【保安官・市警・FBI】アメリカ捜査機関を徹底解説【DEA・CIA・NSA】

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映画やドラマを見る中で、何となくやり過ごしているのがややこしいアメリカの捜査機関の数々です。市警はわかるけど、保安官って一体どういう人たちなの?州警察と市警は一体何が違うの?FBIはなぜ警察と喧嘩してるの?等々、分からないことだらけ。中にはジェラルド・バトラー主演の『ザ・アウトロー』(2018年)のように、FBI、市警、保安官が入り乱れるような珍品まで登場する始末であり、このレベルにまで来るともうお手上げ。

そこで、各捜査機関の名称や特徴について整理してみました。

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【前提知識】アメリカの行政について

法執行機関は行政により設置されるものなので、行政区分がその理解において非常に重要なものとなってきます。以下がアメリカの行政の特徴となります。

連邦政府/州/群/自治体

州と自治体は日本人感覚でも分かりやすいのですが、その中間にある群”county”というものがちょいと分かりづらくなっています。

ほとんど名目のみの存在となった日本の群とは異なり、アメリカの群は行政能力をもった実体のある組織です。かつ、アメリカの全国土はくまなく群に分割されており、下記に示す通り自治体が設置されていない非法人地域の管理においては、群の存在が重要になってきます。

非法人地域

日本人の感覚で理解しづらいのが、非法人地域というものの存在です。これは自治体”government”が置かれていない地域を指した言葉です。お上の命令によって自治体が設置される日本とは異なり、アメリカでは住民の総意によって設置されるため、これがない地域も存在しています。

各法執行機関の名称と特徴

基本的な考え方

アメリカ合衆国は連邦制をとっているので、中央政府よりも州の方が多くの権限を有しています。かつ、アメリカでは平和を維持するための活動は地域住民が負うべきという自治意識が強いため、一般的な警察業務は地域の保安官や自治体警察が担い、州警察や連邦捜査局(FBI)が所管するのはそれ以外の特殊領域ということになります。

治安維持はお上の仕事という日本とは正反対の考え方であり、末端の市警や保安官こそが基本、映画界の花形であるFBIがむしろ例外領域という点が、ややこしさを感じる原因なのかなと思います。

自治体警察

お馴染みのNYPDやLAPDがこれに当たり、映画やドラマでもっとも見る機会の多い存在です。実際の設置数ももっとも多く、アメリカ国内には12,501個もの自治体警察が存在します。

そこに自治体が存在すれば設置可能であり、日本では考えられないほど小規模な自治体警察も存在しています。ピーター・バーグ監督の『パトリオット・デイ』には大学警察というものも登場しましたね。どんなに小さな自治体でも住民の総意があれば独自の法執行機関を持てるというのは、自衛を基礎としたアメリカらしい発想だと言えます。

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群保安官

法執行官の長として住民による直接選挙で選任される役職で、本質的には各群に一人なのですが、一人では手が回らないため、指揮下に警察組織を編成している場合が大半です。その職員は保安官補と呼ばれています。法の建付け上、アメリカ合衆国における警察業務の一次的な担い手は彼らではあるのですが、属人性の強い伝統的な機関なので、組織的かつ近代的な自治体警察に実態面では譲っています。

その設置数は群の数とほぼ同じ3071個です。また、自治体が設置されていない非法人地域も担当しています。

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州警察

一般的な警察業務の担い手は自治体警察と郡保安官なのですが、犯罪の広域化によって地元警察では対処できない事例が増えてきたことや、地元警察は住民からの評判の悪い州法の取り締まりをしない傾向が強かったことから、20世紀初頭より各州で創設されました。

映画やドラマではあまり馴染みのない存在なのですが、テレビドラマ『TRUE DETECTIVE/二人の刑事』の主人公二人はルイジアナ州警察の所属でしたね。田舎町で起こった猟奇殺人につき地元警察に捜査のノウハウがなかったことから、州警察に話がやってきたという背景でした。ネタバレになるので深くは語れませんが、彼らが地元警察ではないという視点で見ると、あのドラマで描かれたことがより鮮明に理解できるようになります。

連邦捜査局(FBI)

19世紀後半より、州警察と同じく犯罪の広域化への対応が必要となってきました。一応、建国当初より司法省内に連邦保安官(『逃亡者』のジェラード捜査官が有名)なるものは存在していたのですが、裁判の進行を守ったり囚人護送をしたりが彼らの本来業務で、一般的な警察業務への対応能力はありませんでした。

