ルーム(2015年)【8点/10点満点中_サスペンスに始まって一般的な子育て論に帰着する感動作】

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[2015年カナダ]

8点/10点満点中

■実話がモチーフ

2008年にオーストリアで発覚したフリッツル事件をモチーフにした作品なのですが、本作は監禁事件の異様さを描いたサスペンスではなく、一般的な子育て論にまでテーマを敷衍させているという点にその独自性があります。そういえば監督の前作『FRANK』でも、一見すると作品のテーマとは無関係そうな主人公フランクの家庭環境が克明に描かれていましたね。

■特殊な犯罪を描きつつ一般的な子育て論に帰着する物語

このテーマを扱えば「監禁部屋から逃げられてよかったね」で終わるところなのですが、本作はまったく違う着地点へと降り立ちます。傍から見ると監獄でしかない監禁部屋でも、ジャックにとっては愛着のある世界であり、彼は監禁部屋に戻ることさえも望むのです。監禁部屋にいる間、母親は払える注意、持てる優しさのすべてを自分のために使ってくれた。二人にとって時間は有り余っていたため何かで急かされることはなく、他者がいないので「こうあるべき」という価値観を押し付けられることもない。そして、ほんの小さな変化、些細なイベントであっても、その感動を母親と共有できた。そんな環境でジャックは自由に感性を育むことができました。

しかし、外の世界に出ると母親は「普通はこうだ」という子供像を押し付け始めます。さらにはジャックとは別行動が多くなり、ジャックの立場を理解してくれない。外の世界を知らないジャックにとって良い悪いの判断がつけられない問題でも「なぜこのような振る舞いをするのか」と言って責めてくる。このような母親の変化に対するジャックの戸惑いは、現実世界でも多くの子供が経験するものです。子供が求めているのは社会のルールブックを教えてもらうことなのに、そのルールブックをいつの間にか前提化させて責められる。それぞれに個性があるのに、普通を求められる。子育てをしている私も大いに反省させられました。

■社会性の獲得という幼児の成長過程も織り込まれている

ジャックにとっては辛い日々が続きますが、そんな彼を癒したのは祖母の再婚相手と近所に住む同世代の子供でした。どちらも血縁のない相手であり、ジャックは社会性の獲得により母親以外の人たちともコミュニケーションがとれるようになったことで、外部に理解者を獲得、成長が彼を救ったのです。

本作はかなり極端なモチーフをとっていますが、例えばずっと家で育っていた子供が幼稚園入園で初めて親元を離れるという話でも、おそらく同じような内容になります。居心地の良かった家を離れるのは怖い、母親は他の子と自分を比べるようになって辛い、それでも新たな環境を受け入れることで子供は強くなり、より大きな幸福を手に入れるのです。愛着ある監禁部屋への別れを告げるクライマックスで私の涙腺崩壊。素晴らしいドラマでした。

■本作の功労者はジェイコブ・トレンブレイ君

とはいえ、母親役のブリー・ラーソンがアカデミー主演女優賞を獲得する一方で、ジャック役のジェイコブ・トレンブレイがノミネートすらされなかったというジャッジには、ちょっと疑問でしたが。ラーソンが悪かったとは言いませんが、本作はジェイコブ君の力量で成り立っているようなものでしょ。ラーソンにはいくらでも代わりがいますが、ジェイコブ君の代わりはいませんよ。

Room
監督:レニー・エイブラハムソン
脚本:エマ・ドナヒュー
原作:エマ・ドナヒュー『部屋』
製作:エド・ギニー,デヴィッド・グロス
製作総指揮:アンドリュー・ロウ,エマ・ドナヒュー,ジェシー・シャピーラ,ジェフ・アークス,デヴィッド・グロス,ローズ・ガーネット,テッサ・ロス
出演者:ブリー・ラーソン,ジェイコブ・トレンブレイ,ジョアン・アレン,ショーン・ブリジャース,ウィリアム・H・メイシー
音楽:スティーヴン・レニックス
撮影:ダニー・コーエン
編集:ネイサン・ヌーゲント
配給:ギャガ/カルチュア・パブリッシャーズ
公開:2015年10月16日(アメリカ),2016年4月8日(日本)
上映時間:118分
製作国:カナダ,アイルランド,イギリス,アメリカ合衆国

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