NY心霊捜査官_悪魔が関わるホラーは怖くない【3点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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(2014年 アメリカ)
気味の悪い場面はあるものの怖くはなく、ホラー映画として失敗しています。またミステリーとしても壊れた主人公の再生の物語としても正常に機能しておらず、何も良い部分のない映画となっています。

© 2014 – Screen Gems

あらすじ

ニューヨーク市警の刑事ラルフ・サーキは、母親が2歳の我が子をライオンの檻に投げ込んだ事件と、男が妻に激しい暴力を振るった事件を捜査していたが、当事者二人にはイラクへの出征後に不名誉除隊した同じ部隊の3名の兵士の本人とその妻という関係性があった。サーキは3人目の兵士ミック・サンティノを探す。

スタッフ

監督・脚本は『ドクター・ストレンジ』のスコット・デリクソン

監督・脚本を務めたのはスコット・デリクソン。『ヘルレイザー ゲート・オブ・インフェルノ』(2000年)、『フッテージ』(2012年)とホラー畑の監督であり、『エミリー・ローズ』(2005年)では本作と同じく悪魔憑きをテーマにしました。

もっとも有名な監督作品はMCUの『ドクター・ストレンジ』(2016年)で、2021年公開予定の続編も監督する予定だったのですが、得意のホラー作品にしようとしたことでマーベルスタジオと揉めて降板となりました。代打はサム・ライミになりそうなのですが、結局ホラー畑の人材を起用するのかと、マーベルの判断基準がよく分かりませんね。

製作はジェリー・ブラッカイマー

『トップガン』(1986年)、『アルマゲドン』(1998年)、『パイレーツ・オブ・カリビアン』(2003年)などを世に送り出したスーパープロデューサーなのですが、『ローン・レンジャー』(2012年)をコケさせたことから長年のパートナー関係にあったディズニーからの契約を切られ、以降は中規模予算の作品を細々と手掛けるようになりました。本作もそんな苦しい時期に製作された一本。

ただし2020年は復活の年になる見通しで、まずは『バッド・ボーイズ フォー・ライフ』(2020年)が全米興収2億ドルに迫る大ヒット、さらには『トップガン マーヴェリック』(2020年)も控えています。

元NYPDのラルフ・サーキの原作の映画化

元NYPDの警察官で、現在はエクソシストをやっているラルフ・サーキが自身の経験を元にした著作 『エクソシスト・コップ NY心霊事件ファイル』が本作の原作です。ただし原形を留めぬまでに脚色されているようですが。

感想

『セブン』×『エクソシスト』に失敗した映画

都会で悲惨な事件に立ち会う刑事のドラマときて思い出すのはデヴィッド・フィンチャー監督の『セブン』(1995年)ですが、本作にも暗く汚れた部屋を手持ちのライトで照らしながら全体を把握する場面などがあり、『セブン』を参考にしたことは間違いないと思います。

そして悪魔憑きと言えばウィリアム・フリードキン監督の『エクソシスト』(1973年)で、クライマックスの悪魔祓いはモロに『エクソシスト』でした。悪魔の出身地が中東という点も同じだし。

つまり本作は『セブン』(1995年)のシリアル・キラー ジョン・ドゥが本当に悪魔だったらという何ともワクワクする設定の作品なのですが、これがどうにも企画倒れに終わっています。

まず、エリック・バナ扮する主人公ラルフ・サーキの心の闇や社会に対する絶望感が表層的なので、『セブン』や『エクソシスト』にあったジメジメ感のトレースに失敗しています。

赤ん坊がゴミ箱に捨てられるような悲惨な事件にばかり立ち会い、サーキは強いストレスを感じているという設定なのですが、一方で行動を共にしている相棒のバトラー(ジョエル・マクヘイル)は元気そのものなのでサーキの設定との整合性がありません。

