悪魔のいけにえ -レザーフェイス・リターンズ-_だめだこりゃ【4点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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スプラッタ
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(2022年 アメリカ)
ホラーの古典『悪魔のいけにえ』(1974年)と設定こそつながっているものの、物語もキャラクターもオリジナルからはかけ離れています。別物だと思えばそれなりに見られるものの、悪魔のいけにえを名乗っちゃいけませんね。

作品解説

第一作とつながった物語

トビー・フーパー監督による超低予算ホラー『悪魔のいけにえ』(1974年)は、その陰惨で容赦のない作風から当時の観客の度肝を抜き、ホラー映画の傑作の地位を確立しました。

それだけの人気作とあっては続編が次々と製作され、2018年までにシリーズは6作品を数えるまでに拡大していました。

  • 悪魔のいけにえ(1974年)
  • 悪魔のいけにえ2(1986年)
  • 悪魔のいけにえ3 レザーフェイス逆襲(1990年)
  • 悪魔のいけにえ レジェンド・オブ・レザーフェイス(1994年)
  • 飛びだす 悪魔のいけにえ レザーフェイス一家の逆襲(2013年)
  • レザーフェイス -悪魔のいけにえ(2018年)

加えて、マイケル・ベイがリメイク権を獲得し、リメイク版2本も製作。

本作『悪魔のいけにえ -レザーフェイス・リターンズ-』(2022年)はフランチャイズ累計9作目となるのですが、これまでに製作されてきた続編とのつながりは明示されない一方で、第一作との関連性は明確に謳われており、1974年版の続編ともいえる内容となっています。

リメイク版『死霊のはらわた』のフェデ・アルバレスが脚本

本作の監督を務めたのは長編2作目のデヴィッド・ブルー・ガルシアですが、彼以上に重要なメンバーと言えるのが、脚本を書いたフェデ・アルバレス。

もうひとつのホラーの傑作『死霊のはらわた』(1981年)のリメイク企画『死霊のはらわた』(2013年)の脚本・監督を務めた実績を持ち、また『ドラゴン・タトゥーの女』(2011年)の仕切り直し『蜘蛛の巣を払う女』(2018年)の監督も務めており、リメイク分野で強みを発揮してきた人物です。

加えて、オリジナル作品『ドント・ブリーズ』(2016年)で高評価を獲得しており、フレッシュなメンバーが集まった本作において、マストとなる役割を果たしたものと思われます。

感想

悪魔のいけにえ(1974年)の続編

冒頭にて、『悪魔のいけにえ』(1974年)で描かれた惨劇のおさらいが流され、本作が第一作とつながった物語であることが示されます。

当該事件は社会に重大な影響をもたらしたものの、レザーフェイスはいまだ逮捕されておらず、依然として未解決事件扱い。

唯一の生存者であるサリーは、その後、ハイウェイパトロール警官となり、人生をかけてレザーフェイスを追ってきたのですが、結局捕まえることはできなかったようです。

この過疎地で50年近く捜査してもレザーフェイスの正体に辿り着けなかったという設定には疑問符がつくものの、まぁそういうことらしいです。

なお、第一作でサリー役を演じたマリリン・バーンズは2014年に亡くなっているので、本作では別の女優さんが演じているのですが、吹替版では『悪魔のいけにえ』(1974年)東京12チャンネル版の泉晶子さんが続投されています。

日本語版スタッフの気の利いたお仕事には感謝感謝なのでした。

社会性は不要だった

で、そこに都会の意識高い系がやってきて、新たな惨劇の火種を作るというのが本作の骨子。

2020年代の作品らしく、そこには社会の分断というテーマが織り込まれています。

意識高い系が南部の田舎の閉鎖性に眉をひそめたかと思えば、田舎民達も大事にしてきた価値観を踏みにじられて傷つくなどあって、中でも象徴的だったのがアメリカ連合国旗を巡るごたごたでした。

