仁義なき戦い 代理戦争_人を喰わにゃあ、おのれが喰われるんで【8点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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実録もの

(1973年 日本)
シリーズ第3弾。血生臭い抗争よりも権威・権力を巡ってのパワーゲームに主眼を置いたシリーズの真骨頂的作品で、複雑極まりない構図を短時間で描き切った脚本・演出の力技が光ります。また一番良いところで終わるという『帝国の逆襲』を先取った構成も素晴らしく、シリーズ内でも最高の面白さを誇っています。

感想

トップになりたい者・なりたくない者

広島随一の勢力を誇る村岡組の初代組長(名和宏)が引退を表明、その跡目を巡る騒動が物語の主軸となります。

従前の流れでは村岡組長の舎弟でもある打本昇(加藤武)が2代目として有力視されており、本人もノリノリ。

主人公 広能昌三(菅原文太)も旧知の仲である打本を応援していたのですが、村岡組幹部が殺された件の報復を躊躇して優柔不断な性格が露呈したことや、組長の座を欲するあまり疑心暗鬼になりすぎたことから、打本はみるみる人物評を落としていきます。

その次に候補に挙がったのが、なんと呉の山守組長(金子信雄)。金に汚く、特技はウソ泣きというおおよそヤクザの親分らしからぬケチな人物なのですが、どうも長老達からの評判は良いようです。そして本人も大乗り気。

こういうタイプ居ますね、部下からの評判は最悪に近いのに、なぜか役員から可愛がられている奴。

このシリーズは一貫して嫌な奴が話を引っ張っていくのですが、山守、打本の「こういう嫌な野郎いるわ」という絶妙にムカつくキャラ造形は最高でした。

ただし、広島のヤクザにはそんなに人材がいないのかというとそういうわけでもなく、村岡組幹部の松永弘(成田三樹夫)、武田明(小林旭)らは仲間内からの評判が良く実力もあるし、広能だって村岡2代目を狙いにいける立ち位置にいます。

しかしそういう実力者に限ってトップをやりたがりません。

縁の下の力持ちをやってきた彼らは大きな組織を背負うことの大変さを知っており、何かあっても文句を言っていられるNo.2やNo.3辺りが丁度良いくらいに思っているのでしょう。

仕事の大変さを知らない者がトップの地位を望み、組織を切り盛りする資質を持つ者が地位を望まないという捻じれ現象。これも組織あるあるです。

そんなわけで対抗馬もいないので山守が村岡組2代目に就任するのですが、ここから大混乱が始まります。

盃の安売りと代理戦争勃発

2代目に就任した山守のガバナンスは、案の定グダグダ。

山守は呉時代からの腰巾着である槇原(田中邦衛)を重用し続けるのですが、これが自分一人で喧嘩もできない臆病者なので、「あんなのにあれこれ指図されたくないわ」と他の幹部たちは完全にやる気喪失。

松永、江田といった実力者たちは「まぁ親分の好きにしたらいんじゃないです?」と投げやりな姿勢を隠さず、失敗が目に見えている話からは手を引き、各々勝手な活動に精を出し始めます。

幹部社員がやる気をなくした組織って本当にこんな感じになるので、なかなかリアルでした。

唯一、組のためを思って動いているのが広能なのですが、山守との信頼関係がないので何をしても裏切りを疑われる始末。

初代村岡組長も、前作『広島死闘篇』では山中(北大路欣也)を使い捨てにするなど、なかなかのタヌキ親父ぶりを披露していましたが、それでも子分を手懐けて自分の駒として使う能力には長けており、組のトップとしてはまともに機能していました。

しかし山守にはそれができないわけです。

そんな感じで大組織に見合う器のない山守が何をしたかというと、より強力な組織の権威を頼るということ。これもできない人あるあるですね。

ライバル打本が関西の巨大組織 明石組(山口組がモデル)との盃を交わしていたことから、山守は明石組のライバル組織である神和会(本多会がモデル)との盃を交わします。

当初、関西のヤクザ達は軽々しく盃を交わそうとする打本や山守の態度に対して不信感を持っていたのですが、彼ら自身の抗争においても広島を取るか取られるかが大きなファクターとなってきたことから、盃の安売りに応じるようになっていきます。

利用されているとも知らずホイホイ盃を受ける山守。かくして広島は明石組vs神和会の代理戦争の舞台となるのでした。

狐が虎の威を借りようとしたところ、自分の縄張りに虎を呼び込んでしまったという次第です。

ミドル達の失敗

そんなわけで、一貫して打本と山守という阿呆二人が事態を悪化させていったのですが、他の者達が理不尽に巻き込まれただけかというと、そうでもありません。

そもそも広能、松永、武田のうちの誰かが2代目を継いでいれば、少なくとも山守のような混乱は起こりませんでした。しかし然るべきタイミングで挙手しなかった以上、間接的には彼らも加担したようなものです。

また、広能は兄弟盃を交わしている明石組の岩井(梅宮辰夫)から山守を追い出して広島をとってはどうかと提案されるのですが、これに対して広能は「わしは呉に収まっていれば十分です」と消極的な姿勢を披露。

すると関西での熾烈な権力闘争を生き延びてきた若井からは、その姿勢はヌルイと咎められます。

そんな極楽は極道の世界にはないよ。人を喰わにゃあ、おのれが喰われるんで

広島の者は皆腹が座っていなかったことが問題を大きくしたわけです。この極道のパワーゲームは面白かったですね。最高でした。

≪仁義なき戦いシリーズ≫
仁義なき戦い_内容は一般的な組織論【7点/10点満点中】
仁義なき戦い 広島死闘篇_まさかのラブストーリー【8点/10点満点中】
仁義なき戦い 代理戦争_人を喰わにゃあ、おのれが喰われるんで【8点/10点満点中】
仁義なき戦い 頂上作戦_小林旭がかっこいい【7点/10点満点中】
仁義なき戦い 完結篇_蛇足だけどそこそこ面白い【6点/10点満点中】

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