加えて、美人の奥さんや可愛い娘に囲まれているという彼の生活の陽の部分が前に出過ぎていて、耐えがたいほどの苦痛を抱えた人間には見えてきません。生活の一部に苦痛はあっても、他の部分で緩和できているから心の均衡は保たれるんじゃないのと感じてしまうのです。

ホラー映画としても微妙で、死体から虫がわく場面や、憑依した人体を悪魔が食う場面などスポットのショックはあるものの、2時間という映画全体を貫く不穏な空気の醸成や、クライマックスに向けて恐怖が加速していくようなことはなく、退屈なドラマの中で、たまにデカイ音で驚かされるような状態となっています。

話の展開のさせ方がヘタくそ

本作は一応ミステリーの体裁をとっているのですが、点と点を線で結びながら次第に確信へと迫っていくような論理の積み上げがなく、そのジャンルの面白さはほぼありません。

かなり早い段階で悪魔の仕業と分かった話なのに、その後何度も何度も「悪魔の仕業です」といろんな角度から説明し続けるだけなので、何度同じことを言うんだろうとイライラさせられました。

加えて、主人公サーキのバカな行動がちょいちょい目立つことも、物語への没入を阻害しています。

例えば序盤の動物園の場面。不審な男を追ってサーキはライオンの檻の中へと入っていくのですが、いくら犯罪者を追っている刑事とはいえ、ライオンの檻に入りますか?で、案の定ライオンに襲われそうになって命からがら逃げてくるのだから、怖いというよりも何というバカなことをしてるんだと呆れました。

中盤では、精神病院に収容された女性から事情を聞き出そうとして、持っているスマホの画面を見せるのですが、明らかに異常な女性に対してわざわざ鉄格子の内側にまでスマホを持った手を入れて、案の定、噛みつかれるわけです。そんなことをすれば、当然結果はそうなるでしょうね。

サーキのドラマがつまらない

また、サーキがエクソシストとして目覚める物語としてもきちんと成立していません。サーキは少年期の悲惨な事件や、刑事になった後に強姦魔を殴り殺した過去から神を信じなくなっていたのですが、悪魔の絡んだ本件で次第に自分には霊媒があることに気付き、最終的に信仰を取り戻してエクソシストになるという物語が置かれています。

しかし神を信じたくなるほどの決定的な心変わりの瞬間が描かれていないので、物語が本来持つべき意味を発揮できていません。その結果、目の前の事件を解決するために便利だし、どうやら自分にはそれができそうなので、キリスト教の悪魔祓いをやってみましたという見え方になっています。

悪魔が関わると怖くなくなる

結局はここに行きつきますね。敵の正体が悪魔でしたって映画で本当に怖かったものって、このジャンルの真打『エクソシスト』(1973年)くらいじゃないですかね。

悪魔って、本気出せば神と拮抗しうるほどの力を持っているはずなのに、一人二人の人間をチマチマと殺し、数人の神父相手に全力で戦っていることがショボって感じるし、結局怖いのって悪魔の如き所業を働く人間であって、悪魔そのものではないように思います。

こちらは悪霊なのでちょっとニュアンスは違いますが、スタンリー・キューブリックが『シャイニング』を映画化する際に悪霊に憑りつかれた男という原作の設定を捨てたのも、男が超常的な存在に操られる話よりも、人生に対する絶望から密閉空間でおかしくなった男が家族を殺そうとする話の方が怖かったからです。

本作は、まさにその罠にひっかかっています。「敵の正体は悪魔です!」と言われた時点で「はぁ?」という感じになります。自分を悪魔だと思っている狂人なら怖かったのに、直球勝負で悪魔と言っちゃうのかと。

原作を書いたのが現役エクソシストを名乗る人物だったのでこれがあるべき作品の姿だったのかもしれませんが、そこはキューブリックみたいなトリッキーな技を炸裂させて欲しいところでした。悪魔憑きの映画と見せかけておいて、超常的な描写を極力避けてすべて人間の所業と見ることも可能な余白を作っておいた方が、怖さが増したと思います。

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