マッドタウン【1点/10点満点中_監督の独りよがりだけで2時間はキツイです】

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[2017年Netflixオリジナル作品]

1点/10点満点中

今まで100本以上のレビューを書いているものの最高点(10点)と最低点(1点)はまだ出していなかったのですが、初の1点を付けるにふさわしい映画についに出会いました。

一応はヴェネツィア国際映画祭で審査員特別賞(金獅子賞、審査員大賞に次ぐ第3位の賞)を受賞した作品なのですが、これが見事なまでに私の生理には合わず、見ていることに苦痛を感じるほどの作品でした。

■アナ・リリー・アミールポアー監督とは

本作の監督を務めたアナ・リリー・アミールポアーとはイラン系アメリカ人の女性監督であり、2014年の長編映画監督デビュー作『ザ・ヴァンパイア 〜残酷な牙を持つ少女〜』がサンダンス映画祭で話題になりました。

彼女はタランティーノやジム・ジャームッシュに例えて評されることもあり、またフィルムメイカー誌の2014年のインディペンデント映画ニューフェイス25人にも挙げられ、インディーズ界ではちょいと知られた監督のようです。本作は彼女の長編2作目にあたるのですが、作品内容や制作規模に不相応なほどの豪華キャストに恵まれたのは(キアヌ・リーブス、ジム・キャリー、ジェイソン・モモア、ディエゴ・ルナ、ジョヴァンニ・リビシ)、ひょっとしたら21世紀の『エル・トポ』になるかもしれない企画だったので、出演依頼を断ると後悔するだろうなと思われたからなのかもしれません。

■あらすじ(ネタバレ含んでます)

本作は独特な設定の元で独特な固有名詞が飛び交い、またそれが何を意味するのかを具体的には説明されず観客の側に解釈が要求される映画なので、まずは内容の整理をしてみます。

バッドバッチと呼ばれる人達が合衆国の収容所から法の支配の及ばない砂漠に追放されるのですが、砂漠にはブリッジとコンフォートという二つの集落があり、バッドバッチは基本的にはそのどちらかに所属しています。

ブリッジは弱肉強食を象徴する集落。彼らはたまに中間地帯に現れる人を襲って食べているのですが、ホラー映画のカニバリストにありがちな狂人らしさはなく、人肉をちゃんと調理して食べるし、空いた時間では体を鍛えたり絵を描いたりといった、結構きちんとした生活を送っています。

コンフォートは文化的な退廃を象徴する集落。この集落の住民のほとんどは働きもせず、肉体的にも貧弱です。夜になるとドリームというリーダーが配布するドラッグを摂取してパーティーを行い、昼間は気だるそうに道端に座り込んでいます。

主人公・アーレンは自分の右腕と右足をディナーにされたことから当初はブリッジを恨んでいたものの、コンフォートに馴染めなかったり、腹いせに誘拐してきたブリッジの少女と関わったり、娘を追いかけてきたブリッジの住人・マイアミマンと長時間を過ごしたりする中で視点が多面的となり、彼女の心にあったボーダーはどんどん取り払われていきました。

また、マイアミマンも娘を誘拐したアーレンに対して怒りを示すことはありませんでした。

■結局何を言いたい映画だったのか

この時のアーレンとマイアミマンの心境とは、相手のその時・その立場・その状況だったら仕方ないよねという悟りだったのだろうと思います。アーレンは腕と足を食われた被害者ではあるものの、ブリッジ達としても何かを食べなきゃ生きていけない中での行動であり、被害の事実はあっても加害という側面は希薄です。これはマイアミマン側にも言えることで、自分達は特に悪意なく必要性にかられてアーレンの腕と足を食べたが、食べられた側からすれば怒って当然で、娘を誘拐ぐらいはされても仕方ないよねと。

これは許すとか許さないとかってレベルの話ではなく、人間は生きているだけで誰かを傷つけることが宿命であり、自分が被害者になろうが加害者になろうが、ある程度は世の摂理として受け入れましょうということを説いているのかなと思いました。

■思わせぶり過ぎる演出

こうしてあらすじと解釈を書いてみると結構良い映画だったような気もしてくるのですが、声を大にして言いたいのは、本編は絶望的に面白くないということです。裏を返せば、それなりに意義のある内容なのに、演出によってなぜここまでつまらなくできるんだということにもなります。

序盤にていきなり主人公の手足が切断されて料理される場面には心底驚いたものの、本作で刺激的な場面はそれだけです。2時間近い上映時間の大半は何の目的があるのかもよく分からないイメージの羅列であり、確かに画作りなどにはセンスを感じられるものの、それだけだとさすがに飽きます。

また、観客に対するサービスを意図的に避けており、例えばアーレンがブリッジの女性を殺害する場面や、マイアミマンが新規のバッドバッチに襲われる場面などは娯楽的に盛り上げることもできたはずなのに、監督側におかしな気負いでもあったのかそうした場面は見事にスカされていくので、見ていてストレスが溜まりました。

また、コンフォート側の描写は結構詳細であり、キアヌ・リーブス演じるドリームはいろいろと意味のありそうなことを言うものの、結論から振り返った時にコンフォート側の描写にさほどの重要性はなく、無意味なことに長時間観客を付き合わせたことも罪深く感じました。

本来は語るのに30分もかからない話に対して、無駄な余白をくっつけて2時間に引き伸ばしたような作品であり、しかも観客に対するサービス精神も皆無なので見る価値のある部分がほぼない。「映画とはこうあってはならない」という見本のような映画だと感じました。

 

The Bad Batch

監督:アナ・リリー・アミールポアー

脚本:アナ・リリー・アミールポアー

製作:ダニー・ガバイ、シーナ・サイヤ

製作総指揮:ミーガン・エリソン、エディ・モレッティ、シェーン・スミス

出演者:スーキー・ウォーターハウス、ジェイソン・モモア、キアヌ・リーブス、ジム・キャリー、ジョヴァンニ・リビシ、ディエゴ・ルナ

撮影:ライル・ヴィンセント

編集:アレックス・オフリン

製作会社:アンナプルナ・ピクチャーズ、ヴァイス・フィルムズ、ヒューマン・スチュー・ファクトリー

配給:ネオン(米)、Netflix(日)

公開:2017年6月23日(米)、劇場未公開(日)

上映時間:116分

製作国:アメリカ合衆国

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