ライフ(2017年)_雰囲気は良いのに内容が悪い【6点/10点満点中】(ネタバレあり・感想)

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(2017年 アメリカ)
国際宇宙ステーションにて、火星のサンプルに含まれていた地球外生物の再生に成功するが、その生物は強靭な生命力と高度な知性を併せ持っていた。

6点/10点満点中_雰囲気は良かったのに、ドラマにアラありすぎ。

奇をてらわない直球勝負の作品

基礎となる演出や演技は上質

本作は、密室でモンスターに襲われるという過去にどれだけ見てきたか分からないほどの定番ジャンルを攻めているのですが、目新しい新機軸もなしに定番の題材に定番通りのアプローチをかけるという直球勝負の企画となっています。

こうした企画だけに演出や演技といったベーシックな構成要素で勝負するしかなかったのですが、実際に起こりうる物語にも見えるようなテクノロジーの見せ方や、全体の雰囲気作り、豪華キャストによる演技などは総じて良かったと思います。例えるなら、素材や調理に自信があるので、まず出汁ではなく塩で食べてくれと言われる天ぷら屋みたいなものでしょうか。より分かりづらくなりましたか。

これだけシンプル題材で、しかもミニマルな舞台でありながら、最終的には地球外生命と人類の存亡をかけた戦いに見えるような奥行も持たせており、SFとしてはなかなかよくできていたと思います。

ちゃんと恐怖心を感じさせるモンスター

SF映画界ではモンスターが出尽くした感があり、『イベント・ホライゾン』『スフィア』が製作された90年代後半あたりから、モンスターを出さないパターンの方が主流になっていました。最近では『クローバーフィールド/パラドックス』もそうでしたね。潜在意識の具現化みたいな抽象的な形に逃げるのがここ20年の定番です。

そこに来て本作ですが、ちゃんとモンスターを出して来たという点に感心しました。しかも、こういう宇宙生物が実在するかもしれないと思わせるレベルの合理性があり、キャラクターとしての美しさがあって、こいつが密室を出るとヤバイことになるという危機感も与えるという絶妙な設定・デザインとなっており、よくこれを考えたなと感心させられました。

しかも、出し惜しみなしなんですよね。全体像を見せてしまうと恐怖が減るという理由から、モンスターの全体像はなかなか描かれないことが普通なんですが、本作のモンスター・カルヴィン(『惑星ソラリス』からの命名?)は最初っからそのお姿を拝ませてくれます。こうしたストレスフリーな映画って有難いなと思います。

キャラクターの動かし方がうまくない

ただし、SF映画としての外観こそよくできていたものの、内容が今一歩だったんですよね。

チーム内での役割分担ができていない

  • エカテリーナ・“キャット”・ゴロフキナ(オルガ・ディホヴィチナヤ):司令官。クルーからの人望は厚い様子。『エイリアン』のダラス船長に相当する。
  • デビッド・ジョーダン(ジェイク・ギレンホール):医者。記録破りの宇宙滞在日数を継続中だが、その背景には人間社会への絶望感がある。『エイリアン』のアッシュに相当する。
  • ミランダ・ノース(レベッカ・ファーガソン):検疫官。ひたすら真面目。全員がYESと言っても一人だけNOを貫くタイプ。『エイリアン』のリプリーに相当する。
  • ローリー・アダムス(ライアン・レイノルズ):航空エンジニア。明るく仲間想いで、危険な任務には率先して立候補する。通常の映画ならヒーローポジションにいるタイプ。『エイリアン』のパーカーに相当する。
  • ショウ・ムラカミ(真田広之):システム・エンジニア。口数が少なく黙々と仕事をこなすタイプ。最近子供が産まれた。『エイリアン』のブレットに相当する。
  • ヒュー・デリー(アリヨン・バカレ):宇宙生物学者。下半身に障害があり、未知の生命への警戒心よりも関心の方が上回っている。『エイリアン』のケインに相当する。

上記の通り設定的にはスペシャリストの集まりなのに、得意分野毎の見せ場がない点は残念でした。唯一レベッカ・ファーガソン扮するミランダくらいですかね、常に検疫官の立場で意見を言っていたのは。ただしカルヴィンにラボを突破された瞬間に彼女の仕事は無くなるので、あとは素人同然のレベルでパニクってるだけでしたが。

その他のクルーは壊滅的でした。エカテリーナ船長は平常業務だとちゃんとリーダーらしく振る舞ってはいるものの、緊急事態が起こると誰も彼女の話を聞いちゃいません。緊急事態でこそリーダーシップは重要になるのですが。生物学者のヒューはカルヴィンの生態の解説者止まりで対応策には何らの貢献もしていないし、エンジニア2名(ローリーとショウ)の専門知識はまったく活かされません。

ヒューがカルヴィンの生態から弱点を推測、ローリーとショウが宇宙船の構造や船内の装備を使って弱点を攻撃する方法を立案し、エカテリーナ船長が作戦全体を統括するという関係で回してくれれば面白くなったと思うのですが。

なお、当初ローリーはヒーローポジションで大活躍する予定だったのですが、ライアン・レイノルズのスケジュールが『ヒットマンズ・ボディガード』と競合してしまい、彼の出演場面を大幅に削る必要があったので、あんなことになってしまったようです。

スペシャリストなのに人情を優先しすぎ

あと、全員がスペシャリストなのに人情で動きすぎなんですよね。窮地の仲間を救おうとしたために被害を拡大させるということを繰り返すのですが、賢い人達だからこそ「残念だが見捨てるしかない」という判断を下して欲しいところでした。

クライマックスで誰がカルヴィンと心中するのかにしても、「俺が行く」「いやいや私が」という観客を苛つかせる効果しかない定番のやりとりが始まるので疲れました。ダニー・ボイル監督の『サンシャイン2057』のように、「一番うまくやれる俺が行くべきだ」という専門家らしいクールなやりとりが欲しいところでしたが。

※ここからネタバレします。

死亡フラグが凄い

子供が産まれたんだと言ってみんなに祝福されるショウ。分かりやすすぎる死亡フラグですが、案の定、ショウは死にます。未知の生物への過剰なまでの愛着を示すヒュー。こいつも危ないなと思ったら、案の定死にます。ここまで見え見えの死亡フラグなので、逆に生かすつもりのフェイントなのかなとも思ったのですが、式次第通りに死ぬという芸の無さには笑ってしまいました。

まとめ

SFホラーとしての雰囲気は良いし、狭い舞台ながら人類の存亡をかけた戦いであるという奥行を与えることにも成功していて、「おっ」と思わせる作品ではあるのですが、意外に細部の詰めが甘いことが伸びない原因となっていました。

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