バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生【5点/10点満点中_話が分かりづらい】(ネタバレあり感想)

スポンサーリンク
スポンサーリンク

5点/10点満点中

■『マン・オブ・スティール』と完全に繋がった物語

『マン・オブ・スティール』は異星人であるクラークが自分の生き方を探す物語であり、その際には「お前の存在・パワーは全人類の認識を永遠に変えてしまうものだから、その行使には慎重になれ」という父・ジョナサンの教えが大きなカギとなっていたのですが、本作では異星人の力を目の当たりにした人類がどう反応したのかということがテーマとなっています。

こうした両作間でのテーマの連携のさせ方は非常に興味深かったし、本作を見た後だとまた違った形で『マン・オブ・スティール』を見ることができるので、シリーズものらしい楽しみ方も追及されていると感じました。

■ザック・スナイダー印の素晴らしいビジュアル

『マン・オブ・スティール』のクライマックスを一般市民目線で捉え直した場面が本作の冒頭なのですが、観客の目を楽しませる映像のド迫力と同時に、クリプトン人による圧倒的な破壊の前に為す術もない人類の無力感の表現にも成功しており、これは最高の出だしだったと思います。

その後も、紛争地に現れるスーパーマン、バットマンvs武器商人のカーチェイスなど、リアリティとファンタジーの間で絶妙なバランスを取っている見せ場が連続するのですが、これは完全にリアリティに振り切れたクリストファー・ノーランよりもさらに前進したヒーロー演出となっており、ザック・スナイダーの演出には非常に満足できました。

■各登場人物の動機がうまくまとめられていない

ただし、本作は脚本の出来が良くないのか登場人物の動機や行動原理が非常に伝わりづらく、上映時間はたっぷりあるにも関わらず肝心の説明が欠けているために、各自が何をやってるんだかよく分からないという困った現象が発生しています。

なお、後にリリースされたアルティメット・エディションではこの辺りの情報がかなりうまく整理されており、なぜアルティメットの方を公開しなかったんだろうと思いました。

バットマン(ブルース・ウェイン)

メトロポリスでのゾッド将軍戦当時、ブルースはその真下におり、彼はクリプトン人のパワーの脅威を目の当たりにし、また多くの部下を犠牲にして悲嘆にくれるのでした。冒頭にこの場面を持ってこられた以上は、スーパーマンを脅威と見做したウェインがその排除に動き出す話かと思ってしまうのですが、実は全然そんな内容ではないということが、本作の理解を難しくしています。エピソードの並べ方がうまくないのです。

本編開始からしばらくの間のバットマンの活動は、ゴッサム港で行われようとしている大がかりな武器取引の阻止であり、この時点ではスーパーマンに対してはほとんど関心を持っていません。当該取引に係る「ホワイト・ポーチュギー」という謎のキーワードを追っているうちにレックス・ルーサーに辿り着き、そしてルーサー邸から情報を盗み出して取引の対象物が通常の武器ではなくスーパーマンを無力化するクリプトナイトであることを突き止めます。それと同時にスーパーマンが闇落ちして崩壊した未来世界の予知夢を見たことから、自分がスーパーマン対策をするんだ、そのためにレックスからクリプトナイトを強奪するんだという方向で行動原理が移り変わっていきます。まずゴッサム港でクリプトナイト強奪を試みたもののスーパーマンによる横槍が入って失敗し、次に議会爆破直後にレックス・コープに押し入って今回は強奪に成功し、スーパーマンとの対決に至るのでした。

この一連の流れが非常に分かりづらかった上に、断片的なイメージの羅列で何が何だか分からなかった予知夢こそがスーパーマンに対する悪感情の決め手となったという不安定さが大きな混乱の原因となっています。だいたい、バットマンに予知夢を見るという能力設定なんてなかったはずで、あの夢が構成上一体どういう位置づけにあるのか、観客はあの内容を信用していいのかどうかも判然としませんでした。

レックス・ルーサー

「偽りの神」「災いは地獄からではなく天からやってくる」「惑星の安全保障」といったフレーズからも分かる通り、彼はスーパーマン排除という一貫した方針で動いており、作品中ではもっとも行動原理が分かりやすい人物となっています。ただし、なぜ彼がパラノイア的にスーパーマンを敵視しているのかというそもそもの部分がよく分からないので、その明確な行動原理とは裏腹に、観客にとっては腑に落ちない存在ともなっています。冒頭のゾッド将軍戦時に市街地にいるべきだったのはブルースではなくレックスだったのではないでしょうか。

また、その目的と手段が一致しないという点も問題です。スーパーマンに対して批判的な世論の形勢、インド洋で発見されたクリプトナイトの確保、ゾッド将軍の遺体やクリプトン人の宇宙船の研究までは良いものの、最終的に行うのがクラークの母・マーサを誘拐し、殺されたくなければバットマンの首を取ってこいとスーパーマンに命令するという展開には首を傾げるしかありませんでした。また、クリプトン人の圧倒的な力が脅威であるというそもそもの動機がある中で、クリプトンのテクノロジーを利用してドゥームズデイという化け物を安易に作ってしまったことも疑問でした。仮にドゥームズデイがスーパーマンという脅威の排除に成功したとして、残ったドゥームズデイをどうやって制御するつもりだったんでしょうか。まさに支離滅裂ですね。

