マンディ 地獄のロード・ウォリアー_無駄な映像装飾が盛り上がりを阻害する【4点/10点満点中】(ネタバレなし・感想・解説)

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サイコパス
サイコパス

(2018年 アメリカ)
木こりのレッドは妻マンディと質素だが平穏な生活を送っていたが、ある日マンディをカルト集団に拉致された上に、殺害された。復讐に燃えるレッドは、カルト集団メンバーを次々と血祭りにあげていく。

4点/10点満点中_ストレートな復讐劇でよかったのに

スタッフ・キャスト

監督・脚本を務めたパノス・コスマトスって誰?

1974年イタリア生まれ。父は『カサンドラ・クロス』(1976年)、『ランボー/怒りの脱出』(1985年)、『コブラ』(1986年)で有名な監督・ジョージ・P・コスマトスであり、パノスの初仕事は父が監督した西部劇『トゥーム・ストーン』(1993年)でのビデオオペレーターでした。SFホラー” Beyond the Black Rainbow”(2010年/日本未公開)で監督デビューし長編2作目となる本作でシッチェス・カタルニア国際映画祭監督賞を受賞しました。

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製作はイライジャ・ウッド

1981年生まれ。8歳の時に『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』(1989年)に出演したことを皮切りに多くの映画に出演し、90年代前半にはハリウッドトップの子役俳優として活躍。『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ(2001年~2003年)のフロド・バギンズ役で大人の俳優としての評価と世界的な知名度を獲得しました。

2010年に映画およびゲーム制作会社SpectreVisionを共同で設立。ホラー映画好きのイライジャ・ウッドは本作もSpectreVisiondeで製作し、『ダーティー・コップ』(2016年)で共演したニコラス・ケイジに出演の話を持ちかけました。監督のコスマトスがケイジにオファーしたのはジェレマイア役でしたが、ケイジがレッド役を演じたがったために、その配役に落ち着いたという経緯があります。

主演はニコラス・ケイジ

1964年生まれ。祖父は作曲家のカーマイン・コッポラ、叔父はフランシス・フォード・コッポラ、叔母はエイドリアンことタリア・シャイア、いとこはソフィア・コッポラという名門一家に生まれました。

高校中退して『初体験/リッジモンド・ハイ』(1981年)で俳優デビュー。この時の芸名はニコラス・コッポラでしたが、叔父フランシスの話ばかりされてめんどくさかったため、すぐにコッポラ姓を名乗るのをやめて、大好きなコミックヒーロー「ルーク・ケイジ」からとった姓に変えました。とはいえキャリア初期にはフランシスのお世話になっており、『ランブルフィッシュ』(1984年)、『コットンクラブ』(1985年)、『ペギー・スーの結婚』(1987年)などのコッポラ監督作に出演しています。

ゴールデングローブ賞にノミネートされた『月の輝く夜に』(1988年)、コーエン兄弟が監督した『赤ちゃん泥棒』(1988年)、デヴィッド・リンチ監督の『ワイルド・アット・ハート』(1991年)で俳優としての評価を確立し、マイク・フィギス監督の『リービング・ラスベガス』(1996年)でアカデミー主演男優賞受賞と、この辺りまでは演技派俳優として認識されていました。

キャリアの節目となったのはマイケル・ベイ監督の『ザ・ロック』(1996年)に出演したことであり、アーノルド・シュワルツェネッガーに断られたFBI捜査官役がなぜか彼にオファーされ、引き受けてみたら年間興行成績第4位という大ヒットになりました。翌年にも、元はシュワルツェネッガーとスタローンの共演作として進められていた『フェイス/オフ』(1997年)に主演して大ヒットし、一躍トップスターの座に就きました。

ただし、デビュー作の『初体験/リッジモンド・ハイ』で共演して以来の大親友だったショーン・ペンからは、「あいつはもう役者じゃない。才能を無駄にするような役を選んでいて、がっかりだ」などと酷い言われようもしましたが。

21世紀に入ると駄作の類も増えてきた上に、酷い浪費癖から資金難に陥り、「借金を返すためには仕事を選べない→何にでも出る俳優というイメージが定着したので良い役が来ない」という負のスパイラルに陥って、現在に至ります。ここ10年の出演作はほぼ駄作と考えていいような状況なのですが、たまに『グランド・ジョー』(2013年)のような鬼気迫る演技を見せるので油断なりません。さすがは元オスカー俳優です。

