ナルコス:メキシコ編(シーズン1)_熱量が足らない【6点/10点満点中】(ネタバレあり感想)

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実録もの

(2018年 アメリカ)
麻薬業者フェリクスが地方組織の一介の構成員から国のドラッグビジネスのトップにまで登り詰めるのですが、彼はヤクザというよりもビジネスマンタイプなので暴力は控えめ。対するDEAのカマレナ捜査官も単純な正義の人で、怒りの中で暴力に飲まれていくような危うさがないので、全体的に熱量が不足していました。面白いのは面白いんですけどね。

©Netflix

6点/10点満点中 すべてが過剰だったコロンビア編には及ばず

メキシコでロケハンしていたスタッフが地元マフィアに蜂の巣にされるという事件が起こった時には、もう継続は無理じゃないかと思ったナルコスシリーズの第4弾ですが、従前シリーズとは別の新シリーズとして無事リリースされました。配信開始と共にすぐに見ましたとも。ただし大好きなシリーズなので全10話を一気見するのは勿体ないってことで、一日一話のペースでしたが。

スタッフ・キャスト

ショーランナーは無印シリーズから引き続きエリック・ニューマン

ショーランナー(番組を仕切り、現場での最終決定権を持つ責任者)を務めるのは、『ナルコス』シーズン1~3に引き続き、エリック・ニューマンです。この人は多くの人気コメディアンを輩出したバラエティ番組『サタデー・ナイト・ライブ』のスタッフからキャリアをスタートし、90年代に映画界入りして『ウェインズ・ワールド』(1992年)、『トミーボーイ』(1995年)、『プロブレムでぶ/何でそうなるの?!』(1996年)等、コメディ映画を製作。2000年代に入るとザック・スナイダー監督の『ドーン・オブ・ザ・デッド』(2004年)やアルフォンソ・キュアロン監督の『トゥモロー・ワールド』(2006年)など作家性の強い娯楽作を手掛けるようになり、『ナルコス』の発案者であるジョゼ・パジーリャとは『ロボコップ』(2014年)で組みました。

正義の捜査官役にマイケル・ペーニャ

マイケル・ペーニャは1976年シカゴ生まれ。ただし両親ともにメキシコからの移民なので、血筋は100%メキシコ系です。1994年から切れ目なく多くの作品に出演しており、従前よりよく見かける顔ではあったのですが、その顔と名前がはっきりと記憶されるようになったのはデヴィッド・エアー監督の『エンド・オブ・ウォッチ』(2012年)辺りからでしょうか。今やハリウッドを代表するラテン系俳優であり、『アントマン』(2015年)、『オデッセイ』(2015年)、『運び屋』(2018年)など、多くの話題作に出演しています。

成り上がりの麻薬王役にディエゴ・ルナ

ディエゴ・ルナは1979年メキシコ生まれ。6歳の頃から子役として活動している芸歴の長い人で、同じくメキシコを代表する俳優であるガエル・ガルシア・ベルナルとは幼馴染です。テレビ界で活躍した後、2001年にガエルと共に出演したアルフォンソ・キュアロン監督の『天国の口、終りの楽園。』で国際的な知名度を獲得し、2002年よりハリウッドに進出。

線の細い体格とかわいい系の顔立ちの割には犯罪者役を演じることがよくあり(『エリジウム』『ブラッド・ファーザー』『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』)、一見するとヤクザ者には見えない親分・フェリクスにはうってつけの人材でした。

作品概要

無印シリーズとの関係

  • ナルコス/シーズン1:1970年代後半~1992年7月
  • ナルコス/シーズン2:1992年7月~1993年12月
  • ナルコス/シーズン3:1990年代半ば
  • メキシコ/シーズン1:1980年代前半~1985年

