プロジェクト・アルマナック【3点/10点満点_オタクが全然描けていない『クロニクル』の亜流作品】

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[2015年アメリカ]

3点/10点満点中

■オタクが主人公なのに根暗さがない

もろに『バタフライ・エフェクト』や『クロニクル』の影響を受けたティーン向けSFであり、特に『クロニクル』との共通点はかなり目についたのですが、徹底的に暗かった『クロニクル』と比較すると本作にはマイケル・ベイらしい快活さが常に付きまとっており、そのことがどの方向にも振り切れていない中途半端さに繋がっているような気がしました。

主人公は科学オタクの冴えない高校生という設定なのですが、これをジョニー・ウェストンというイケメンに演じさせたことがまず失敗。特に前半はオタクらしくウジウジした様子を見せているものの、ウェストンがイケメンなので全然様になっていません。

また主人公が高嶺の花であるマドンナに惚れたことが作品の骨子のひとつとなっており、彼がタイムマシーンという禁じ手を使って彼女との距離を縮めようとしたことで物語は大きく進むのですが、ウェストンの見た目ではマドンナ役のソフィア・ブラック=デリアと吊り合ってしまっており、普通にしていれば難なく付き合えそうに見えるので、オタクの恋愛という要素が完全に死んでいます。

この点、見るからに屈折した性根を持つ根暗な高校生だが、よく見ると若い頃のディカプリオ似のイケメンという奇跡の逸材デイン・デハーンの発掘に成功した『クロニクル』の二番煎じはなかなか厳しかったようです。

■主要キャストに余剰人員が発生している

また、主要登場人物を5人も置いているものの(主人公・親友のオタク2人・主人公の妹・学園のマドンナ)、ただ存在しているだけで物語にほとんど絡んでこないアジア系の親友と、POV形式である以上はカメラを回している奴が必要であるという理由で配置されている妹が完全に余っています。

特に妹については、主人公と同じく本来はルックスを要求されない役柄であるにも関わらずこれを演じている女優さんが美人過ぎることや、たまにおっぱい要因になって無駄な存在感を発揮することから、他方で本来は目立たねばならないはずのマドンナの存在感を希薄化させる原因になっており、彼女の存在はむしろマイナスになっているような気もしました。本作に美人は一人で良かったのです。

■伏線や設定が活かされていない

SFミステリーとしておいしいところを見事に外しています。亡き父の残した発明品という設定の上、「見つけてください」と言わんばかりの状態で仕掛中のタイムマシーンが家の地下室に残されており、さらには生前の父が写っているVTRが物語の発端になるのだから、父の死の真相や隠された親子の繋がりみたいなものが後半の山場になるのかと思いきや、親父さんは本編にまったく関係しないという肩透かしぶり。

また、タイムトラベル中に異なる時制の自分と出会うとエクセルの循環参照みたいな無限ループが始まり、最終的にその人物が消滅するという設定が置かれており、この設定をうまく使えば過去の自分と出会ってしまうのではないかというサスペンスを生み出すことができたはずなのに、これもアッサリとスルー。勿体ない限りでした。

■監督のディーン・イズラライトについて

監督のディーン・イズラライトは本作で長編映画デビューしているのですが、後に2017年の『パワーレンジャー』も駄作に仕上げており、オタクを主人公にしたティーンSFからは手を引けばいいのにと思います。

ちなみに、イズラライトは『世界侵略: ロサンゼルス決戦』で知られるジョナサン・リーベスマンの従兄弟みたいですね。そのリーベスマンはマイケル・ベイのお気に入りで『テキサス・チェーンソー ビギニング』『ミュータント・タートルズ』の2本を監督しており、イズラライトは従兄弟のコネで本作の監督に就任したようです。どの世の中でもコネ入社はロクなことにならんです。

PROJECT ALMANAC
監督:ディーン・イズラライト
製作:マイケル・ベイ,アンドリュー・フォーム,ブラッドリー・フラー
製作総指揮:ジョシュ・アッペルバウム,アンドレ・ネメック,ヴィッキー・ディー・ロック
脚本:ジェイソン・ハリー・ペイガン,アンドリュー・ドイチュマン
撮影:マシュー・J・ロイド
編集:マーティン・バーンフェルド,ジュリアン・クラーク
出演:ジョニー・ウェストン,ソフィア・ブラック=デリア,サム・ラーナー,アレン・エヴァンジェリスタ,ヴァージニア・ガードナー,エイミー・ランデッカー,ゲイリー・ウィークス,ミシェル・デフレイテス

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