ごっこ(2018年)_ありえない展開だらけのトンデモ映画【3点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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人間ドラマ

(2018年 日本)
演技の質は高く、疑似親子が本物の親子になっていく様は感動的であり、見るべきところのある映画ではあるのですが、話は論理的に破綻しており、突飛な展開、理解不能な説明などが多く、結末へ近づいていくほどに心は離れていきました。

二次元なら特に違和感なく受け入れられる展開も、三次元でやると厳しくなるという典型ですね。大傑作『凶悪』の脚本家・高橋泉が参加しているのでその点をうまくこなしてくれるという期待もあったのですが、本作では脚色に失敗しています。

先日観た『光をくれた人』(2016年)に感銘を受けたので、同じく他人の子供を育ててしまった人のドラマとして本作も鑑賞したのですが、こちらはイマイチでしたね。

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あらすじ

生活保護で生きる引きこもりの男・城宮(千原ジュニア)は、向かいの家にあざだらけの少女(平尾菜々花)を見つける。衝動的にその少女を誘拐し、離れた場所にある実家に戻ってヨヨ子と名付けて育て始める。二人は徐々に本物の親子らしくなっていくが、誰もヨヨ子を探していないことへの違和感もあった。

作品概要

お蔵入りしかけた映画

この映画は2016年に撮影され、2017年の劇場公開が予定されていたのですが、大手スポンサーが離れていって公開の目途が立たなくなり、映画はお蔵入りしかけていました。千原ジュニアによると、出演者へのギャラも支払われていなかったようです。

その後、別のプロデューサーに拾われ、新たなスポンサーを見つけて2018年10月の公開となりました。

スポンサー撤退は成長したヨヨ子を演じる清水富美加の出家騒動の影響とも言われていますが、本当のところはよく分かりません。清水富美加の登場場面は少ないし、大勢に影響を与えるほどのものだったのかは疑問です。

感想

前半は丁寧なドラマ

子育てを通してダメ人間が成長していく様には感動的なものがありました。

子育てで手こずった時に子供に対して教えた規範が、別の場面では自分自身を律することに繋がっていくという場面は定番ながらもよく出来ています。

また、シングルでの子育ての大変さも克明に描かれています。子供を大事に思うからこそ仕事を頑張っているのだが、仕事に時間と労力を取られれば取られるほど子供と過ごす時間がなくなり、子供の遊びに付き合う余力もなくなるという矛盾。これはとても切なく感じました。

城宮を演じる千原ジュニアはうまいというよりも味のある演技。ヨヨ子を演じる平尾菜々花は異常なまでのうまさ。

この二人の間で化学反応が起こっており、コミュ障気味で引きこもりがちな男と、心を閉ざしていた少女が徐々に打ち解け、家族らしくなっていく過程は実に自然で感動的でした。

細部が粗い

疑似親子2人の閉じた世界を中心に描かれる前半部分にはのめり込むことができたのですが、2人が社会との接点を持つ場面はことごとく詰めが甘く、説得力のないものとなっています。

例えば城宮の資金源をマチ(優香)に知られる場面。

その前の場面にて、迷子になったヨヨ子を探す城宮が警察無線の使用を嫌がったことから、マチは何かあると思って城宮を問い詰めます。すると城宮は、老人ホームに行ったとされる父親はすでに自殺しており、父の年金の不正受給をしている旨を白状します。

これは別の悪事を告白することで幼女誘拐という本丸を誤魔化すための城宮の戦略であり、マチはこの戦略にハマるのですが、それにしても年金不正受給だって社会的には大変な悪事。城宮は不正受給をやめること、ちゃんと働いて家計を回すことをマチに約束させられます。

これがきっかけで城宮は生花市場で働くこととなり、物語は第二幕へと入っていくのですが、元々城宮は生活保護で生きる引きこもりでしたよね。これを受給し続けていれば父親の年金なしでも細々と生活を続けられたと思うのですが、この時点で生活保護は一体どうなっていたんでしょうか。

