ブライトバーン/恐怖の拡散者_躾ではどうにもならん子供【7点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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(2019年 アメリカ)
桃太郎やかぐや姫のように拾ってきた子供が、善意や躾ではどうにもならん相手だったらどうするという面白いコンセプトの作品。笑いに逃げず真剣なホラーとしてやりきっており、度を越した残酷描写など低予算ながら見せ場の多い充実した内容となっています。

作品解説

ジェームズ・ガン ファミリーが製作

本作をプロデュースしたのは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014年)のジェームズ・ガン。

今ではMCUクリエイター陣の筆頭的な存在ですが、若い頃には制作会社トロマで修行し、その後に『ドーン・オブ・ザ・デッド』(2004年)や『スリザー』(2006年)などを手掛けてきたという、本来はB級寄りの人材でした。

そんなガンが久しぶりに手掛けた低予算ホラーが本作であり、脚本は弟のブライアン・ガンと従弟のマーク・ガンが執筆し、エリザベス・バンクスやマイケル・ルーカーといった常連俳優が出演しています。

そして『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014年)にラヴェジャーズの一員として出演し、映画に付随するミュージックビデオ『ガーディアンズ・インフェルノ』を製作したデヴィッド・ヤロベスキーが本作の監督を務めています。

ガーディアンズ・インフェルノ』 は80年代風のダサいMTVノリを徹底的に模倣し、デヴィッド・ハッセルホフをフィーチャーするなど悪ふざけの限りを尽くした傑作ビデオであり、毎日でも見られるほどの中毒性があるのでオススメです。

YouTubeにアップされているので、ぜひご覧になってください。

感想

シン・スーパーマン

庶民が特別な赤ん坊を拾い育てるというお話は世界中に存在し、日本では「桃太郎」や「かぐや姫」がこれに該当します。

アメコミの世界においては「スーパーマン」や「ヘルボーイ」がそうなのですが、「善良な人々に育てられたことでスーパーパワーを世のため人のために使うことにした」というそれらの物語に対して、「もしも善意の通用しない子供だったら」というひっくり返し方をしていることが本作のコンセプト。

これはなかなか面白い切り口だし、よくよく考えてみれば超越的なパワーを持つ者が人間社会の規範に従ってくれるという話の方がありえなくて、能力者は非力な人類を見下し、本能を爆発させるという本作の方に私はリアリティを感じます。

アメコミの要素を解体し、より現実味のある形で再構築するというアプローチから、私は「シン・スーパーマン」という風情を感じました。

本作でプロデューサーを務めたジェームズ・ガンは、かつて「正義に目覚めて覆面でのヴィジランテ行為を始める奴は、きっと気が狂っている」というコンセプトで血まみれのブラックコメディ『スーパー!』(2010年)を監督しましたが、そのアプローチを敷衍したのが本作であるというわけです。

ちなみに『スーパー!』の主人公クリムゾンボルトが本作のエンディングでちらりとその姿を見せるので、両作は世界観を共有しているものと思われます。

血まみれ残酷ショー

明晰な頭脳と圧倒的な腕力、さらには飛行能力や目ビームまで備えた主人公ブランドンにとって人間など虫ケラ同然であり、子供が遊び半分で虫の羽や足をむしり取るように、彼は人体を破壊していきます。

眼球へのガラスぶっ刺さりとか、下あご外れとか、ルチオ・フルチの映画ですかと言いたくなるほどの気合の入った残酷描写の連続には誠に恐れ入りました。

加えて、好きな子が自分をキモい奴扱いしてきたことにキレて、その子の腕を『ザ・フライ』(1986年)ばりにへし折るとか、親でも容赦なく襲うという辺りは、精神的に堪えましたね。

両親、同級生、初恋相手というのはこの手のモンスターキャラの良心に働きかけ、こちらに引き戻す役割を果たす場合が多いのですが、ブランドンはそうした相手をも平気で傷つけるわけです。

付ける薬がないとはまさにこのこと。圧倒的な身体能力と邪悪な心をもったブランドンに、ただただ戦慄するのみでした。

加えて、アメコミのパロディとは言え笑いに逃げることはせず、全編をシリアスなホラーとして構築していることもポイント高いです。観客との真剣勝負をやってるなぁという志の高さを感じました。

躾にも限度がある

本作の内容は一般的な子育て論にも当てはまります。

うちは3人の子を育てているのですが、そこで思うのが、子供は持って生まれたもの以上にはならないということです。

理想的な子育てをしているとは言わないまでも、それなりに丁寧に育てているつもりではあるのですが、それでもうちの子供達は総じてガサツで、やたら騒ぐ、ルールに対して無頓着、注意力がない、整理整頓できないなどの短所があって、どれだけ熱心に教えても一向に治る気配がありません。

それが個性というものであり、外部からの刺激ではどうにもならないのでしょう。大人になるにつれて子供たち自身が自覚を持つようになり、徐々にマシになっていく程度でしか改善していかないのだろうと思います。

私自身、少年期はそうだったし。

育児書などには躾が大事などと書かれていますが、親が影響を与えられる部分なんて実はそう多くはないんじゃないのというのが実感です。

極端に酷い育て方をして長所をも潰してしまうという悪い影響の与え方は論外としても、常識的なレベルの親が教育や躾によって子供の長所を伸ばすとか、短所を克服させるという良い関与って、実は幻想なんじゃないのという気がします。

そう考えると、本来邪悪な者はどれだけ善意をもって接したって邪悪にしかならないという本作のアプローチは、正鵜を射ていると言えます。

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コメント

  1. 通りすがり より:

    次回作では同監督のクリムゾンボルトがvsでブランドン・ブライアに正義の鉄槌を下すみたいですねw
    少なくとも警官2-3人では相手にならないので、強い相手を用意するという点は当然だと思いますが、ボルトは普通の人間ですし、レンチ攻撃が通用するとは思えないですw
    設定変えて彼も超人化するんですかね、よくわかりません。
    州兵やら軍隊が出動してガンガン攻撃するも全く効かず、次々と惨殺されて行き軍が撤退する。って感じの方が個人的には好きです