セブン・シスターズ【6点/10点満点中_良質な演技とアクション】(ネタバレあり感想)

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(2017年 イギリス、アメリカ合衆国、フランス、ベルギー )
過激な一人っ子政策が行われている未来世界で、七人一役を演じながら30歳まで生き延びてきた七つ子に訪れた危機を描くSFアクション。

6点/10点満点中

設定・世界観に魅力がない

政府がアホ

本作はディストピアSFの一種なのですが、戦争・災害など全人類で破滅に進んでいるというよくある類の設定ではなく、明確に政府が失策を重ねてきた先に絶望的な今があるという設定であり、政府のアホさ加減がノイズに感じられました。

世界の人口増加の影響で食糧難

効率よく食料を生み出せる遺伝子組み換え農作物を開発

遺伝子組み換え農作物には多胎妊娠を誘発するという副作用が発覚

世界人口の成長曲線がさらに急カーブになる

第2子以降を冷凍保存して社会の食い扶持を減らすという過激な一人っ子政策の実施

さすがにアホでしょ。

産科への監視が甘い児童分配局

この世界では児童分配局という政府部門が大きな権限を持っており、彼らは全国民に本人認証用の端末を持たせた上で、武装した役人を街中に立たせて無戸籍の人間がいないかどうかを調べています。どうやら生まれてきた後の人間を管理しようとしている様子なのですが、他方で妊娠・出産という入り口部分の管理はザル状態で、こちらもアホがやってる組織なのかと思ってしまいました。

序盤では運悪く児童分配局に見つかってしまった家族の様子が描かれるのですが、子供がまぁまぁ育ってるんですよね。主人公一家にしても、七つ子が生まれた直後にウィレム・デフォーじいちゃんがお医者さんに「あなたは良い人だから、このことは他言しないと信じています」で隠蔽が終了してしまうんですが、なぜ産科に役人が一人も張っていないのかという点がとても気になりました。

狭苦しい箱庭的な世界観

上記の通り一応は世界規模の背景を持つ作品であり、物語は最終的に政府の転覆騒動にまで発展していくのですが、そんなスケールとは裏腹に、本編は狭い場所をグルグルしているだけの箱庭的な世界観であるという印象を持ちました。

先日、同じくディストピアSFである『ユピテルとイオ』という映画を見たのですが、映画として面白かったかどうかはともかく、登場人物たった2名で宇宙規模の物語を紡いでみせた同作にとても感心した直後だったこともあって、本作の窮屈な世界観にはガッカリでした。

ノオミ・ラパスの熱演は見る価値あり

そんな世界において、無戸籍で生きてきた姉妹が役所の追跡から逃れるという物語が本作の骨子です。主人公はおそ松くんをも超える七つ子。主演のノオミ・ラパスは出づっぱりで一人七役を演じています。一人七役と言えばエディ・マーフィ主演の『ナッティ・プロフェッサー クランプ教授の場合』という先行事例がありますが、あちらは主人公・父・母・祖母・兄弟という明確に人格の違う役柄だった上に、コメディ映画だったので極端なキャラ付けもOK。しかもエディがエディと共演する場面は限定的だったので、エディ・マーフィの技見せ程度に収まっていました。

対して本作は七つ子という限りなく同一人物に近い別人格を演じ分けるという困難な企画だった上に、シリアスな作風なのでおかしくなってもいけない。しかも外出の自由がなく狭い家での共同生活を送っているという設定上、常にラパスはラパスと共演している状態であり、要求される演技のクォリティも撮影の手間も『ナッティ・プロフェッサー』とは段違いだったと思います。

そして、ノオミ・ラパスは見事これをやり切っているのだから感心します。以下、彼女が演じた姉妹の個性なのですが、観客が一目で区別がつくレベルでこれらを演じ分けてみせたノオミ・ラパスの演技は大きな見所となっています。

  • 月曜:真面目一筋のリーダー格。カレン・セットマンという外観の基礎をなす。
  • 火曜:情緒不安定で麻薬をやる。赤毛。
  • 水曜:武闘派。黒髪のショート。
  • 木曜:反抗的、かつ、危機管理能力が高い。黒髪のベリーショート。
  • 金曜:機械に強い天才肌。メガネにニット帽。
  • 土曜:セクシーで女性らしい。プラチナブロンド
  • 日曜:温厚でグループの精神的支柱。髪を常に後ろで結んでいる。

細かいことを言うと、一卵性なのに個性や特技がここまで幅広い方向に分岐していくのかという点が気になったっちゃ気になったのですが、これくらい分かりやすいキャラ付けをしないと誰が誰だか分からなくなったはずなので、そこには目をつむるってことでいいと思います。

ちょっと前に見た『クロース:孤独のボディーガード』でも素晴らしい演技を見せていたし、アクションもやれる演技派という路線でノオミ・ラパスは良い位置に立とうとしているのではないでしょうか。

アクション映画としては充実している

本作のあらすじを聞いた時には、人間とは何ぞや、個性とは何ぞやみたいな難しいテーマが掲げられるのかなと思ったのですが、実際にはそんな難しい話は見事にスルーされており、見つかれば抹殺される姉妹が、各自の特技を組み合わせながら追っ手から逃れるというソリッドなアクションとして仕上がっています。

見せ場はクライマックスに向けて計ったように盛り上がっていくし、姉妹が命を落とす順番に意外性があったり(最後まで生き延びると思った人間が意外と早く死んだりする)、謎解き部分が面白かったりと、捻りの効かせ方もよかったと思います。

重厚なディストピアSFを期待すると裏切られるのですが、良質な演技に支えられた娯楽作という位置づけで見れば、ちゃんと楽しめる作品にはなっています。

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