アイズ・ワイド・シャット【6点/10点満点中_遊び慣れていない男が風俗行こうか悩むだけの映画】

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[1999年アメリカ]

6点/10点満点中

■真面目に生きてるのは僕だけ?

主人公であるハーフォード医師は若くして開業医として成功した上に、家庭にも恵まれた理想的な男性。ある日に出席したパーティで、彼はシドニー・ポラック演じる友人が若い女性と情事に及んだ上に、ドラッグのオーバードーズで女性を危うく死なせかけた場面に遭遇します。

また、ハーフォード自身にはまったくその気はなかったにも関わらず、同じパーティにてちょっと会話をした程度のモデルとの浮気を疑われたり、奥さんからは旅先で偶然見かけた将校に夢中になりかけたという思い出話を暴露されたりで、それまで家庭一筋・真面目一徹に歩んできた彼の認識は揺らぎ始めます。「僕以外の人たちは、陰でふしだらに遊んで生きてるんじゃないか?」と。

■僕もハメを外してみよう

そこで、ハーフォードはどうすれば自分も楽しめるのかを探求してNYの街をさまよい歩くのですが、

  • 人妻との不倫→向こうの旦那が出てきたら厄介
  • 街の売春婦→病気のリスク
  • 少女買春→論外
  • 高級変態クラブ→敷居高すぎ

と判断し、結局は奥さんと家でセックスしているのが一番という結論に辿り着きます。

■原作はアルトゥル・シュニッツラーの『夢小説』

この原作のタイトルからも分かる通り、本作は主人公の夢・妄想の話であり、夫婦でマリファナをやって以降の展開はすべて主人公の脳内世界だと解釈すると腑に落ちます。

って、真面目な男が風俗に行こうとしたけど、結局怖くてやめましたという、たったそれだけの話なんですよね。

■キューブリックの私生活が反映されたかのような作品

60年代には精力的に新作を制作していたキューブリックも70年代以降は急激にペースが落ち、ロンドンの自宅に引きこもるような生活となりました。自宅に客人を招くことはあっても自らどこかへ出向くようなことはなく、90年代には視覚効果の説明を受けたいということで当時多忙だったジェームズ・キャメロンをわざわざロンドンにまで来させて、自宅の試写室で『トゥルー・ライズ』を上映しながらキャメロンに生コメンタリーをさせたという逸話まであります(神と仰ぐキューブリックと一晩話せたことをキャメロンは喜んでいましたが、普通はありえない話ですよね)。

クリエイターとしてキューブリックは世の多くのことに関心を持っていたが、出掛けて行って実際にそれに触れてみるということはせず、想像でそれがどんなものかを判断してきた。ハーフォードの思索の旅とは、キューブリックが日常的に為してきたことと同じなのかもしれません。

■ロンドンにNYを再現

キューブリックの出不精は本作で極まり、世界最高のスターであったトム・クルーズを1年間ロンドンに住まわせ、パインウッドスタジオにNYの街並みを再現するという、労力とコストをあり得ない形で消費しました。

ただし、こうした労力が果たして作品のクォリティに貢献しているかと言われると微妙なところで、NYの街並みの出来は確かに素晴らしかったのですが、これが素晴らしければ素晴らしいほど、NYでロケをすればよかったんじゃないかという思いが強くなります。

■キューブリックの強みも出ている

もちろん、映画史上最高の巨匠による作品だけあって部分評価可能な点はいくつかあり、決してダメな映画ではありません。特に高級変態クラブの美しさといかがわしさ、潜入した主人公がどんなえらい目に遭わされるのかというスリルは素晴らしく、このパートは楽しめました。

また、総じて女優を美しく撮れており、ニコール・キッドマンは言わずもがな、わずかな登場場面しかないリーリー・ソビエスキーも同時期に撮影された『ディープ・インパクト』などとは比較にならないほど魅力的に収められており、巨匠の技を楽しむ映画としては、それなりに見られます。

■トム・クルーズははまり役

公開当時には批判の大きかったトム・クルーズもなかなか良かったと思います。真面目一徹の主人公にはハリウッドの優等生であるトム・クルーズが非常に合っており、当時の彼の演技の固さがいい具合に役柄にハマっています。

また、性欲を吐き出したいんだけどどうしていいのか分からないチンケな男を表現するのに、彼の身長の低さも貢献しています。従来から背の低さをさほど隠そうとはしていなかった人ではありますが、女性よりも背が低いという描写をあちこちに入れられているのは本作くらいじゃないでしょうか。

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