キングスマン:ファースト・エージェント_英国万歳すぎ【6点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

スポンサーリンク
スポンサーリンク
エージェント・殺し屋
エージェント・殺し屋

(2021年 アメリカ)
キングスマンらしいキレッキレのアクションに、「第一次世界大戦の裏側ではこんな諜報戦があった」という史実ベースのフィクションを織り込んだ、なかなかの異色作でした。ただし荒唐無稽なアクションと歴史劇のブレンドには失敗していて、最後まで何味なのかよく分からん映画でしたが。

感想

劇場公開から1か月チョイで配信開始

『キングスマン』シリーズは、第一作を劇場で観て「なんちゅー面白さだ!」と感動したものの、評価の下がった2作目はBlu-rayで見て、世評通りイマイチだなと感じました。

そして3作目、というかプリクェルに当たる本作ですが、最初は劇場に見に行こうとしてたんですよ。大好きなレイフ・ファインズが主演だし。

しかし新型コロナウィルスの影響から公開日が何度も何度も延期される中で、「もうええがな」となってしまい、結局は劇場には足を運ばず仕舞いでした。

なんですが、何気なくディズニープラスをつけると本作が無料配信されており、棚ぼた的に鑑賞。

何だかんだ見られたことはありがたかったんですが、2021年12月24日に劇場公開された作品が1か月ちょっとで無料配信って、さすがに早すぎません?

去年映画館で見たリドリー・スコット監督の『最後の決闘裁判』(2021年)も、翌月にはディズニープラスの新作コーナーに並んでたし、現在公開中のスピルバーグ監督の『ウェスト・サイド・ストーリー』(2021年)も来月には配信開始と聞いて、劇場に行く気がなくなっちゃったし。

フォックス作品に対する扱いが全般的にひどいような気がしますね。ユーザーとしては最新作をすぐに見られるメリットを全力で享受しているので全否定ではありませんが、映画との接点の持ち方が全く変わってしまうので、これは良いんだか悪いんだかって感じです。

最後まで味付けのよく分からん映画

キングスマンシリーズの特徴とは、秘密基地あり、スーパー兵器あり、人間離れした格闘ありの、荒唐無稽なアクションにあります。バカバカしくもカッコいい見せ場の連続が醍醐味であるわけです。

そこに来て本作は、かなり毛色が違う作品となっています。

サラエボ事件から第一次世界大戦までの史実をベースとしており、歴史上の人物も多数登場。現実とのはっきりとした接点を持っています。

加えて、戦場描写にはかなり惨たらしいものがあり、人的犠牲を軽くは扱っていないので、大勢の人が死んでもガハガハ笑っていられた従前シリーズとのノリの違いも顕著。

かと思えば、キングスマンらしい部分もしっかりと残っていて、荒唐無稽なアクションや、過激なキャラクター達による笑えるやりとりは健在となっています。

これらテイストの違うものが一つの物語の中に押し込まれているのですが、各要素が違和感なくブレンドされることは最後の最後までなくて、結果、味付けのよく分からん闇鍋映画に終わっています。

各構成要素の出来は良くて「このままいけばいいのに」と思っていると、突然ガラッとテイストが変わる。こうしたことを劇中で何度か繰り返すので、最後まで落ち付きませんでした。

英国万歳ムードに乗れず

史実をベースにした部分はなかなか興味深かったです。

第一次世界大戦の当事者だったジョージ5世(英国国王)、ニコライ2世(ロシア皇帝)、ヴィルヘルム2世(ドイツ帝国皇帝)が従兄弟同士という話にはビックリでした。高校の時には世界史を履修していて、この3人の名前も憶えていたのですが、まさか血縁関係があったとは。

「ほんまかいな?」と思って鑑賞後にwikiを調べてみたら、確かに3人は親戚でした。特にジョージ5世とニコライ2世はそっくりで、どっちがどっちだか区別がつかない程です。

ジョージ&ニコライ(1913年)

黒幕は英国に恨みを持つスコットランド人で、世界を混乱させるために第一次世界大戦を仕掛けた。サラエボ事件で各国が動かざるを得ない状況を作り、ラスプーチンを操ってロシア帝国をけしかける。

ラスプーチンが倒れると、今度はレーニンを送り込んでロシア革命を起こしたり、女スパイ マタ・ハリの色仕掛けでアメリカのウィルソン大統領を落としたりと。

歴史上の人物が同じ秘密結社に所属しており、一つの指令の元に動いていたという話には、世界史選択者を容赦なく興奮させるサムシングがありましたね。

ただし、英国以外を悪く描きすぎという点は気になりましたが。

英国側にも馬鹿を何人か入れておけばバランスも取れたのですが、揃いも揃って高潔な人間ばかりなので英国万歳が過ぎるなぁと思ったりで。

アクション演出は相変わらず楽しい

アクションはバリエーション豊かでしたね。

ラスプーチンとの戦いでは舞踏と剣術を組み合殺陣わせた独特な殺陣で楽しめたし、ジェマ・アータートンとジャイモン・フンスーが達人級の技を繰り出す点には、キングスマンらしさが宿っていました。

白眉だったのは中盤の塹壕戦。音を立てないナイフでの格闘が始まりなのですが、静寂が破られた瞬間に照明弾が上がり、そこからは銃弾の雨が降ってくるという一連の流れが完璧でした。

全編を通して、戦闘の口火が切られる場面がカッコいいんですよ、この映画。

それまで隠密的に展開してきたことが、あるきっかけを境にテンションの高い戦闘へと切り替わる。この転換がいちいち気持ちよくて惚れ惚れとさせられました。

スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク
記事が役立ったらクリック
スポンサーリンク

コメント