり遅いので、町中の監視網はハリボテかと思いました。

逃避行を決意した主人公の追跡劇に至ってはアホがアホを追いかけている状態となっています。

ガブリエルと名付けられた赤ん坊が殺処分対象であることを知った主人公はこの子を連れて世界の境界線外にまで出ることを決意し、夜中にこっそり抜け出すことにします。ただし、この社会は全体で就寝時刻が決定しており、夜になると勝手に出歩けないという管理体制が敷かれているのだから、夜の外出は監視網から検出されるリスクがかなり高いように思います。にも関わらず夜の脱出を決意する主人公。アホですね。

しかし、この主人公を追い切れない体制側はもっとアホでした。町中の監視カメラやドローンは何のためにあるんだろうかと

そして、こんな監視体制を敷いている主席長老までがアホに見えてしまっています。せっかく大女優メリル・ストリープに演じさせているのに勿体ない限りです。

主人公の逃避行が訳わからなすぎ                                

主人公は赤ん坊を連れてユートピアの外側へと出ていくのですが、良くも悪くも完全な管理下にいた主人公が、文明の及んでいない荒野でどうやって生きていくつもりなのだろうかと疑問に思いました。

本作の元ネタとなった『THX-1138』では、主人公の逃避行は自由への渇望の表れとして位置づけられており、自分らしさを取り戻せるのであれば死んでも構わないというドラマのおかげで無謀な逃走劇にも意味がありました。

その点、本作のジョナスは殺処分にされかけた赤ん坊を救うために逃げています。根本的な行動原理が生存にあって、生きる道を探ろうとしているのに、その実現のために生存可能性が著しく低い荒野へ出ていくという矛盾。

赤ん坊を抱えたまま川に落ちたり、雪山を歩いたりと、もはや赤ん坊の命を危険に晒しているのは誰だか分からない状況となっています。 加えて、ジョナスが世界の境界線に至れば記憶が復活するという謎の設定が説明不足過ぎて訳分からなかったことも問題でした。

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