シリーズの設定年代は上記の通り。無印シーズン3はメデジン・カルテルに続きカリ・カルテルを倒してもなおアメリカへの麻薬供給が止まらず、失望してDEAを退職したペーニャ捜査官にメキシコでの仕事が提案されたところで終了しました。続く本シーズンでは1990年代後半を舞台にしてペーニャがメキシコの麻薬カルテルとの闘いを繰り広げるのかと思いきや、時代を一気に遡って無印シーズン1と並行する年代が描かれています。当然、キャストは一新されており、みんな大好きペーニャ捜査官が出てこないことには少々ガッカリさせられました。この方向転換の背景としては、メキシコにおける麻薬カルテル形成過程にまで遡ることで話がより分かりやすくなるという製作上の理由と、ナルコスを長く続けたいのでネタを温存しておきたいというビジネス上の理由の両方があったのだろうと思います。

別々の場所で同時期に発生したメキシコとコロンビアのカルテルがついに邂逅し、シリーズが緩やかに統合される第5話では、巨大なサーガを形成しようとするこのシリーズの大きな志を垣間見たような気がしました。麻薬王の一代記からスタートしたこのシリーズは、いまや80年代から連綿と続く麻薬戦争全体をカバーした歴史ものへと変貌しようとしています。

設定年代である80年代前半について

舞台となる80年代前半にはDEAの威光はなく、またメキシコ側もソフトドラッグである大麻を小規模な組織が取り扱っているのみであり、両者の激しい攻防戦はまだありませんでした。しかし後述する通りミゲル・アンヘル・フェリクス・ガジャルドが麻薬密売業者達を組織化し、また事業をハードドラッグであるコカインに移行させていったことでメキシコの麻薬カルテルは強力化・凶暴化し、これに対抗するDEAはレジェンダ作戦を展開して麻薬戦争が本格化しました。本シーズンではメキシコにおける麻薬カルテルの形成からレジェンダ作戦の開始までがカバーされています。メキシコ編はこれを皮切りに90年代、2000年代、そして現代へと推移していき、エル・チャポことホアキン・グスマンとの闘いをシリーズ全体のクライマックスに持ってくるのでしょうか。本作ではフェリックスの下で働く若き日のエル・チャポが登場していましたね。また、2018年12月5日に第2シーズンの製作が発表されましたね。

感想

今回の敵はメキシコの麻薬カルテルの始祖

本シーズンの主人公は二人。群雄割拠状態だったプラサ(70年代以前の大麻ビジネスを仕切っていた小規模集団)を統合して巨大カルテルを作り上げたミゲル・アンヘル・フェリクス・ガジャルドと、彼を追うDEA捜査官キキ・カマレナであり、二人とも実在の人物です。

ビジネスマン・フェリクス

このうちフェリクスは、元は地方のプラサで小物のボスに仕えていたのですが、バラバラに存在する国内のプラサをまとめあげて一大カルテルを作り上げるという野望を持ち、これを実現した人物でした。

シーズン1,2の主人公・パブロ・エスコバルは、いかつい風貌と派手な行動で世間を威嚇しつつ、強烈な身内意識で組織を強固にまとめあげるいかにもヤクザな親分であり、またシーズン3の主人公・ロドリゲス兄弟は持てる財力を賄賂等の形で投資し、軋轢を避けながらビジネスを成長させるというエレガントな経営者タイプの親分でしたが、フェリクスは抜け目ない計画と説得力ある交渉術で商談をまとめあげるビジネスマンタイプといった感じでした。

当初は何の後ろ盾もない状態で、ヤクザの世界で顔だけは広いドン・ネトと大麻栽培の技術だけはものすごい弟のラファを連れて全国行脚し、一癖も二癖もある地方のボスたちから「お前、どこのもんな~」みたいな感じで軽くあしらわれながらも、「全国の親分さん達を集めた会合を今度やりますんで、ぜひ出席してください。うちの弟が高品質な大麻を作りますので、絶対に良い儲け話になりますよ」と粘り強く勧誘を続けました。

