ディファイアンス【5点/10点満点中_まとまらない組織と機能不全を起こしたリーダー】

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[2009年アメリカ]

5点/10点満点中

まず言っておきますが、この映画はドラマとしては極めて凡庸です。ただし、組織運営の難しさや、緊急時におけるリーダーシップの重要性を映画的な綺麗事に逃げずかなり真剣に描いた作品なので、その切り口では興味深く感じました。

■実話ベースだが脚色は多い

ポーランドでユダヤ人狩りを生き延びたビエルスキ家の4人兄弟(トゥヴィア、ジュス、アザエル、アーロン)によって結成され、戦後まで約1,200人のユダヤ人の共同体を隠れて維持し続けたビエルスキ・パルチザンを映画化した作品であり、基本的には実話ベースではあるものの、原作者が戸惑うほどの脚色が加えられているという、”Based on True Story”の幅が異様に広いハリウッドらしい作品となっています。

■凡庸な人間ドラマ

主人公・トゥヴィアは奥さんの実家の稼業を手伝いつつ、たまに密輸業をやってたチョイ悪です。本来の彼は人助けに燃える正義の人でもなければ、軍隊と渡り合うような武闘派でもなく、また1000人規模に膨れ上がった組織をまとめあげるだけの人心掌握術も持っておらず、密輸業をやっていたことから人やモノを隠すことが得意で、地元の森やケモノ道に詳しいというだけの人物です。そんなトゥヴィアがユダヤ人避難民のリーダーとして担がれていくのですが、リーダーとしての彼の成長過程が大幅に省かれており、かなり早い段階で徳も知恵も行動力もある立派なリーダーに変貌してしまうので、ドラマにまったく面白みがありませんでした。正義の人ほど見ていてつまらないものはないのですが、トゥヴィアはそのつまらない正義の人になってしまうのです。

また群像劇としても微妙で、トゥヴィアとズシュ以外のキャラクターが全然立っておらず、「この人を見ていたい」と観客に思わせるような脇役が一人もいなかったことはしんどかったです。

■まとまらない組織

ユダヤ人という以外に共通点のない人々が緊急避難的に集まった組織なので、当初よりこの組織はまとまっていません。まず森での生活に役立ったのは農夫や肉体労働者達であり、彼らは教師や会計士といったホワイトカラーの人々を下に見ています。肉体的に脆弱なホワイトカラーなど、森では足手まといですからね。しかし参謀役としてトゥヴィアに重宝されるのはホワイトカラーの面々であるため、肉体労働者側は面白くありません。この小さな社会においても階級闘争のようなものが起こるのです。

また、補給が厳しくなる冬には主に分配を巡って揉め事が起こるようになります。物資の調達に出かけている者達は「俺らの取り分の方が多くあるべきで、外に出ていない者と均等配分というのはおかしい」と主張し、他方で森を守っている者達は「調達班は持ち帰る道程で食料を食べているはずだ」と疑心暗鬼に陥っており、両者の溝はまったく埋まりません。

通常の映画では資質の異なる者同士がお互いに認め合いながら、そのうち結束し始めるという展開を迎えるところを、本作は最後まで仲違いをしたまま組織がまとまることは一度もありません。それどころか物資が減り、腹が減ってくれば相互への不信感は余計に深刻になります。映画的な綺麗事ではなく、人間や組織のめんどくさい部分や醜い部分を全面的に押し出したアプローチとなっており、これはかなり面白いと感じました。

■どこまで厳格に規律を運用するべきか

そして、厳しい状況下では規律違反も発生し始めます。まず分配への不平を訴えていた調達班の数名が食料を独占し「俺らが多く食べる」と言い始めます。トゥヴィアはこれに対しては厳罰をもってあたり、反乱の首謀者を射殺しました。

次に、妊娠を禁じていたにも関わらず臨月までこれを隠し通し、子供を出産する者が現れます。これに対してもトゥヴィアは処刑を考えるものの、恋人・リルカから咎められてこの違反は黙認します。これは人道的には正しい判断ではありましたが、規律違反の黙認はリーダーとして張り詰めた状態にあったトゥヴィアを悪い意味で弛緩させました。組織全体に対して妊娠を禁止していた手前、トゥヴィアはリルカとの性交渉を自粛していたものの、本件の直後に二人は関係を結びます。こうしてリーダー自身がルールを軽視するようになり、トゥヴィアによる組織の統率はここから一気に弱体化していきます。

■機能不全を起こしたリーダー

偵察隊がドイツの斥候兵を捕まえた際に、集落ではそのドイツ兵に対するリンチが起こります。ユダヤ人排斥の当事者でもない若い斥候兵が、ドイツ人だからという理由で暴力を受けることをトゥヴィアは良しとはしていないものの、かといって暴走した同胞を止めに入るようなこともせずにこのリンチを黙認します。

この斥候兵の存在が示す通りドイツ軍は森への進軍を開始しており、それから逃れるために集団は拠点を放棄して移動を開始するのですが、この移動の末に、目の前の沼地と背後から迫るドイツ軍に挟まれるという最悪の事態に陥ります。そしてこの逼迫した事態と、「どうするのか早く決めてくれ!」とうるさいモブ達からのプレッシャーを受けてトゥヴィアは真っ白になり、その場で頭を抱えてうずくまってしまいます。ここでリーダーは機能不全を起こしてしまうのです。ほどなく追い付いてきた弟・アザエルがリーダーとしての意思決定を代行してくれたおかげでその場は切り抜けられたものの、次に行きついた岸ではドイツの戦車隊が待ち構えており、この意思決定も誤っていたことが判明します。この組織のリーダーシップは完全に死んだ状態となっていたのです。

丁度いいタイミングでズシュの率いるパルチザンが救援に来てくれたおかげで助かったものの、リーダーが集団を統率することも、意思決定を下すこともできなくなった状態で終わる映画というものは初めて見たので、この崩し方は面白いと感じました。

Defiance

監督:エドワード・ズウィック

脚本:クレイトン・フローマン,エドワード・ズウィック

原作:ネハマ・テク『ディファイアンス ヒトラーと闘った3兄弟』

製作:エドワード・ズウィック,ピーター・ジャン・ブルージ

製作総指揮:マーシャル・ハースコヴィッツ

出演者:ダニエル・クレイグ,リーヴ・シュレイバー,ジェイミー・ベル

音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード

撮影:エドゥアルド・セラ

編集:スティーヴン・ローゼンブラム

製作会社:パラマウント・ヴァンテージ,Grosvenor Park Production,Bedford Falls Company,Defiance Productions

配給:パラマウント・ヴァンテージ(アメリカ),東宝東和(日本)

公開:2009年1月16日(アメリカ),2009年2月14日(日本)

上映時間:136分

製作国:アメリカ合衆国

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