ファイティング・ダディ 怒りの除雪車_社会考察は興味深いがアクションとして爆発力不足【5点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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(2014年 ノルウェー)
除雪車の運転手をする模範市民・ニルスの元に、一人息子がコカインの過剰摂取で死亡したとの知らせが届く。しかし、彼の独自調査により息子は地元ギャングに殺されたことが判明し、ニルスはギャングを次々と抹殺していく。

5点/10点満点中_興味深い社会考察の一方で、バイオレンスとしての盛り上がりは逃している

© Magnet Releasing

リーアム・ニーソン主演作のオリジナル

日本では2019年6月に公開されるリーアム・ニーソン主演の『スノー・ロワイヤル』のリメイク元です。本作の主演を務めたステラン・スカルスガルドは『シンドラーのリスト」のシンドラー役を最後までニーソンと争った経歴があり、ステラン・スカルスガルドとリーアム・ニーソンが似ているということは世界的な認識のようです。

ノルウェー人監督・ハンス・ペテル・モランドがオリジナルとリメイク両方の監督を務めています。

ノルウェーの社会背景が色濃く反映されている

本作を見ていて違和感を覚えるのは、バイオレンス映画の割には社会背景を反映した設定やセリフがやたら多いことです。

主人公(他のスカンディナビア諸国からの移民)

  • 舞台はノルウェーだが主人公には移民という設定が置かれている。(演じるスカルスガルドの国籍に準じてスウェーデン人と思われる)
  • 地元の人たちからは「移民なのに実に立派な人だ」と言われている(移民は全般的に立派じゃないってこと?)。

地元ギャング(生粋のノルウェー人)

  • 伯爵と呼ばれる地元ギャングのボスはセルビア人組織を終始アルバニア人と言い続けており、どうやら東欧人の区別が付いていない。
  • チャイナマンと呼ばれる殺し屋が現れるが、中国系ではなく日系(国籍はデンマーク)。どうやら組織の人間はアジア人の区別が付いていない。
  • 伯爵は奥さんと息子を巡っての親権争いをしているが、その奥さんはデンマーク人
  • 伯爵は奥さんに向かって「デンマーク人の分際でえらそうな口を利くな」と言う
  • 食生活についての奥さんとの会話で、伯爵は「俺はビーガン(植物性食品しか食べない人)だ」と主張。畜産国のデンマークではビーガンを含む菜食主義者が少ないことが、この発言の背景にあると思われる。
  • スウェーデン系のディックマンという名字を冗談のネタにしている。
  • 「スウェーデン人のガキを殺すと親族が出てきて面倒だ」というセリフがある。
  • 社会福祉をネタにした会話。「温暖な国はバナナばっかり食ってて、社会福祉はない」「温暖な国の政府はたいていが破産寸前だ」

セルビア人ギャング(東欧からの移民)

  • ノルウェーの刑務所をネタにした会話。「ノルウェーの刑務所は飯がうまくて看守も別の受刑者も親切。職業訓練をしながら年金の積み立てができるし、拘留中に歯の治療までしてもらえた」
  • ノルウェー人の犬の散歩の様子を見て、「なぜあいつらは犬の糞なんか拾うんだ?」「それが国民性ってもんなんだろ」

ノルウェーの社会背景

ノルウェーは移民が全人口の13%を占めており、移民に対して厳格か寛容かで社会は揺れています。2018年のポール・グリーングラス監督作『7月22日』でも題材にされたウトヤ島のノルウェー連続テロ事件は、キリスト教原理主義者が左派政権を攻撃したものでした。

2013年の総選挙では移民制度の厳格化を訴える中道左派連合が勝利し、以後は移民の数が激減。シルヴィ・リストハウグ移民・統合大臣「この低い数字を今後も維持しなければならない」と述べています。

地元民と移民の両方に争いの火種が存在している

本編中、地元ギャングは移民に対して差別的である上に無知で、東欧系とかアジア系を大きく括っているのみで細かい区別が付いていません。同じく北欧からの移民に対しても侮蔑のような言葉遣いをしており、こうした他人に対する不寛容や共感力の低さがトラブルの元になっているようです。

ただし移民の側にも問題があって、犬の散歩のくだりが顕著なのですが、その社会の人々の行為や価値観を理解しておらず、悪気はないもののトラブルの火種は彼らの側にもあります。加えて母国と比較すると刑罰が生ぬるく、彼らに対してはペナルティが抑止力になりえていないという分析も織り込まれています。

なお、本編中に死人が出た場合には追悼テロップが出るのですが、各自が信じる宗派のアイコンも一緒に表示されるという一工夫も施されているので、お見逃しなく。

バイオレンスとしては不完全燃焼

上記の通り社会考察的な部分は興味深かったのですが、バイオレンス映画としては爆発力不足かなと思いました。まず、復讐ものに必要な情念というものが不足しています。主人公は一人息子を殺された上に、復讐に協力してくれた兄までを失うのですが、明確に怒りや後悔を明確に口にすることも、黙って耐えるような素振りも見せないので、復讐劇が盛り上がりませんでした。かつ、キレた模範市民という振れ幅の大きさも示せていません。

またこの題材であれば、素人である主人公の職業上の特技がギャングとの戦いで思いもよらぬ優位性になるという点にこそ面白さが宿ったと思うのですが、主人公が序盤から腹座りまくりの上に、腕っぷしでも武器の扱いでもプロのギャングに負けていないことから、異業種格闘戦としての勘どころも外しています。ふざけた邦題の通り、除雪車が大活躍すれば良かったんですよ。

加えて、二つの犯罪組織の全面抗争にまで至るという急展開にも、本来あるべき熱さがなかったように思います。ギャングにとっては取るに足らない尻尾切りだったはずが雪だるま式に事が大きくなっていき、気が付くと制御不能になっていたということの面白さを観客に対して的確に伝えられていません。

この冷めた感じこそが北欧風ということなのかもしれませんが、私には物足りなく感じられました。暴力親父リーアム・ニーソンならばこの辺りは補完されそうなので、リメイクに期待ですね。

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