コブラ会（シーズン5）_シリーズ最低のつまらなさ【5点/10点満点中】（ネタバレあり・感想・解説）

（2022年アメリカ）
『コブラ会』は大好きなシリーズなんだけど、今回はダメだった。コブラ会の道場拡大というビジネス面での摩擦が中心で空手の話ではなくなったし、リアリティの線引きも狂っている。「さっさと警察呼べよ」と何度思ったことか。

感想

前シーズンラストのオールバレー空手大会はコブラ会vsミヤギ道の果し合いの場でもあり、負けた方が道場を閉めるという条件付きだった。

結果はミヤギ道の惜敗で、ダニエルさん（ラルフ・マッチオ）は約束を守って道場を閉める。

よって本シーズンでは稽古や試合といったスポーツドラマらしい見せ場はほぼなくなっており、代わりに描かれるのは道場を拡大しようとするコブラ会vsそれを阻止しようとするダニエルさんの攻防戦ということになる。

メインとなるのは大人同士のいざこざなので、若者が空手の稽古を通して自分の問題を解決するという、映画版から連綿と続くこのシリーズのアイデンティティは失われたと言える。

現在のコブラ会を仕切っているのは『ベスト・キッド3』（1989年）でダニエルさんを陥れようとしたテリー・シルバー（トーマス・イアン・グリフィス）。

長らく空手から遠ざかっていたシルバーは、前シーズンにてジョン・クリースに乞われる形で嫌々ながら復帰したのだが、道場で子供たちに稽古をつけていくうちにある野望に目覚め、ついにはコブラ会創始者ジョン・クリースを追い出して自らが道場主となった。

そこまでしてシルバーがやりたかったのはコブラ会の大規模フランチャイズ化であり、その大きな足掛かりとして世界選手権に門下生を送り込もうとしている。

これに対してダニエルさんは「コブラ会の教えは危険だから、あいつをのさばらせちゃいけない」と言ってこれを妨害しようとして、少年期のライバルだったチョーゼンを沖縄から呼び寄せる。

ここで問題なのが、ダニエルさん側が何にそんなに躍起になっているのかよく分からんということである。

悪役シルバーの動機は純ビジネス的で一般でも理解可能なのに対して、ダニエルさんが打倒コブラ会に燃えている理由には客観性がない。

少年期にシルバーに大変な目に遭わされたことや、直近の空手大会で負けたことへの腹いせにも見えてくるので、熱くなるダニエルさんを応援しようという気になれなかった。

シルバーの評判を落とそうと熱くなるダニエルさんに対して、彼の攻撃を先読みして罠を仕掛けるシルバー。本シーズンはこの展開の繰り返しで軸となるドラマがないので、面白いとは感じなかった。

両者の争いはどんどんヒートアップしていき、暴行、放火、建造物侵入など、何でもありの状態になってくる。

従前も法的にはユルユルだったこのシリーズだが、そうは言ってもこれまでは子供のやることだったので、警察を介入させないことにも一定の納得感があった。

しかし本シーズンでは大人同士で立派な犯罪行為をやり合う。もう警察呼べよと何度思ったことか。

最終話では日本刀まで持ち出してマジの殺し合いを始めるんだけど、目の前の果し合いに勝ったとしても、刃物を振り回して相手をケガさせた時点で、コブラ会をビジネス的に成長させるという目的は果たせなくなると思うんだけど。

まぁシルバーは『ベスト・キッド3』からの因縁があるので百歩譲って仕方ないとしても、彼が韓国から連れてきた師範達が不法行為に加担する理由が全くもって分からない。

彼らはミヤギ道に対してもダニエルさん個人に対しても特段の恨みがなく、ビジネス面での有望性に惹かれてシルバーの元にやってきただけなので、ヤバイと感じた時点で手を引くと思うんだけど。

そんなわけで、いかにファンタジー空手のシリーズとは言えリアリティを度外視しすぎの感があり、私は全く乗れなかった。

予算がかからない割に視聴者数が多いので、Netflixはまだまだ続けるのだろうけど、そろそろコンテンツのポテンシャルが尽きてきたように思う。