スーパーマン(クラーク・ケント)

本作のクラークは基本的に受け身であり、自分に対して否定的な世論に胸を痛めているだけなのですが、誘拐されたマーサ探しを手伝ってもらうとか言ってクリプトナイトで罠を張っているバットマンの前へノコノコ出て行くという行動だけはよく分かりませんでした。だいたい、ロイスがビルの屋上から突き落とされても地面に衝突するまでの数秒で救いに現れるほどのスピードと視覚・聴覚を持っているんだから、バットマンの説得に時間を取られるよりも、自分で探す方が早いと思うのですが。

■マーサネタについて

劇場公開時に世界中から失笑を買い、「BvSと言えばこれ」というほど本作のガッカリぶりを象徴する場面となったのが、終盤でのマーサネタでした。偶然にもお母さんの名前が同じだったことからバットマンとスーパーマンが喧嘩をやめるのですが、今まで長尺を費やしてきたヒーローバトルの終着点がそこかいと、私も座席からズリ落ちそうになるほどの思いをしました。『デッドプール2』で早速ネタにされていましたね。

このマーサネタですが、従前、バットマンとスーパーマンのお母さんの名前が同じということには熱心なアメコミファン達もほとんど気付いてなかったらしく、制作側としても自信満々でネタを投入したんだろうと思います。「そう言われればそうだね!」とみんなから褒めてもらえるような光景が目に浮かんでいたんでしょう。また、スーパーマンを駆逐すべき脅威としてしか見做していなかったバットマンが、彼もまた一人の人間であることを認識して攻撃の手を止めるきっかけとなったというドラマ面での必然性も伴っていたと思います。

しかし、それまでの全体の流れがあまりに悪すぎて、両者のつまらない諍いを散々見せられてきた挙句に、お母さんの名前が同じで意気投合という展開はさすがにどうなのという受け取られ方になってしまいました。

■(2019年2月12日追記)予知夢の伏線は放棄されるみたいです

前述の通り、バットマンの見た予知夢は全世界の観客を大いに当惑させたのですが、ここで張られた伏線は回収されず放棄されることになりそうです。

2019年1月29日にアメコミオタクの映画監督・ケヴィン・スミスが、『ジャスティス・リーグ』の関係者より聞いた話として語ったところによると、ザック・スナイダーは『ジャスティス・リーグ』を3部作で考えており、この予知夢はその3部作の中で回収されるという構想になっていました。(参照:https://www.youtube.com/watch?v=gHjkrNzj7sI

第一弾の大筋は劇場公開版とほぼ同じなのですが、ブームチューブの向こう側のダークサイドとジャスティス・リーグの目が合うというラストが本来存在していたようです。

第二弾ではお互いの存在を認識しあったダークサイドとジャスティス・リーグの戦いが勃発。そこにグリーン・ランタン・コァも絡んでくるという展開になり、最終的に『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のようにヒーロー側の敗北で終わる内容だったようです。そして、ジャスティス・リーグの敗北により荒廃した地球が『BVS』でバットマンが見た悪夢へと繋がっていくはずだったと。

しかし、劇場公開版ではダークサイド絡みの描写はカットされ、『ジャスティス・リーグ』続編の目途は立っていないことから、スナイダーの当初の構想は実現しない可能性が非常に高くなっています。さんざん観客を混乱させておいて、「あれはなかったことに」はちょっとどうなのという気もしますが。

にほんブログ村 映画ブログへ
記事が役立ったらクリック

Batman v Superman: Dawn of Justice
監督:ザック・スナイダー
脚本:クリス・テリオ、デヴィッド・S・ゴイヤー
原案:ザック・スナイダー、デヴィッド・S・ゴイヤー
原作:DCコミックス
製作:チャールズ・ローヴェン、デボラ・スナイダー
製作総指揮:スティーヴン・マヌーチン、ベンジャミン・メルニカー、マイケル・E・ウスラン、クリストファー・ノーラン、エマ・トーマス、ウェスリー・カラー、ジェフ・ジョーンズ、デヴィッド・S・ゴイヤー
出演者:ベン・アフレック、ヘンリー・カヴィル、エイミー・アダムス、ジェシー・アイゼンバーグ、ダイアン・レイン、ローレンス・フィッシュバーン、ジェレミー・アイアンズ、ホリー・ハンター、ガル・ガドット
音楽:ハンス・ジマー、ジャンキーXL
撮影:ラリー・フォン
編集:デヴィッド・ブレナー
製作会社:ラットパック・エンターテインメント、アトラス・エンターテインメント、クルエル・アンド・アンユージュアル・フィルムズ、DCエンターテインメント
配給:ワーナー・ブラザース
公開:2016年3月25日(米)(日)
上映時間:152分(劇場公開版)、183分(アルティメット・エディション)
製作国:アメリカ合衆国

スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク
記事が役立ったらクリック
DCコミック
スポンサーリンク
言わんドラゴをフォローする
公認会計士の理屈っぽい映画レビュー

コメント