行動を共にしているドン・ネトすら彼のビジョンには懐疑的だったり、せっかく取りまとめた会合の席を仕える親分にひっくり返されそうになったりと、まぁ散々な目に遭いながらも大仕事を着実に進めるフェリクスの姿は、もはやヤクザではなくサラリーマンでした。

頂点に立った後にもビジネス感覚

無事カルテルを作り上げてメキシコの麻薬ビジネスの頂点に立った後にも、汚職警官からのゆすりに遭ったり、政治家からの便宜を受けたくて頭を下げながら交渉して回ったりと、何ともサラリーマンっぽい姿には感情移入しながら見ることができました。

またパブロ・エスコバルとの接触も興味深く、方やメキシコの麻薬ビジネスのトップ、方やコロンビアの麻薬ビジネスのトップという関係性ながら、フェリクスは完全に格下扱いを受けています。かなり手荒な形でエスコバルの前に引きずり出され「メデジンよりも先にカリと話すとは俺に失礼じゃねぇか」とか「損害を出してもうちは一切負担しない」とか、まぁ威圧的な態度をとられるのですが、エスコバルの迫力とコカインの収益性の高さに負けて、相手が切ってきた条件を全部飲んでまでメデジンとの提携話を引き受けるというヤクザの親分っぽくない態度をとります。

身内よりもビジネス

コロンビアとの取引の過程では、弟・ラファが手掛ける大麻の製造・販売を切って、より収益性の高いコカイン輸送にビジネス全体をシフトさせるという意思決定を下しており、いざという場面では身内意識が希薄になるという点でも、エスコバルとは対照的でした。

弟・ラファ絡みでさらに興味深いのは、メデジンとの提携前、まだ大麻ビジネスが事業の柱だった時代にはフェリクスはどれだけのリスクを犯してでもラファを守り切っていたのに対して、コカインに軸足が移った途端にラファに対して「文句があるなら出て行っても構わん」という態度を取り始め、本格的に自分の首を取られそうになったラストではラファ(+ドン・ネト)を差し出して自身とビジネスの延命を図るという決断をしており、すべての判断基準はビジネスにあった点がフェリクスの首尾一貫した特徴となっています。

面白みに欠けるDEA捜査官・カマレナ

カマレナ捜査官を演じるのはマイケル・ペーニャですが、『ザ・シューター/極大射程』でヘタレ捜査官を演じたペーニャがどうしても熱血・敏腕捜査官に見えなかったという点が厳しかったです。

また、メキシコ麻薬戦争の最初の犠牲者であるカマレナ捜査官を扱うには相当な制約があったのか、彼とその家族を品行方正に描きすぎているという点も作品のリミッターとなっています。正義の人ほど見ていてつまらないものはないのですが、本作のカマレナはそのつまらない正義の人になってしまっているのです。

女に弱かったり、パラノイア的に麻薬王を憎んだりしつつもやることはキチっとやっていたことで好評を博していた前シーズンまでのペーニャ捜査官とは対照的に、カマレナには「バッジを持っているだけの狂人」というインパクトある人物造形がなされていませんでした。これは本シーズンの痛い弱点でした。

そういえば、マイケル・ペーニャは本作のリリースと同時期に全米公開されたイーストウッド監督の『運び屋』でもDEA捜査官役をやってましたね。ただしそちらでも印象を残せていなくて、捜査官役は向いていない人なんじゃないのという気がします。

血と裸は控えめ

ビジネスマンタイプのフェリクスと曲がったところのないカマレナ捜査官の戦いなので無印ほどどぎつい描写は少なく、コロンビアを舞台にした仁義なき戦いで肥えてしまった目には少々物足りなく映りました。

唯一頑張っていたのが、『スカーフェイス』を見てトニー・モンタナにダイレクトに憧れてファッションや素行が分かりやすいほど感化されていった中二病のラファくらいなのですが、そのラファですら他人を惨殺したり、めちゃくちゃな理不尽で周囲を恐怖に陥れたりするようなことはなく、ちょっと暴走してんなという程度でしたが。

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