ドメスティック・フィアー_オオカミ少年の苦悩【5点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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(2001年 アメリカ)
穴だらけのサスペンスで大して面白くはないのですが、タイトな上映時間と淀みのない語り口で、サラっと見ることのできるお手軽さと見やすさは評価できます。私は午後のロードショーで鑑賞しましたが、地上波の洋画劇場で見るには実に丁度良い塩梅の映画でした。

あらすじ

田舎町で個人経営のボート製造業を営んでいるフランク(ジョン・トラボルタ)は、前妻スーザン(テリー・ポロ)と息子ダニーとは離れて一人暮らしを送っている。スーザンは実業家リック(ヴィンス・ヴォーン)と再婚したが、ダニーは継父リックに馴染めず問題行動を多く起こしていた。ある夜、ダニーがリックの車に密かに乗り込んだところ、リックがレイという男(スティーヴ・ブシェミ)を殺害する場面を目撃してしまう。ダニーは警察に駆け込んだが、実父フランク以外は彼の言うことを信用しなかった。

スタッフ・キャスト

監督は『マーキュリー・ライジング』のハロルド・ベッカー

1928年ニューヨーク出身。1960年代に短編監督を何作か監督し、1970年代に長編監督デビュー。

若き日のショーン・ペンやトム・クルーズが出演した『タップス』(1981年)がまぁまぁのヒットとなり、以降はマシュー・モディーン主演の青春ドラマ『ビジョン・クエスト/青春の賭け』(1985年)、ジェームズ・ウッズとショーン・ヤングが共演した『THE BOOST 引き裂かれた愛』(1988年)、一番ダメだった頃のアル・パチーノ主演したサスペンス『シー・オブ・ラブ』(1989年)など、有名俳優を卒なく演出できる監督として重宝されました。

手掛けた作品中で最大規模だったのは、ブルース・ウィリスとアレック・ボールドウィンが共演したサスペンス・アクション『マーキュリー・ライジング』(1998年)でした。

近年はニコラス・ケイジ主演のサスペンス『ヴェンジェンス』(2016年)にプロデューサーの一人としてクレジットされています。

主演はジョン・トラボルタ

1954年ニュージャージー州出身。70年代後半にアイドル的な人気を博したものの、80年代には凋落。

しかし『ミッドナイト・クロス』(1981年)の大ファンであるクエンティン・タランティーノからの指名で出演した『パルプ・フィクション』(1994年)で華麗なる復活を遂げ、『ゲット・ショーティ』(1995年)でゴールデングローブ主演男優賞受賞、アクション大作『フェイス/オフ』(1997年)は大ヒットと、1990年代から2000年代にかけてはハリウッドトップクラスの大スターでした。

共演はヴィンス・ヴォーン

1970年ミネソタ州出身、イリノイ州育ち。ダグ・リーマン監督の『スウィンガーズ』(1996年)で注目を浴び、スティーヴン・スピルバーグ監督の『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(1997年)に主要登場人物の一人として出演。

2000年以降は『ズーランダー』(2001年)、『ドッジボール』(2004年)、『ウェディング・クラッシャーズ』(2005年)とコメディ映画に多く出演するようになりました。

ただし身長196cmの巨体はなかなかの威圧感であり、テレビドラマ『TRUE DETECTIVE/ロサンゼルス』(2015年)では街の犯罪組織のボス役で殺伐とした演技を披露しました。

作品概要

911の影響を受けた悲劇の映画

本作が全米公開されたのは2001年11月2日、同時多発テロ事件の約2か月後でした。

この頃の興行界はなかなか大変で、社会情勢の関係でアクション大作が軒並み公開できなくなったので、各社はラインナップの大幅変更を余儀なくされており、中規模サスペンス映画ばかりが公開されていました。20世紀フォックスの『サウンド・オブ・サイレンス』(2001年)、ワーナーの『トレイニング・デイ』(2001年)がその例ですね。

本作も同じくで、当たり障りのないサスペンス映画だったので興行の穴を埋めるには丁度良いと見なされ、当初の公開予定日12月から11月へと変更。完成までの作業を急ぐこととなりました。

加えて、いろいろとナーバスになっていた時期だったので激しい描写がカットされたり、登場人物達の言葉遣いや暴力描写が丸く修正されたりと、製作者にとっては不本意な加工もいろいろ入っていて、満足ではない状態でリリースされました。

感想

緊張感に欠けるサスペンス

社会的な信用度の高い実業家の裏の顔を知ってしまった親子の孤独な戦いが本作の骨子なのですが、その実業家リックを演じるのがリメイク版『サイコ』(1998年)でノーマン・ベイツを演じたヴィンス・ヴォーンだった点はまずかったです。どう見ても何かありそうだから。

そして父親フランク役がジョン・トラボルタ。絶対に息子を救い出してくれそうな安心感が漂っています。

本作はキャスティングの時点で躓いており、両者を入れ替えた方が作品の主旨には合っていたように思います。

またこの内容であれば、誰からも信じてもらえない中で殺人犯と同居せざるをえなくなった息子ダニーの物語か、息子の言っていることの真偽を探る実父フランクの物語かのどちらかに絞るべきだったのですが、両方の視点で交互に描いてしまったために、どちらの要素も深まっていません。

主人公親子以外が愚かに描かれている

当初のランニングタイム111分に対して完成版は89分にまで切り詰められた関係で、本作には多くのプロットホールが発生しているのですが、最大の問題はダニーの証言を信用しない周囲の人々が愚かに見えてしまっているということです。

母スーザン(テリー・ポロ)などは、いくら息子が嘘つきだとは言え、血相を変えて訴えてくるダニーの言い分をまったく信用せず、金持ちのリックとの新生活に夢中になっているのだから話になりません。

警察はリックによる殺人を目撃したというダニーの証言を徴取する際に、当のリックを同席させるという驚きの配慮の無さ。

リックもリックで、連れ子のダニーが居なくなって欲しいという点で、中盤の親権裁判ではフランクと利害が一致しているわけです。フランクが勝訴してダニーが引き取られるよう仕向ければいいのに、逆のことをやっているのだからこちらも愚か。

そもそもリックは素性を隠したい人間なのに、街の名士として目立つ場所にバンバン出て行っていることがおかしいし。ひっそりと金持ちをやってればいいのに。

この映画、全体的に論理が破綻しています。

主人公側の物語もうまく流れていない

主人公フランクには元アル中という設定が置かれています。

過去に酒で何らかの大失敗をしており、そのことが彼の社会的信用度を落とす方向性に作用していて、彼がいくらリックの危険性を訴えても「お前が言うな」と言われるような構図があったものと推測されます。

両親の離婚に反発して問題行動を起こす息子ダニー共々、何を言っても聞いてもらえないオオカミ少年状態にあるというわけです。

そして、犯罪者の危険性を訴えている側が社会的には異常者扱いを受けるという『パシフィック・ハイツ』(1990年)や『隣人は静かに笑う』(1999年)のようなサスペンスが意図されていたものと考えられるのですが、フランクとダニーが社会との間で深刻な確執を抱えているという肝心の描写が不足しているために、この要素もほぼ機能していません。

なおイソップ童話のオオカミ少年は、日本では普段からウソをついていると肝心な時に信用してもらえなくなるという因果応報的な教訓として理解されていますが、本来は嘘つきでもたまに真実を言うことがあるので、情報には偏見なく耳を傾けようという教訓が込められているようです。完全に余談でしたね。

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