フォールガイ_敵の陰謀は穴だらけ【6点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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その他アクション
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(2024年 アメリカ)
アクション映画界の縁の下の力持ちフォールガイ(=スタントダブル)にスポットを当てた娯楽大作。ド派手なアクションに程よいコメディにと気持ちの良い作風にはなっているが、込み入ったストーリーとの間での調和がとれているとは言えず、中盤やや間延びしたのが残念だった。

感想

プライベートでいろいろ立て込んでいて上映開始直後に見に行けず、2週間も経過後という随分と鮮度の落ちたタイミングで鑑賞。

しかも台風10号のスローな日本直撃で気象も交通も大荒れな日に見に行ったんだけど、このタイミングが功を奏してか、劇場がガラガラでほぼ貸し切り状態を体験できた。

見たのはT-JOY Prince 品川のIMAXで、聞くところによると日本でトップ5に入る大きさのスクリーンらしい。そんな映画館を貸し切り状態で見られたのは幸運だった。人生、何が吉と出るかは分からないものである。

往年のテレビドラマ『俺たち賞金稼ぎ!!フォール・ガイ』(1981年-1986年)の映画化らしいが、オリジナルは未見。ラストに出てきて「誰だ?」と思ったじいさんとばあさんがオリジナルキャストだそうな。

『ブレードランナー2049』(2017年)『ファースト・マン』(2018年)のライアン・ゴズリングが製作・主演を務めているが、これまで彼が演じてきた役柄のようなダークさはなく、カラっと明るいスタントマン役を、実に楽しそうに演じている。

監督は『アトミック・ブロンド』(2017年)、『ブレット・トレイン』(2022年)のデヴィッド・リーチ。自身もスタントマン出身のリーチは業界の裏の裏まで知り尽くしており、本作はハリウッド内幕ものとしても機能している。

大勢のスタッフが入り乱れて混とんとした現場、プロデューサーや主演俳優の言いなりにならざるを得ない監督など、デフォルメこそされているが、思うところはいろいろあったんだろう。お察しします(古畑風)。

主人公はライアン・ゴズリング扮するスタントマンのコルト。

大スター トム・ライダー(アーロン・テイラー=ジョンソン)からの信頼厚く多くの現場で彼のスタントダブル務め、また監督志望の恋人ジョディ(エミリー・ブラント)との関係も良好で順風満帆のコルトだったが、現場での事故で背中を負傷。

スタントマンとしての職とプライドを同時に失ったコルトは、恋人ジョディの前からも姿をくらましていたが、トムの製作パートナーのゲイル(ハンナ・ワディンガム)より、新作の撮影現場からトムが行方をくらましたので探して欲しいとの依頼を受ける。

「もう引いた身ですから」といったんは断るコルトだが、それはジョディの監督デビュー作でのことだった。主演俳優に問題があることが発覚すれば製作打ち切りとなることは必至であり、ジョディのため撮影が行われているシドニーに向かうというのが、ザックリとしたあらすじ。

デヴィッド・リーチ監督はブラッド・ピットやジャン・クロード・ヴァンダムのスタンドダブルを務めてきたそうだが、製作現場を引っ掻き回すスターとくれば、ヴァンダムがモデルになったのだろう。

飼ってる犬の名前がジャンクロードだし。

トムとゲイルがとにかくいけ好かない奴らで、彼らに振り回されるコルトとジョディとの間で分かりやすい色分けとなっている。

で、人のいいコルトはどんどん厄介事に巻き込まれていくのだが、スタントマンの技で難局を乗り越えていく。この見せ場はかなり楽しい。

ただしVFXでも違和感なく映像を作れてしまえる時代なので、エンドクレジットでメイキング映像を見るまでは、ゴズリング自身が多くのスタントをこなしているということは伝わってこなかった。まったくもってややこしい時代である。

プロモーション段階で見せ場のメイキングをバンバン見せて、主演俳優自身がスタントをこなしているという予断を観客に対して与える『ミッション:インポッシブル』シリーズのやり方は、やはり正しいんだなぁと改めて思ったりで。

コルトによるトム捜索と、ジョディとの関係修復が映画の二軸となるんだけど、トム捜索はやや複雑で作品の勢いを奪っているような気がした。そこまで難しくはないのだけれど、この題材でプチドンデン返しとか要らないかなぁと。

脚本を書いたのは『アイアンマン3』(2013年)、『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』(2015年)のドリュー・ピアースで、デヴィッド・リーチ監督とは『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』(2019年)でも組んでいる。

なまじ優秀な脚本家ゆえか、この題材に本来不要な「見ごたえあるストーリー」を織り込もうとしている。

その結果、上映時間は126分に。

本質的にはジャッキー・チェンの映画と似たようなものだと思うので、この上映時間は長すぎる。私は中弛みを感じてしまった。

そしてストーリーに拘っている割に、敵側の陰謀は穴だらけ。

トムが偶発的に起こした殺人事件の濡れ衣をコルトに着せようとしたことが事の真相なんだけど、公の場で派手なカーチェイスや銃撃を行うので、隠ぺいというそもそも論が完全に無視されている。

またハリウッドの映像技術を使って犯行映像をトムからコルトに挿げ替えようとするんだけど、そんなものが通用するのはSNS上での世論の撹乱までが関の山で、捜査機関を騙しきることなんて不可能だろう。

犯行時点でコルトは入国すらしていなかったんだから鉄板のようなアリバイがあるとか、事故現場での目撃者が多数いたのに、誰も警察にタレこまなかったのかとか、考えるといろいろ不自然。

なまじストーリーに力を入れてしまったせいで、アラが目立ってしまった。全体のバランス感覚を間違えたのではないかと思う。

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