(2021年 アメリカ)
アカデミー賞俳優が3人も出演した豪勢なサスペンス映画なのですが、バディ刑事ものとしての面白さも、サスペンス映画としてのスリルも追及されておらず、すべてが不完全燃焼でした。
感想
デンゼルとラミの『セブン』
本作でデンゼル・ワシントンが演じるのは、元腕利きだったものの、何らかの事情で第一線を離れ、現在は田舎の保安官事務所で働いている保安官代理ディーコン。
証拠品を受領するため古巣のロサンゼルス郡保安局を訪れたところ、猟奇殺人現場に立ち会うことになったことから、捜査活動を再開することが本作のあらすじです。
で、ディーコンとバディを組むことになるのが、若手捜査官ジミー・バクスター(ラミ・マレック)。
バクスターはディーコンが辞めた際の欠員補充要因であり、前任者と後任者がバディを組んで猟奇殺人に挑むこととなるのですが、これってデヴィッド・フィンチャー監督の『セブン』(1995年)と同じ図式ですよね。
ただし、燃え尽きていた前任者が血気盛んな後任者からの刺激を受けて活力を取り戻すという化学反応の描かれていた『セブン』と比較すると、本作はどうにもこの図式を生かし切れていません。
ディーコンは殺人現場に戻った時点ですでにやる気満々。自主的に休暇届を出してまで本件にのめりこむものだから、くたびれたロートル感が出ていません。
また精神的なメンターとして若手を引っ張ったり、豊富な知見を若手に提供したりといった、ベテランと若手を組ませる場合のお馴染みの一幕みたいなものもあまり追及されておらず、ほぼ同格のバディなので、年齢差が活かされていないし。
また、彼らの精神的距離が近づいていく過程も曖昧であり、初登場時には嫌な奴だったバクスターが、気が付けばディーコンになついていたという状態になっています。
せっかくオスカー俳優二人を組ませたのに、二人の間に流れるドラマに見せ場がないのは残念でした。
ジャレット・レト容疑者は怖くない
で、二人の捜査線上に浮かびあがってくるのが電気工のアルバート・スパルマという男。
これを演じるのがジャレット・レトで、こちらもオスカー受賞者という贅沢な布陣なのですが、こちらもまた俳優のポテンシャルを生かし切れていません。
何をしでかすか分からない怖さも、悪魔的な能力も感じさせられず、悪役としてはさほどの魅力がないのです。
ディーコンとバクスターはこいつのペースに乗せられてしまうのですが、それはスパルマが優れているからではなく、捜査官二人が無駄に右往左往しているだけにしか見えなかったし。
一応、レトは本作の演技でゴールデングローブ助演男優賞にノミネートされているらしいのですが、一体どこが良かったんでしょうね。
サスペンスとしての盛り上がらなさ
また、サスペンス映画としての盛り上がりにもかけました。
連続猟奇殺人犯に誘拐されたと思われる若い女性の失踪届けが出されており、かつ、まだその死体は出てきていない。
バクスターはこの女性が生きているうちの事件解決を目指すのですが、タイムリミットの設定が曖昧なので、サスペンスを盛り上げる要素にはなりえていません。途中からはどうでもよくなっていくし。
他に、犯人から唯一逃げ延びた生存者も現れるのですが、彼女の存在も全体に対してさして影響を与えていません。
最後のオチは確かに意外ではあったものの、かといって後味の悪さを感じるほどの衝撃でもありませんでした。
何らの解決もせず中途半端な形で話が終わったことへの失望しかありませんでしたね。
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