アメリカ連合国旗とは南北戦争時の南部の旗印であり、しばしば奴隷制や人種差別を正当化する人々のシンボルとして扱われます。

これを見た都会の意識高い系は「何あれ!?さっさと引きずりおろして!」と騒ぐのですが、その所有者である老婆からすれば祖先から引き継いできたものを掲げてきただけで、有色人種の人たちに不快感を与える意図はなかったと言います。

政治的に正しいからという理由で土着の伝統や価値観を斬るという行為の横暴さがこの一幕には込められており、なかなか興味深くは感じたのですが、そうは言ってもこれは『悪魔のいけにえ』ですからね。

虐げられる側の事情みたいなものは要らないんですよ。

ただただ殺人が好きな奴らが暴れ狂う話でいいのに、どうして余計な社会性など入れてしまったのか。企画の方向性が誤っていたように感じます。

レザーフェイスが『怪怪怪怪物!』化

そんなドラマを受けて、レザーフェイスの立ち位置もかなり変わっています。というか、ほぼ別人ですね。設定上は同一人物らしいのですが。

第一作では基地外一家の末っ子的な立ち位置だったはずなのに、本作では孤児院で育てられたという設定に変更。

孤児院を運営する老婆をいまだに慕っているのですが、意識高い系の横暴のために老母が死亡したことから、彼らへの復讐を開始することとなります。

本作でのレザーフェイスは虐げられた南部の亡霊的な扱いとなっているのですが、繰り返し言いますが、『悪魔のいけにえ』にそういう要素は要らないんですよ。

第一作の何が怖かったかって、家畜を屠殺するかのように人を殺すレザーフェイスの行動の手際の良さであり、対象が人間であるという感覚の決定的な欠落でした。

何の意味もなく殺人ができるメンタルこそが恐怖の源泉だったのに、殺人に動機や意味合いを持たせては台無しですよ。

本作のレザーフェイスと被害者の関係性って、台湾産ホラー『怪怪怪怪物!』(2017年)での怪物といじめっ子に近いものがありますね。大事な身内を傷つけられたので、復讐に走らざるを得なくなるという。

バスでの大虐殺というまんま『怪怪怪怪物!』な見せ場もあって、その影響はほぼ間違いないと見ています。

が、何度も言いますが、『悪魔のいけにえ』って盗人にも三分の理的な話じゃないんですよ。レザーフェイスは野獣のような悪じゃなきゃいけないのに、どうして悲しきモンスターにしちゃったのか。

本作の監督や脚本家達の神経を疑います。

スラッシャー映画としてはなかなか

そんなわけで『悪魔のいけにえ』の続編としては全然ダメだったんですが、スラッシャー映画としては悪くありません。

差し出された腕をバキっとへし折ったかと思えば、皮膚から飛び出した骨を首にぶっ刺して相手の息の根を止める。

さすがは『ドント・ブリーズ』の監督が関わっているだけあって、ゴア描写には創意工夫が感じられます。

第一作と比較すると犠牲者の数が格段に増えており、こちらは文字通り”massacre”(虐殺)でしたね。物凄い血糊の量でした。

かと思えば、静寂の中での鬼ごっこにも緊張感が宿っており、演出はホラー映画として合格点と言えます。

加えてサウンドデザインも優秀であり、ちゃんとした環境下で再生すると、足音が前から後ろへと正確に移動するなど、臨場感を高めることに貢献しています。

ただし、荒れたフィルムの質感が臨場感を高めていた第一作の魅力とは似ても似つかぬものではありますが。

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公認会計士の理屈っぽい映画レビュー

コメント

  1. とみとみ より:

    なんでサリー役の女優さんが亡くなられていて本人を使わないのに50年後と言う設定にしたのか?
    ババ・ソーヤーの年齢設定が無茶苦茶
    20年後とかの設定でよかったのではないかなーって思います。

    • 確かに年代設定がおかしなことになっていましたね。
      経過年齢を考えるとレザーフェイスは70歳以上のはずで、さすがにパワフルすぎるし。
      もしかしたらSNSでのインフルエンサーを絡めた作劇にしたくて現代設定に拘ったのかもしれませんが、それらの要素が本編とうまく絡んでいたようにも見えなかったし。