オンリー・ザ・ブレイブ_実話ものの弱点がドバっと出ている【4点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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実話もの
実話もの

(2017年 アメリカ)
ヤク中のブレンダンは恋人の妊娠を機に一念発起し、かつてドロップアウトした消防士の採用に応募する。エリック隊長はブレンダンの姿にかつての自分の姿を重ね、採用を決意する。当初周囲からの厳しい反応もあったブレンダンだが、厳しい訓練に取り組む中で仲間との信頼関係を築いていく。

迫力あるアクション大作…ではなかった

本作は『トロン:レガシー』『オブリビオン』で知られるジョセフ・コシンスキー監督の長編3作目となります。コシンスキーは映像クリエイターであるだけでなく3Dグラフィックの専門家としてコロンビア大学助教授という肩書も持った異色の監督なのですが、彼が手掛けた前2作ではその肩書がダテではないことを証明するビジュアルが炸裂していました。

そして本作なのですが、迫りくる炎やヘリや航空機等のマシン描写にはリアリティと美しさを両立したコシンスキーらしさがあったのですが、基本的には絵だけなんですよね。迫力ある連続活劇にはなっていないために前2作のようなアクション大作にはなっておらず、もっとすごいものを期待した私にとっては物足りなさが残りました。

なお、コシンスキーの次回作は『トップガン』の続編なのですが、本作の出演者であるマイルズ・テラーとジェニファー・コネリーはそちらにも出演するようです。

落ちこぼれた元ジャンキーの成長譚…ではなかった

本作の主人公は2人。ジョシュ・ブローリン演じるエリック隊長とマイルズ・テラー演じる新人隊員ブレンダンです。ブレンダンはかつて救助隊の養成学校に通っていたものの薬物が原因でドロップアウトし、以降は実家住まいのジャンキー生活を送っていたのですが、元カノが自分の子を妊娠したことをきっかけに一念発起し、エリックが率いる消防隊への入隊を志願しました。見るからにジャンキーのブレンダンに対して他の隊員達は冷ややかなのですが、なぜかエリック隊長だけは特別に感じるものがあった様子であり、この二人の関係性とブレンダンの更生過程が作品の横糸になるのかなと思いきや、その点は意外なほど深掘りされていませんでした。

初日にはランニングにすら付いて行けなかったブレンダンがどうやって体力面での問題を克服したのか、今まで自堕落に生きてきたブレンダンがどうやって自らを厳しく律して精神的に成長したのか、また他の隊員達からの信頼をどうやって勝ち取ったのかといった、序盤のネタふりから当然に連想される課題がまったく消化されていません。また「そして●●か月後」みたいな感じで作品の時系列が一足飛びに進んでいくために、気が付けばブレンダンが真っ当な隊員になっていたというつまらないドラマになっています。

意味のないサブプロットの数々

この映画は伏線と思われたサブプロットに何の意味もなかったりするため、私はかなり困惑させられました。

ドラッグディーラーから押収したといって保安官からジェニファー・コネリーに預けられた傷だらけの馬のエピソードは、ラストに向けて何か重大な意味を持つのだろうと思いきや特に何の意味もありませんでした。

またブレンダンと同日に面接を受けて入隊したエリート隊員についても、ブレンダンにとっては何かと比較対象にされる目の上のタンコブ的な存在になるのかと思いきや、その後はいるのかいないのか分からないくらいの薄い存在感となり、犠牲となった隊員の写真が一人ずつ提示されるエンドロールで「あいつ、まだ隊に居たんだ」と気付いた程であり、なぜ彼の面接エピソードを描いたのだろうかと不思議で仕方ありませんでした。

他にも、序盤から繰り返し提示されるエリック隊長の燃える熊のイメージにもさほど深い意味がなく、無駄な枝葉が多い映画だと感じました。

※ここからネタバレします。

実話ものの弱点がドバっと出た内容

私は実話ベースの話であることを知らなかったので、まさかクライマックスで隊が全滅するとは思っておらずビックリさせられました。ただし、史実を知らない私にとっては唐突感もあって、「え?全員死ぬの?」という悪い意味での戸惑いもありましたが。

防火テントを着用する訓練が本編中何度も何度も繰り返し提示されるので、通常であればあの訓練のおかげで生存できましたとなるべき話なのに、訓練通りに全員が防火テントを迅速に身に付けたのに結局全滅って、一体どういうことなんだと思ったし。

実話ベースの映画、特に事件・事故から映画製作までの期間が短く存命中の関係者が多い場合には登場人物を悪く描けないという問題があり、その結果、振れ幅の小さいつまらないドラマになってしまう傾向があります。ピーター・バーグ監督の『バーニング・オーシャン』や『パトリオット・デイ』などが典型例ですね。

本作についても同じくで、前述の通りマイナスからスタートした新人隊員・ブレンダンが立派に成長する過程を描くべき題材だったのに、ブレンダンのマイナス面や彼に対して辛く当たる他の隊員達の態度を描くことができなかったので、ポジティブ一色の振れ幅の小さなドラマになってしまっています。

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コメント

  1. 匿名 より:

    へー、じゃあお前のリアルは我々にどのくらいの感動を与えてくれるんだろうね?