シャン・チー/テン・リングスの伝説_いい加減なトニー・レオン【6点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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マーベルコミック
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(2021年 アメリカ)
非イケメンをヒーローとして採用した野心作であり、シャン・チーのキレッキレのアクションや怪獣映画となるラストなど、男子の大好物は有難くいただきました。が、ストーリーが破綻気味だったので面白いとは感じませんでした。

感想

ヒーロー、ヒロインが不細工という新機軸

本作の一体何が革新的かというと、主人公の見た目がとにかく冴えないことです。

主人公シャン・チーはどう見ても若い習近平という感じでヒーロー顔ではなく、はじめてポスターを見た時には「マジか」と思いました。

とはいえ、写真映えしないだけで動かしてみればカッコよく感じられるのかもと思っていたのですが、動画で見てもやはり習近平。

ここでようやく、ヒーローに非イケメンを配置するというディズニーの壮大な実験であることを思い知るに至りました。ちょっと茶化した書き方になりましたけど、これって革新的な試みだと思います。

それはヒロインポジションにいるケイティも同様。演じるのはアジア系のラッパーで、ゴールデングローブ賞主演女優賞受賞経験も持つオークワフィナですが、彼女の見た目は椿鬼奴。

一般の映画では三番手、四番手に配置されるコメディリリーフ的な見た目なのですが、本作では主人公の傍を片時も離れないヒロインポジションにつきます。

これもまた新しいなと思ったし、シャンチーとはあくまで友人関係であって恋仲には発展しないというドラマの展開のさせ方も、私としてはツボでした。

美男美女がくっつくだけが娯楽ではない、不細工同士の友情でもちゃんと成立するんだぜという、ヒーロー映画の民主化の波を感じましたね。

シャン・チーのアクションがキレッキレすぎて素敵

そんな習近平顔のシャン・チーですが、いざアクションに入ると体の動きはキレッキレ。

演じるシム・リウは中国系カナダ人で、俳優業をメインとしつつも武道やスタントのトレーニングも積んでおり、MCU出演者では珍しくそもそもアクションの素養を持った人物です。

バスで暴漢を撃退する場面でのキレッキレの動きには惚れ惚れとしてしまいました。

カンフーの動きが様になっているだけではなく、ジャッキー・チェンのように周囲の小道具や造りを利用した小技も効いていて、見ていて実にワクワクするアクションなのです。

動きの凄いマーシャルアーツ俳優は他にもいますが、キレッキレ+ワクワクという見せ方を出来る俳優は意外に少なく、ディズニーは良い人材を見つけてきたなぁと感心しました。

ただバスの場面では文句もあって、弱っちいと見せかけて実はカンフーマスターであったことがアガるポイントだったはずなのですが、そのちょっと前の起床場面でシム・リウのバッキバキの肉体をチラ見せしているので、サプライズが薄れているんですよね。

そこがちょっと残念でした。

トニー・レオン絡みの話はかなりいい加減

シャン・チーの父親は悪の秘密結社テン・リングスを率いるウェンウー(トニー・レオン)。

どうすれば小顔のイケおじトニー・レオンから習近平が生まれるんだと思うのですが、とりあえずそういうことらしいです。

指輪の魔力で不老不死となったウェンウーは1000年に渡って悪事を繰り広げてきたのですが、後にシャン・チーを出産する女性と大恋愛をしたことから、普通の人間として生きるのも悪くないなぁということでしばらく温厚な家庭人として振る舞っていました。

しかし悪党時代のウェンウーに恨みを持つ連中に奥さんを殺されたことから以前にも増して狂暴となり、また亡き奥さんとの再会を求めて常軌を逸した行動をとるようになったという、ダースベイダー的であり、碇ゲンドウ的なキャラとなっています。

このウェンウーが物語を動かしていくこととなるのですが、彼と奥さんに係る話がかなりいい加減なので、見ていてしんどかったです。

すべての元凶となる奥さん殺害事件においては、かつてウェンウーを撃退したほどのカンフーの使い手であった奥さんが、複数人とはいえ生身の人間である暴漢に敗北して殺されるというパワーバランスの崩壊が起こっています。

そしてこの暴漢達、なぜか奥さんを殺したことで満足して呑気に居酒屋で宴会をしているのですが、奥さんの亡骸を見たウェンウーが怒って復讐しに来るということが分からなかったのでしょうか。

その後、ウェンウーは奥さんの実家の村にその魂が幽閉されているという偽情報をどういうわけだか信じ込んで、あの村をぶっ潰してやる!と、碇ユイに会いたくて仕方がない碇ゲンドウみたいな行動をとり始めるのですが、この動機も意味不明でしたね。

1000年も生きてきて酸いも甘いも噛み分けまくっているウェンウーが、なぜそんな与太話を疑いもせずに信じ切っているのだろうという。

で、奥さんの村へ行くためには息子と娘が必要であるというわけで、毒親から逃げる形で独立した二人を連れ戻そうとするのですが、そのためになぜか刺客を送り込んで力尽くで帰省させる辺りもよく分からなかったです。

そんなことをして息子・娘が言うことを聞くはずもなく、スカイウォーカー家もかくやという家族喧嘩へと突入していくわけですが、そもそもウェンウーが子供達の同意を取り付けやすい筋道を作っていればこんなことにはならなかったはず。

また、奥さんに再会したいというゴリゴリの私情のために動員されるテン・リングスの構成員たちが気の毒になりました。私情と組織の目標がある程度一致している案件ならまだしも、ウェンウーの私情100%ですからね。

リーダーがああなってしまった組織は遠からぬ将来に滅ぶこととなるので、図らずも世代交代が起こったことは、テン・リングスにとって怪我の功名だったと思います。

中国の奥地にバルログという超絶世界観

かくしてテン・リングスは奥さんの村に攻め込み、シャン・チー達がこれを迎え撃つこととなるのですが、結界の向こう側にいたのは奥さんの魂ではなく、闇の魔物達でした。

阿呆のウェンウーはそうとも知らずに結界を破ってしまうのですが、そこから出てきたのは『ロード・オブ・ザ・リング』のバルログのような怪物であり、何で中国の山村で北欧神話みたいなデザインの怪物が出てくるんだよと、その超絶世界観には呆気にとられました。

ちなみにバルログは北欧神話の炎の巨人スルトがモデルらしいです。

対するシャン・チーは「あなたの心には竜がある」という生前の母の言葉を思い出し、すると本当に湖から竜が現れるという、こちらも超絶展開を迎えます。

竜の心とは何かの比喩だと思っていたら、竜そのものが出てくるとは。ロッキーがアイ・オブ・ザ・タイガーと言ったら、本当に虎が出てくるような感じでしょうか。違いますか。

この等身大アクションと巨大怪獣戦の融合は、東映特撮ものへのオマージュのような気もしました。何せその路線の第一弾は東映版スパイダーマンであり、MCUにとっては親戚筋に当たる作品ですからね。

で、シャン・チーは竜の頭に乗ってバルログに挑むのですが、その姿が電子星獣ドルを操る宇宙刑事ギャバンみたいで、個人的にはツボでした。よろしく勇気。

この辺りの闇鍋感は個人的には好きです。ただ映画全体のバランスはおかしくなっているし、あまりに出鱈目な世界観に拒否反応も出てきそうな気がしますが。

何度でも言いますが、中国の奥地にバルログは変ですって。

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