20世紀初頭には連邦警察の設立が検討されたものの、中央集権的な連邦警察はアメリカの国是に合わないことから議会で却下。その後、シークレットサービスを犯罪捜査に使った時期もありましたが、財務省所属の彼らに司法省マターを処理させることは権限の増大につながるという懸念があったため、1908年にこれも却下。この決議を受けて僅か25名の職員により司法省内に設立されたのが捜査局(BOI)(『パブリック・エネミーズ』のパーヴィス捜査官が有名)であり、1935年に連邦捜査局(FBI)と改称されました。

この設立過程を見ればわかる通り、中央集権的な捜査機関はアメリカでは忌避される傾向にあります。治安維持は地元がやるべきことでお上の出る幕じゃないというのがアメリカ国内の風潮であり、映画などで現場にFBI捜査官が現れると「お前、何しに来たんじゃ」みたいな感じで現場の空気がピリつく遠因がこれです。

この記事を書くにあたって調べてみて意外だったのが、FBI捜査官が主人公の映画は物凄く少ないということでした。彼らはたいてい脇役なんですね。映画史に残る名物捜査官はたいていが市警の人間だし(ハリー・キャラハン、ジミー・ドイル、アクセル・ホーリー、マーティン・リッグス、ジョン・マクレーンetc…)、シュワ・スタ・ヴァンダム・セガールのアクション四天王(私命名)の全出演作でFBI捜査官役だったのはシュワの『ゴリラ』とスタの『D-TOX』のたった2本だけ。

長いキャリアを誇るシュワ・スタがそれぞれ一度しか演じたことがなく、しかも彼らの代表作とは言い難い仕方なく引き受けたような作品でしかなく、ヴァンダムとセガールに至っては一度もFBI捜査官役をやったことがないという意外なことが分かりました。我々日本人が思っている以上に、FBIってアメリカ国内では微妙な存在なのかもしれませんね。

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麻薬取締局(DEA)

FBIと同じく司法省に置かれる法執行機関で、その名の通り麻薬取締に特化した機関です。国内ではFBIの管轄と競合しているものの、国外での麻薬捜査には単独で責任を負っています。

ニクソン政権時の1973年設立と比較的新しい機関なのですが、アメリカ国内に237ヶ所の現場事務所、世界58ヶ国に80ヶ所の国外事務所を有し11000人の職員を雇用しているという、実はFBIよりも巨大な組織です。

テレビドラマ『ブレイキング・バッド』や『ナルコス』の大ヒットで今やドラマ界・映画界では花形機関となっています。

実在のDEA捜査官がモデルのドラマ

【補足】その他のややこしい機関

捜査機関は以上なのですが、紛らわしい機関もあるので補足しておきます。

中央情報局(CIA)

合衆国大統領直下に置かれる機関なので司法省所管の捜査機関とはまったく性質が異なります。

かつて、情報を集約し評価する機関がアメリカ政府内になく、素人目には何が何だか分からない生情報がそのまんま大統領に上げられて「報告済」とされるような無茶苦茶な運用があって、その結果、真珠湾攻撃を受けてしまったという反省が設立のきっかけでした。

その一義的な業務は収集した情報を分析し大統領に報告することなのですが、局員には諜報員だけでなく、戦闘に従事する特別行動部(Special Activities Division)という準軍事組織に所属するものもいます。

CIAを扱った映画で「委員会に報告するぞ」みたいなセリフがたまに出てきますが、これは上下院内に設置されたCIA調査特別委員会のことを指しています。その性質上、CIAの活動は国民に開示できないのですが、その内容を評価し監視する者は必要であることから、議会がその役割を担っています。

CIAと言えばレッドフォードですね。

アメリカ国家安全保障局(NSA)

CIAは大統領直轄の情報機関ですが、こちらはアメリカ国防総省の情報機関です。1998年の『エネミー・オブ・アメリカ』辺りから映画に登場するようになりました。近年では、エドワード・スノーデンが所属していた機関ということで話題になりましたね。

前身組織の設立は1949年なのですが、組織の存在自体が長年秘匿されてきました。公式では海外情報通信の収集と分析が主任務だとしているものの、依然として実態には不明の部分が多く残されています。CIAが人間を使った諜報活動を行うのに対して、NSAは電子機器を使った諜報活動を行い、2001年に欧州議会で問題にされたエシュロンという世界最大の通信傍受システムを保有・運用しているとされています。日本の三沢基地にも関連施設があり、日本の通信は彼らに傍受されていると池上彰が言っていました。

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