ポルカ・キング【8点/10点満点中_詐欺の構図がよくわかる良質なクライムコメディ】

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[2018年Netflixオリジナル作品]

8点/10点満点中

■1990年代に発生した投資詐欺事件がモデル

ポーランドからアメリカへ移民してきたヤン・レヴァンという歌手が、ファンを相手に投資詐欺に手を染める様を描いたコメディなのですが、本作は実際に起こった投資詐欺事件を題材にした『ポルカ・キング:栄光と没落の物語(2009年)』というドキュメンタリー映画を原作としています。なお、このドキュメンタリーもNETFLIXで鑑賞できるようです。

■こういうおじさん、よくいますよ

私の職業柄、経営者の方と接することが多いのですが、世の経営者の中には違法でこそないもののかなりトリッキーな方法で事業資金を集めておられる方もおり、まさにこの映画のヤン・レヴァンとほとんど変わらないような人もお見かけます。このおじさんの特徴は、人を騙しているという認識がないことです。その根本にあるのは「夢は必ず実現する」という超ポジティブシンキングであり、いろいろと辻褄の合わないことが出てきても、

ポルカ・キングとして成功すれば一発逆転できる

自分は絶対にポルカ・キングになれる

目の前の問題はポルカ・キングになり次第解決するんだから今は気にしないでOK!

という三段論法で解消してしまうわけです。夢は叶うという前提があればすべてのトークはウソにも誇張にもならないので、このおじさんは自分が真っ当な出資話をしているとしか思っていないのです。世間で持て囃されるポジティブシンキングの闇の面ですね。

そして、ベンチャー企業の経営者にはこういうタイプの人が多くいます。不確実性の高いビジネスの世界で最初の一歩を踏み出すには確かにポジティブシンキングが必要とは言え、ビックリするほど根拠のないバラ色の事業計画を元に出資を集めることはさすがにどうかと思うのですが…。ヤンが問題だったのは法に反する形式で金を集めてしまったことであり、法律を踏まえた上で夢への出資を受けていれば、そこいらのベンチャー社長とさほど変わらなかったのかもしれません。

■詐欺に巻き込まれた人たちの様子もリアル

また、詐欺事件の全貌もリアルであり、騙した人・騙された人・関係してしまった人の描写は真に迫っていたように思います。

  • 【騙した人=経営者サイド】目の前のキャッシュが回っていることで安心しており、新規の出資が途絶えると立ち行かなくなるという根本的な問題に対しては「成功すれば一発逆転できる」という漠然とした見通ししか立てていなかった。
  • 【騙された人=出資者サイド】銀行でもないおじさんが高利回りを保証するという普通だったら怪しい話ではあるが、毎月期日通りに利息が入金されるので信じ切ってしまった。
  • 【関係してしまった人=従業員サイド】本業のポルカ公演は高コストの割にチケット売上は低くて赤字経営のはずなのに、なぜか金だけは回っていることを当初は訝しんでいたものの、ちゃんと給料を受け取れていることに満足して次第に猜疑心を失っていった。

全員に共通しているのは、目の前のキャッシュが回っていることで安心感を得ていたということであり、実は収支を考えると破綻は時間の問題だったのに、出資者と従業員は「どうにかしてうまいこといってるんだろう」としてそれ以上考えることをやめているし、経営者は一発逆転を疑っておらず深刻な状況を認識できていませんでした。また、出資者に対してはローマ法王やグラミー賞といった権威付けが良い目くらましとなっており、「ヤンはホンモノじゃないか」と勘違いさせることができていました。

唯一、奥さんのお母さんだけは「こんな事業が回っているはずがない。何かおかしなことをしているに違いない」という視点を持ち続けていましたが、うまくキャッシュが回ってみんなハッピーだった時期には、この意見は無視され続けました。この現象にも、一度信じると決めた人間はネガティブ情報を排除したがるという一般的傾向が反映されているようでした。一年ほど前に仮想通貨が高騰した際、私は通貨のポテンシャルに対してあまりに高値が付きすぎていることが気になっていたのですが、通貨に出資している人たちは「仮想通貨こそが未来の通貨だ」と言って聞かず、大事な金を出資している状態なのにネガティブ情報には耳をふさいでいました。仮想通貨の将来性を信じると決めた瞬間に、彼らは情報の精査をやめていたのです。よく詐欺の被害者が「知らなかった」というのですが、厳密に言うと彼らは知らなかったのではなく、知ろうとしていなかったのです。

あ、私は仮想通貨を詐欺と言ってるわけじゃないですよ。あれはあれで有用なものになっていくとは思うのですが(金融業界の友人に聞くと、各社は粛々とブロックチェーンの整備を進めているようです)、儲け話として見ると、ある一時期にはいろいろと胡散臭い面もあったなと。また、億り人だなんだと言って祭りのような熱狂状態の中では、目の前の高騰が正常ではないことに気付かない人が案外多かった点も興味深く感じていました。確定申告のお手伝いでそうした人たちの様子を傍で観察していただけに、感慨深いものがありましたね。

話が脱線してすみません。映画レビューに戻りますね。

■純粋さと胡散臭さを両立したジャック・ブラック

決して褒められたことではないが、かと言って人を騙して不幸にさせたくてやったことでもないという人間臭いこの事件において、ジャック・ブラックの個性が実に有効に働いていました。

本業の雑貨屋と音楽活動の両立のみならず、ピザ屋のバイトまでしてバンドメンバーに支払う給料を捻出していた序盤の彼と、大勢の老後資金を空費して刑務所にぶち込まれた時の彼は本質的に同一であり、夢を追うためには、周囲の人を不幸にしないためには金が必要で、自分が夢を実現させることで出資してくれた人たちにも還元できるというビジョンはヤンの中に確かにありました。その点で彼は純粋だったのですが、同時に自分のしていることは法に触れているという認識も持っており、喉から手が出るほど欲しかった金がどんどん入ってくる仕組みから抜け出せなくなったという悪の一面も持っていました。そうした善悪半々の個性を表現することに、ジャック・ブラックの個性や演技は実に有効に機能していました。

また、ポルカという音楽の陽気でちょっと間抜けな曲調とか、ご当地のアレンジ歌詞を入れたり客いじりをしながら場を盛り上げるヤンのパフォーマンスが何ともジャック・ブラックらしく、『スクール・オブ・ロック』でのロックよりもポルカの方が似合っているような気がしました。

 

The Polka King

監督:マヤ・フォーブス

脚本:マヤ・フォーブス、ウォレス・ウォロダースキー

原作:ジョン・ミクラック、ジョシュア・フォン・ブラウン

製作:デヴィッド・パーマット、スチュアート・コーンフェルド、シヴァニ・ラワット、モニカ・レヴィンソン、ワリー・ウォロダースキー、ジャック・ブラック、プリヤンカ・マットー

製作総指揮:エリカ・ハンプソン、デビー・リーブリング、クリス・マンガノ

出演者:ジャック・ブラック、ジェニー・スレイト、ジェイソン・シュワルツマン、ジャッキー・ウィーヴァー

音楽:セオドア・シャピロ

撮影:アンドレイ・ボウデン=シュワルツ

編集:キャサリン・ヘイト

製作会社:シヴァンズ・ピクチャーズ、レッド・アワー・プロダクションズ、パーマット・プレゼンテーションズ、エレクトリック・ダイナマイト

配給:ネットフリックス

公開:2017年1月22日(サンダンス映画祭)、2018年1月12日(配信開始)

上映時間:94分

製作国:アメリカ合衆国

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