また、働きに出ることになった城宮はヨヨ子を保育園に預けることにするのですが、公的証明書を何も出せないヨヨ子をどうやって入園させたのかは謎です。

本作は、細部をガチガチに詰めることで荒唐無稽な基本設定部分を観客に受け入れさせるべき映画だったと思うのですが、細部があまりに弱いので説得力に欠ける話となっています。

最大の謎・ヨヨ子の母親

そしてもっともよく分からなかったのがヨヨ子の母親の人物像です。

城宮は職場に出入りするテイクアウトのカレー屋の女性がヨヨ子の母親(ちすん)であることに気付き、自らカレー屋へと出向いていきます。

この時、城宮の育児疲れはピークに達していました。そんな中で、できれば子供を元の家庭に帰せないかという願望が半分、表の社会で見る母親はとても感じの良い人で、その人物像が虐待とは繋がらなかったので実状を確認したいという思いが半分だったと思います。

母親と会った城宮は、自分がこの家の娘を預かっているとストレートに伝えた上で、なぜ娘を誘拐されたにも関わらず通報していないのかと母親に尋ねます。これに対する母親の回答はざっとこんな感じ。

  • 母親はシングルで子育てをしている
  • ヨヨ子の本名はもみじであり、かえでという双子の妹がいる。
  • かえでは臓器移植が必要な重い病を患っている。
  • ヨヨ子は自分の身を犠牲にして妹を救おうとしており、5歳にして自傷行為をしていた。
  • 母親は難病のかえでに加えて、自分を殺せと迫ってくるヨヨ子にも気が滅入っていた。
  • 母親は城宮がヨヨ子を誘拐する様も見ていたが、このまま居なくなった方がいいと思い、されるがままにしておいた。

ダメ映画の常套手段である難病設定が登場するのは原作付きの映画だから仕方ないにせよ、この母親が真実を言っているのか、虐待を隠すためにウソを言っているのかを判断できるだけの情報が観客に対して提示されないので、母親への評価は微妙なものとなります。

これを受けた城宮の反応はもっと微妙。「子供がそんなこと言うわけないやろ!」と激しい怒りを示すのですが、母親の主張をウソと決め付けられるほどの判断材料もない中で、この人はなぜこんなに怒っているのだろうかと不思議になりました。

加えてエピソードの配置もよくありません。直前まではワンオペ育児で疲れ切る城宮の姿が延々と描かれていて、その流れで同じくワンオペ育児で滅入っていた実母登場ですからね。

城宮は健康な子供一人を育てるのにも苦労しているのに、この母親は双子を抱え、しかも一人は難病。仮に母親の主張がすべてウソで、ヨヨ子を傷つけたのが母親だったとしても、このエピソードの並びの中で母親を100%の悪人と見ることは私にはできませんでした。

だいたい、城宮だってヨヨ子の首を何度か絞めているし、ここに来たのだってヨヨ子を返したいという願望からですよね。赤の他人の城宮には子供を手放すという自由はありますが、実の子を抱える親に「私は限界だから」という理由で子供を手放す自由などありません。それをやるとネグレクトと言われます。そんな状況下で追い込まれた母親を、なぜ城宮は批判することができたのでしょうか。

この二人のやりとりは映画における大きな分岐点だったのですが、私には理解に苦しむ支離滅裂なやりとりにしか見えませんでした。そして、映画のおかしさはここからさらに加速します。

虫取りエピソードの壮絶な無駄さ加減

城宮が実母の元を訪れた日、ヨヨ子は友達と虫取りに行くといって家を出ていました。しかし、夕方に城宮が帰宅してもヨヨ子は戻ってきません。

城宮はヨヨ子の持ち物であるBB弾を手掛かりにして彼女の行き先を突き止め、あるアパートの一室へと乗り込んでいくのですが、そこでは幼児とタランチュラが戦う様を動画に収めてネット配信するという目的のためにヨヨ子と友達が監禁されていました。

