アポストル 復讐の掟【6点/10点満点中_終盤暴走しすぎ】(ネタバレあり・感想・解説)

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[2018年Netflixオリジナル作品]

©Netflix

6点/10点満点中 ホラー映画としては上質だが終盤暴走しすぎ

Netflix ×『ザ・レイド』の監督

1905年のイギリス。身代金目的でカルト教団に誘拐された妹を救い出すためにカルトの拠点である孤島に潜入した訳アリの兄の物語なのですが、このカルト教団の土着信仰らしき雰囲気が『ウィッカーマン』を想起させたり、この兄を演じているのが『ザ・ゲスト』で殺人マシーンを演じたダン・スティーヴンスだったりと、僕たちの大好きなものが幾重にも重なった興味深い作品だったので、10月12日の配信開始と同時に鑑賞しました。

監督は2011年のインドネシア映画『ザ・レイド』で全世界にその名を轟かせたギャレス・エヴァンスですが、ウェールズ出身者のエヴァンスにとって初の英語劇に当たるのが本作ということです。

陰惨な雰囲気と度を越したゴア描写

ギャレス・エヴァンス監督の特徴としていかがわしい雰囲気づくりに長けているという点が挙げられるのですが、本作でもその手腕はいかんなく発揮されています。主人公・トーマスが潜入のために島への連絡船に乗った時点からイヤ~な空気が漂い始め、島に入ると「完全にヤバイ場所に足を踏み入れてしまった」ということが確定的となり、その緊張の糸はラストまで途切れません。

また、そこいらのホラー映画と比較すると数こそ多くはないものの、その独創性と振り切れ方からゴア描写は絶大なるインパクトを持っています。観客にまで息苦しさを感じさせ、緊張がピークに達したところでタガの外れたゴア描写を見せるというホラー映画としての基礎的な演出がちゃんとできており、観客に一瞬たりとも安堵を与えないという点で、本作は極めて優れたホラー映画であると言えます。

主人公の戦力設定の見事さ

主人公が強すぎるとサスペンスホラーとしての緊張感を阻害し、弱すぎると仕置きのカタルシスが減衰するという本作の内容において、主人公の戦力設定もよく考えられています。素手の対マンでなら誰にも負けないほどの戦闘スキルを持っているが、武器を持った相手や複数人が相手の場合には敵の手に落ちるという、実に絶妙なところに設定されているのです。また、ここは勝負をつけにいくべきところか、逃げに徹するべきところかという彼の都度の判断も的確なので、余計なストレスなく鑑賞することができました。例えば、潜入者の存在を察知したがそれが誰なのかは分からない段階で、教団が妹を広場に引きずり出して拷問をするというくだり。普通の映画だと我慢ならなくなった主人公が準備もできていない状態で飛び出していき、まんまと敵の手に落ちるというどうしようもない展開が待っているところなのですが、トーマスは「今出て行っても妹も自分も殺されるだけだ」としてこの挑発に耐えてみせます。こうした判断はとてもよかったです。

あわせて、この手の映画では危険を呼び込むような行動をとる脇役がいる場合が多く、そういう足を引っ張るバカな奴を見ているとストレスが溜まるものですが、本作についてはそうした人物が一人もおらず、全員が合理的な行動をとり続けるという点も良かったです。

※注意!ここからネタバレします。

暴走した物語と行き届いていない情報整理

殺人マシーンvsカルト教団の攻防戦の映画かと思いきや、中盤以降、物語はとんでもない方向へと暴走を開始します。このカルト教団がインチキかと思いきや、本当に土着の神様を拾って奴隷のようにこき使い、自給自足のコミュニティの基礎としていたという驚愕の事実が判明します。神を騙って信者たちにいい加減な決まりを押し付けていることが関の山のカルト教団が、実は本物でしたという前代未聞のオチが炸裂するのです。

さらには教団も一枚岩ではなく、教団幹部・フランクの息子がもう一人の幹部・クインの娘を孕ませてしまったことをきっかけとしてクーデターが勃発します。孕まされた娘をぶっ殺し、また孕ませた男を脳ドリルで処刑するクイン。教団トップのマルコムがそれを止めに入るとクインはマルコムを偽預言者扱いして「自分が指導者だ!」と宣言し始め、もはやトーマスによる妹奪還作戦が遥か彼方に吹っ飛んでしまうほどの超展開を迎えます。

この暴走した物語自体は嫌いではないのですが、問題は情報整理がまったくできていないことであり、そもそもフランクとクインが教団幹部であることや、若いカップルのそれぞれの親であるという基礎的な情報すら途中まではよく分からなかったので、トーマス以外の人たちが何やってんだかちょっとよく分からない時間があったという点は残念でした。また、誘拐を計画・実行したマルコムこそが悪の総元締めとして推移しながら、終盤におけるクインのクーデターによって相対的にマルコムが理解のある奴っぽいポジションになり、最終的にトーマスが手をかけるわけでもなく死亡するという展開にも違和感がありました。トーマスの妹奪還作戦という本筋がありながら誘拐の首謀者がラスボスではなくなるというのは、一体どうしたものなのかと。

Netflixオリジナル作品全般の課題

尖ってる部分は素晴らしいが、詰めが甘い。これがNetflixオリジナル作品に共通する特徴のように感じます。作家性の尊重を掲げるNetflixは、金は出すが口は出さないという主義を徹底しており、実際、桐谷美玲主演の『アンダーウェア』でNetflixと仕事をした関口大輔氏は以下の通りにインタビューに答えています。

“クリエイティブに敬意を払ってくれる人たちです。わけのわからない押し付けもないし、大人の裏事情みたいなものもないし。だからこそ、こちらもきちんと作らねばならないと思いましたけど、とにかく口出しはほとんどないです。“『テレビとネットの横断業界誌 Media Border 2015年10月号 vol.5』

この恩恵はノーリミットの表現面で最大限に発揮されており、本作の振り切れたゴア描写や陰惨な顛末は刺激的でした。ただし、仕事には「良い関与」というものもあるわけです。作っている人たちは見落としているが、客観視するとおかしな点を修正して見やすい作品にまとめるということも、リリース側の役割ではないかと思います。

例えば前述した人間関係が分かりづらいという点については、説明的な描写をいくつか加えるだけで全体像の把握が容易になり、視聴者はより物語に没入できたと思うのですが、そうした調整ができていないので視聴のストレスになっています。この点は凄く惜しいと感じました。

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Apostle
監督:ギャレス・エヴァンス
脚本:ギャレス・エヴァンス
出演:ダン・スティーヴンス、ルーシー・ボーイントン、マイケル・シーン
制作会社:One More One Productions、Severn Screen、XYZ Films
配給:ネットフリックス
公開:2018年10月12日
製作国:アメリカ、イギリス

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