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登場人物

レッドの周辺人物

  • レッド・ミラー(ニコラス・ケイジ):クリスタルレイクでマンディと共に質素ながらも幸福な生活を送っている木こり。カルザースとの会話から、元は戦士だったことが伺える。カルト集団にマンディを殺されたことから、斧を自作し、またクロスボウを調達して、復讐へと立ち上がる。
  • マンディ・ブルーム(アンドレア・ライズボロー):レッドのパートナー。絵と本と音楽を愛し、今の生活に満足している。たまたま車ですれ違ったジェレマイアに一目惚れされ、拘束されてしまう。ジェレマイアの曲を聞いて笑ったために焼き殺された。
  • カルザース(ビル・デューク):森の奥のトレーラーハウスに住んでいる男で、レッドに武器のクロスボウを提供する。

カルト集団

  • ジェレマイア(ライナス・ローチ):カルト集団のリーダー。かつてミュージシャンになりたかったが挫折し、自分を否定した世の中こそが間違っていると信じている。ミュージシャンになれなかったことの代償として、他人から何を奪っても構わないと思っていることから、道端でたまたま見かけて一目惚れしたマンディをさらうという発想に至った。
  • ブラザー・スワン(ネッド・デネヒー):カルト集団内では実行隊長的な役割を果たしており、ジェレマイアから全幅の信頼を置かれている。
  • ザ・ケミスト(リチャード・ブレイク):薬物の調合をしている男で、バイカー集団・ブラックスカルズに薬の実験をして、彼らを凶暴な獣に変えた。自宅兼ラボで虎を飼っている。

感想

展開が遅くて盛り上がらない

「妻を殺された木こりがカルト集団に逆襲するホラー」と聞けば、15分から20分ほどで主人公が絶望のどん底に叩き落とされ、正味90分ほどでサクっと復讐をやり遂げるコンパクトかつ高密度な仕上がりを予想させられたのですが、実際の上映時間は120分超え。

その長めの上映時間にあるのは『ゴジラ対ヘドラ』(1971年)のようなサイケデリック映像であり、これをひたすらに見せられ続けます。最初20分はレッドとマンディの平穏な生活をポエムと映像によってダラダラと見せられ、ようやく復讐が始まるのが70分経過してからというマイペースぶり。はっきり言って飽きます。

また、ダイレクトにかっこいいアクションを見せてくれればいいものを、変にこだわった見せ方をするために活劇としてのスリルや迫力が失われており、こちらにもガッカリしました。

ジェレマイアのみ面白かった

そんなグダグダな作品中で唯一気を吐いていたのが、カルト集団のボスであるジェレマイアでした。いい歳なのに中2病全開で、自分は偉大なミュージシャン達と同等の能力を持っているのに、世間が俺の音楽を理解しなかったと豪快な責任転嫁。その件について神と話したところ、「俺が完璧に正しくて世間の方こそが間違っている」、「ミュージシャンになれなかったことの代償として、神から何をやってもいいと言われた」などと、都合が良すぎることを主張します。

彼の狂った主張は見ていてとても楽しかったのですが、実は1969年にシャロン・テートを殺害したチャールズ・マンソンと共通する部分が多く、笑ってもいられない部分があります。スターへの憧れを掻き立て、夢は叶うと幼少期から教え続けることの弊害が、マンソンやジェレマイアといった怪物を生み出すのです。

またジェレマイアが率いるカルト集団からは、パノス・コスマトス監督の父・ジョージ・P・コスマトスが監督した『コブラ』(1986年)のカルト集団を想起させられました。『コブラ』のカルト集団の描写は生ぬるいもので、そのことが災いしてか映画全体も締まらない出来となったのですが、本作での気合の入ったカルト集団の描写には、30年前に父がやり損ねた仕事を、息子が完成させているかのような感慨がありました。

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まとめ

見ている間中、退屈した映画でした。救いは中盤におけるジェレマイアの独演会であり、中2病をこじらせた中年が長々と自己弁護をする様のみ、圧巻でした。

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