もうこの場面は疑問符だらけですよ。「客」と書かれたBB弾からヨヨ子の行き先を突き止める展開は、伏線となる場面を見落としたのかと思うほど唐突なものだったし、誘拐犯の目的もサッパリ分かりません。

子供がタランチュラに襲われる動画にビジネス的な需要があるとは思えないし、その動画をアップした時点でこの犯人達は逮捕でしょ。論理的に繋がっていない上に、現実味もないまったくの無駄エピソードでした。こんな場面はそもそもない方がましです。

城宮が母親を殺す理由が分からなすぎ

その後、城宮はヨヨ子自身の口から実母による虐待があったことを聞かされます。

実母は暴力こそ振るっていなかったものの、妹のためにあなたが死ぬべきとヨヨ子に向かって言っており、幼いヨヨ子はその言葉を真に受けて自傷行為をしていたことが分かります。いわゆる精神的虐待というやつです。

これを聞いた城宮は再びカレー屋に行って母親の首を絞めて殺すのですが、なぜ城宮が母親を殺したのかはよく分かりません。

確かに精神的虐待は責められるべきですが、この母親にはワンオペ育児で疲れ切っていたという情状酌量すべき背景もある中で、死をもって償わせるほどの悪質性があったのか。

また、もう一人の娘かえでは一体どうなったんでしょうか。後の展開でまったく姿を現わさない点から考えると臓器移植が間に合わずに死んだのだろうと推測されますが、唯一の保護者を殺された上に、自身もほどなく病気で死んだとなれば気の毒で仕方ありません。

せめて短い人生の最後は母親に看取られるべきだったのに、城宮はその機会を奪ったのです。さすがにこの行為を正当化はできません。

城宮の行為は自己犠牲だったのか

後の場面では、城宮はヨヨ子を守るために母親を殺したと評価されるのですが、育ての親によって実母が殺され、育ての親が服役して天涯孤独の身になったということがヨヨ子の成長においてプラスにはたらくなどとは考えられず、この評価にも疑問符です。

そもそも母親はヨヨ子を不要と考えていたのだから、成人にするまで子育てをやり切ることこそが育ての親としての城宮の最大限の愛情表現ではないのでしょうか。

加えて、逮捕後の城宮はヨヨ子を守るために一切話さなくなり、13年後には言葉がスムーズに出ないほどの状態になっているのですが、それ逆でしょ。

もし城宮が何も話さなければ、警察はヨヨ子から事情を聞かざるを得なくなります。完全黙秘のどこがヨヨ子への愛情表現なのでしょうか。むしろ「私がすべて話すので、子供には何も聞かないでやってください」とすることが子供や社会に対する責任の取り方ではありませんか。

実母を殺されたことに感謝するヨヨ子ってどうなの

13年後、成長したヨヨ子=もみじ(清水富美加)は大学合格をきっかけとして、事件後一切会っていなかった城宮への面会に行きます。

当初、ヨヨ子のために自分は何も語らないと決めていた城宮は会話に応じないのですが、ヨヨ子には自分の愛情が伝わり続けていたことを悟った城宮は徐々に言葉を発するようになり、二人はかつての親子の情愛を取り戻します。

一応は感動の再会場面なのですが、よくよく考えてみるとヨヨ子の発想は狂っています。実母を殺されたことを咎めもせず、それどころか自分を守るための行為として評価し、誘拐や殺人を犯した城宮への愛情のみで実母への思いが皆無なのです。

作品中に時間経過が明示されないので推測となりますが、季節は一巡していなかったので城宮とヨヨ子が過ごした時間は1年未満と考えられます。他方、母親は5年間もヨヨ子を育てたのです。しかも重病の妹を抱えながら。

この状況で城宮への愛情のみで埋め尽くされ、殺された母親には目も暮れないというのは、さすがにどうかと思います。

加えて、この場面では千原ジュニアの演技がスパークしすぎていてコントのレベルに達しています。言葉を自由に発することができないという設定が置かれた場面なので千原ジュニアは顔面で感情表現するのですが、終始顔を強張らせた千原ジュニアはふざけている千原せいじみたいになっていました。

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