トランス・ワールド【8点/10点満点中_緻密なSFと社会啓蒙的なテーマを両立させた必見の作品】

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[2011年アメリカ]

8点/10点満点中

短い上映時間の作品なので空いた時間に何気なく見たら、激しく面白かった映画でした。ワンアイデアのSF映画っぽいという以外に何の事前情報もなく見られたことが幸運だったのですが、何も知らずに見るとかなり驚かされます。

【注意!ここからネタバレします】

■大きなミスディレクションはあるが、インチキはしていない

“Enter Nowhere”という原題は秀逸で、空間をテーマにしたSFであると観客に誤認識を与えつつも、完全なウソではないギリギリの表現にとどまっています。空間内がループしておりどれだけ進んでも小屋に戻ってしまうという設定も同様で、こちらもオチから振り返れば主題とはほぼ無関係であり、観客をミスディレクションする意図をもった設定ではあるのですが、クライマックスでこのループする空間が活かされる局面があるため「ズルい!」とは思いませんでした。

■大胆なのに細部にも綻びが出ていない

また、登場人物間で最大50年もの年代差があるという点についても、地域差や個性の差を置くことで、ファッションや話し方に違いはあっても当事者達が違和感を持つには至らないというギリギリのところに収められています。かなり大胆なことをしながらも、綻びが出そうな部分にはちゃんと説明を付けているという丁寧な作りには感心させられました。

■血縁をテーマにしたキャスティング

キャスティング面では、トム役にはクリント・イーストウッドの息子、サマンサ役にはサム・ウォーターストーンの娘、ジョディ役にはビル・パクストンの従妹とビッグネームの血縁者が揃えられており、こちらも血縁がキーとなっているようでした。

■貧困の連鎖・犯罪の連鎖が裏のテーマ

ラスト。修正された人生を送るジョディが、冒頭と同じシチュエーションで別の女性が強盗に入る場面に遭遇しますが、この場面を見て、本作は貧困の連鎖・犯罪の連鎖を描いた作品であることに気付きました。強盗を働く者の家系図を遡ればどこかに大きな不幸があり、その不幸をリカバリーできなかったためにこうして子や孫が犯罪者になっている。あの店主は強盗に入られやすい商店を構え、犯罪者にならざるをえなかった者達に人生をリカバリーするための機会を提供しているのでしょう。

大胆なSF設定の裏側に潜むこうした社会啓蒙的な意図や、犯罪者にはそうならざるをえなかった背景があり、それを修正してやればまともな人生を送れるはずだという性善説的な人間観が作品に見た目以上の奥行を与えており、一発勝負のSFに留まらず鑑賞後にも余韻のある良作でした。

Enter Nowhere
監督:ジャック・ヘラー
製作:ジャック・ヘラー,ダラス・ソニアー
製作総指揮:ジェイソン・ドラン,ショーン・クリステンセン
脚本:ショーン・クリステンセン,ジェイソン・ドラン
撮影:トーマス・M・ハーティング
音楽:ダーレン・モルゼ   
出演:キャサリン・ウォーターストーン,スコット・イーストウッド,ショーン・サイポス,クリストファー・デナム,サラ・パクストン
製作国:アメリカ
公開:劇場未公開

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