デアデビル(シーズン3)_壮絶なドラマと鬱展開…つまり最高のデアデビル【9点/10点満点中】

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マーベルコミック
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(2018年 アメリカ)
マーベル×Netflixも『デアデビル シーズン2』『ザ・ディフェンダーズ』で相当しんどくなってきており、本シーズンも最初は惰性で見始めたのですが、これがマーベル×Netflix内どころか映画を含むすべてのコミック実写化企画の中でも最上位クラスではないかと思うほどの傑作に仕上がっていてブったまげました。

DCで『ARROW/アロー』を作っていたエリック・オルセンが本シーズンよりショーランナー(番組の現場責任者)を務めているのですが、評判の悪かったヤミノテ絡みのエピソードの排除や、キャラクター達のオリジンの掘り下げ等、デアデビルを巨悪と戦うスーパーヒーローから匿名のクライムファイターに戻すための彼の軌道修正策はすべて功を奏しており、そしてここまでやるかというほどの鬱展開の連続には目を見張るものがありました。

弱くなったデアデビル

『ダークナイト ライジング』『アイアンマン3』『マイティ・ソー/バトルロイヤル』などもそうでしたが、ヒーローもの第3弾はヒーローが一時的に力を失い、試練を乗り越えて再生する物語となることが多いようです。本作も例に漏れず、序盤の数話ではレーダーセンスすら失い、訓練のし直しとなります。

これはパワーのインフレを防ぐために有効な措置ではあるのですが、それと同時に第1弾で描かれたオリジンのやり直しに感じられてじれったくもあり、実際、最初の数話の流れはとても遅く感じられました。また、『シーズン2』及び『ザ・ディフェンダーズ』ではワラワラと湧いてくる忍者軍団を千切っては投げていたマードックが、本シーズンでは数人のチンピラ相手にも苦戦を強いられるために見せ場の爽快感もなくなっており、今回のルールに馴染むまでは少々の忍耐が必要でした。

単純な力の衝突ではない

ただし、刑務所に張られた罠からマードックが脱出する様を捉えたシリーズ屈指の名場面と言える長回しをクライマックスに持ってきた第4話辺りから、本シーズンの方向性が明らかになってきます。単純な力の衝突ではない、知恵とコネクションを使った出し抜き合いこそが本シリーズの見せ場であり、直接的な力の行使は水面下での駆け引きの先に存在するに過ぎないイベントとして位置付けられているのです。ここからドラマは急激に熱を帯びてきます。

マードックは、シーズン2のラストでヒーロー業と友情の両立は不可能と判断してフォギーとカレンとの関係を断っていたのですが、事ここに至っては自分ひとりでの解決は不可能として二人に助けを求めます。前2シーズンでは弁護士業がヒーロー業にとっての制約条件に見えることもあったのですが、ここに来てようやく表の弁護士業と裏のヒーロー業の補完関係というデアデビルが本来あるべき方向性を打ち出すことに成功しています。

圧倒的に強いフィスク

チームの再結集と原点回帰。通常の物語ではヒーロー側の反撃の狼煙となる展開を中盤にて迎えるのですが、本作では底意地の悪い展開が待っています。フィスクは常にマードックと視聴者の二手先三手先を行っており、マードックの計画をことごとく潰すのみならず、事態をよりフィスクの意図した方向へと進展させるのです。

ここにきて、フィスクはとんでもない大物ヴィランぶりを見せつけます。『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』にてアベンジャーズ側の打ち手をすべて潰したサノスの如く、本シーズンのフィスクはどうやっても勝ち目がない圧倒的な脅威としてマードックと視聴者の前に立ちふさがります。シーズン1では彼の妙に人間臭い面に惹かれたのですが、本シーズンではその圧倒的な強さに惹かれました。

強いと言っても腕力の強さではなく(暴力装置の部分はブルズアイが担っています)、状況を読んで人心をコントロールするという知略や組織掌握力こそがフィスクの強さの源泉であり、特にナディームとデックスという対照的な2つのタイプのFBI捜査官を、それぞれに合った懐柔法で己の駒として取り込む様には妙な高揚感すらありました。

また、恐怖と忠誠の両方をうまく刺激して部下を使いこなす様も見事なものであり、大して期待していない部下がミスを犯した際には見せしめに殴り殺して組織全体に恐怖を与える一方で、本当に信頼している部下のミスに対しては「君の功績に免じて今回は許す」と言って寛大な姿勢を見せ、この人には決して逆らえないという組織風土を作り上げています。

さらに、愛するヴァネッサとの思い出の品である絵画を新たな所有者である老婆から買い戻そうとした際に、その老婆が自分以上にその絵画への思い入れを持っていると知った瞬間に諦めて手を引くという人間味ある感性もまだ残っており、悪とは切って捨てられない複雑な個性は相変わらず魅力的でした。

ブルズアイはデアデビルのIFの姿

本作では宿敵・ブルズアイとなるベン・ポインデクスター捜査官(通称・デックス)のオリジンも描かれるのですが、孤児として育ち、孤児院内でも特に問題のある子供だったという少年期の概略はデックスとマードックで共通しており、偽デアデビルvsマスクの男の戦いには、マードック自身が抱えるの闇の面との戦いという意味合いも含まれているようでした。

どれだけ反発しても支えてくれたシスター・マギーとラントム神父という存在がなければ、またフォギーやカレンといった友人たちに出会っていなければ、マードックもデックスのように闇落ちしていたのではないか。実際、本シーズンのマードックは、八方塞がりの末に「フィスクを殺しに行くしかない」として殺し屋に転向する一歩手前にまで追い込まれており、フィスクを殺すかカレンを救うかという二者択一を迫られた際にカレンを選択したおかげで、ギリギリ闇落ちを逃れています。異常性という共通項の元でヒーローとヴィランは紙一重の存在であるということが、この構図によ
り鮮明に描かれています。

レーダーセンスの素晴らしい表現

また、前2シーズンではデアデビルの格闘スキルのみが強調されており、その強さの源泉であるレーダーセンスが役立つという展開はさほどなかったのですが、本シーズンではきちんとその点での見せ場も作られています。

その白眉ともいえるのがフィスクの襲撃を逃れながらナディーム捜査官とともに大陪審を目指す場面であり、視覚を担当するナディームに対してマードックは聴覚をフル活用し、「今は動くな」「次は右だ」とナディームに指示を出しながら目の前の敵を一人ずつ排除していきます。この見せ場には燃えました。

≪マーベル×Netflix≫
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