スパイダーマン3_豪快に破綻した最終章【4点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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マーベルコミック
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(2007年 アメリカ)
詰め込むだけ詰め込んで豪快に破綻した作品でした。ハリーが記憶喪失になったかと思いきやすぐに元に戻ったり、前作で終わったはずのピーターとMJの関係蒸し返しがあったりと、何でこんなものまで入れちゃったのと理解に苦しむ脚本でした。

感想

最高を更新したビジュアル

毎回素晴らしいビジュアルで目を楽しませてくれる本シリーズですが、アカデミー視覚効果賞を受賞した前作『スパイダーマン2』をきっちり越えてきており、本作も視覚的には見応え十分です。

砂粒一粒一粒から構成されているサンドマンの質感や、ゴムと繊維の中間のようなシンビオートの独特の動きの表現など、技術的には凄まじいレベルに達しています。

またスパイダーマンの空中戦も過去最高レベルであり、高層ビルから猛スピードで落下する様などは、もはやアトラクションの域に達していました。

詰め込むだけ詰め込まれた話

一方でお話の方はというと、前2作を大幅に下回る残念なものでした。

ピーターを父の仇スパイダーマンであると認識したハリーとの決着という前作から引き継いだ大きな課題がある上に、初登場のヴィランが2体もいる。そのうちの一人はベンおじさんの殺害犯というわけで、ピーターとの浅からぬ因縁もある。さらにはもう一人のヒロイン グウェン・ステイシー登場と、やることが山ほどあるのです。

グウェンはコミックにおいてはMJよりも先に登場している重要人物ではあるのですが、混乱するからという理由で今の今まで映画には登場させていませんでした。にもかかわらず、ただでさえやることの多い本作でなぜグウェンを登場させたのかは謎です。

ともかく、公開日が決まっているので脚本の完成を待たずして撮影を開始しなければならず、サンドマンとスパイダーマンが現金輸送車で戦う場面などは、本編中のどこに入るのか決まらないまま撮っていたという凄まじい現場でした。

ハリーがピーターを襲うが頭をぶつけた衝撃で記憶喪失になり、元の好青年に戻ったかと思いきや、割かしすぐに記憶が戻るという理解に苦しむ展開があるのも、こうした製作現場における混乱によるものなのです。

なお、サム・ライミが考えていたヴィランはサンドマンとヴァルチャーで、刑務所で出会った二人がスパイダーマンを襲うという割かしシンプルなストーリーが考えられていたのですが、マーベルスタジオの幹部アヴィ・アラッドが人気の高いヴェノムの登場をごり押ししたために、この形になったのだとか。

本作の批評的失敗に懲りたソニー・ピクチャーズは、以降の作品では監督が嫌がる要素を無理やり押し付けないという方針を決めたのでした。

ピーターとMJの関係の蒸し返しは如何なものか

そんなわけでストーリーはダメダメだったのですが、中でも理解に苦しんだのがピーターとMJの関係蒸し返しがあったことです。

前作はピーターとMJの関係性を描く回であり、何だかんだありつつも、最後は結ばれてめでたしめでたしでした。

その続きは二人で困難を乗り越える話にするのが常道だろうと思うのですが、本作でもまたピーターとMJが付いたり離れたりするので、「それは前回終わったことでは?」と困惑しました。

今回、MJは舞台女優として落ち目となり、一方でスパイダーマンとしての活動が軌道に乗って溌溂とするピーターとの温度差が表れ始めます。

この図式って前作をひっくり返したものであり、前回は絶好調なのがMJで、不調なのがピーターでした。

で、前作のMJは不調に苦しむピーターの苦悩などどこ吹く風で、「なんで私の舞台を見に来てくれないのよ」と文句を言っていたのに、自分が不調に転じたら「ピーターが調子乗ってて何かムカつく」という態度になるので、結局、どの状況になってもこの人は文句が止まらないタイプなのだろうと思います。

そこにピーターに復讐したいハリーが絡んできて、ピーターをふれと言われてその通りにするMJ。

それにむかついたピーターはMJがバイトするジャズクラブにグウェンを連れて行くという嫌がらせをするのですが、グウェン以外の3人のやっていることが低レベル過ぎて見ていられませんでしたね。いい大人のやることかと。

滑りまくりのユーモア

ここでのピーターはシンビオートに憑りつかれた状態にあり、イタイ行動を連発します。

前髪を下ろして上から下まで黒い服というマッツ・ミケルセンのような出で立ちで、『サタデー・ナイト・フィーバー』のジョン・トラボルタのようにノリノリで街を闊歩。

問題のジャズクラブでもグウェン相手に良い男ぶって振る舞い、突然ピアノを演奏し始めたり、ダンスを決めたりと、イタイ行動が止まりません。

極端な誇張があったことから、この一連の場面はコメディとして演出されていたのだろうと思うのですが、如何せん脚本不在で撮影された作品なのでライミ監督もうまく笑いに転化できておらず。ただただピーターのイタイ行動を数分間見せられるだけのツライ場面となっています。

それはシンビオートの新たな宿主となるエディ・ブロックも同様であり、エディは第三者に対してグウェンの彼氏であると名乗るのですが、グウェン曰く、一度コーヒーを飲んだだけとのこと。

エディもまたイタイ奴であり、コメディシリーズ『ザット’70sショー』(1998年)のトファー・グレイスをキャスティングしていることからも、彼をコミカルに描く意図があったものと思われるのですが、エディに関連する場面もまったく笑えないので、ただただイタイ人を見せられただけという気まずい空気が漂っていました。

≪スパイダーマン シリーズ≫
スパイダーマン_前半最高、後半残念【7点/10点満点中】
スパイダーマン2_良質な青春ドラマ【8点/10点満点中】
スパイダーマン3_豪快に破綻した最終章【4点/10点満点中】
アメイジング・スパイダーマン_改悪部分多し【5点/10点満点中】
アメイジング・スパイダーマン2_悪くはないが面白くもない【6点/10点満点中】
スパイダーマン:ホームカミング_バルチャーだけが良かった【5点/10点満点中】
スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム_前作からドラマ断絶しすぎ【5点/10点満点中】
スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム_面白いけど微妙な部分も【7点/10点満点中】

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