(2021年 アメリカ)
エターナルズが並レベルの戦闘力だったし、そもそも見た目がかっこよくないので、ヒーロー映画らしい高揚感が全くありませんでした。理念vs理念の物語にも説得力がなかったうえに、全体に漂うキツめのポリコレ臭もマイナス。MCUで一番面白くありませんでした。
感想
情報過多な世界観
世界観を説明する『ブレードランナー』(1982年)みたいなテロップから始まるのですが、冒頭にテロップが表示されるのはMCUでは異例のこと。
ヒーロー登場編では1時間ほどかけて丁寧に設定なり世界観なりの説明をするのがMCUの常套手段であるのに対して、本作ではテロップ処理をしてすぐに本編に入ろうとしているわけです。
が、エターナルズは人類を守るために派遣されてきたという設定には「この手の話、何度目よ」という感じで関心を持てなかったし、ここでエターナルズ、セレスティアルズ、ディヴィアンツなどの用語が一気に出てくることにもゲンナリでした。
これがどれもこれも長ったらしくて覚えづらい名称で、世界史のテスト前のような気持ちにさせられるのです。
そしてエターナルズが10人もいるという点もストレスでした。演じる俳優達の個性もあって見た目の区別がつかないということはないのですが、名前を覚えるのが大変なので、本人不在の中で誰かがメンバー名を口にすると、それは一体誰だったっけとなってしまうわけです。
世界観に興味を持てない中で、覚えなきゃいけない情報が多すぎるというのはしんどかったですね。
エターナルズは強くない、かっこ悪い
エターナルズはMCUの中でも桁外れに強い部類に入るというのが事前の触れ込みでした。
コミックではサノスもエターナルズの一員だったという設定が付加されていたり、映画でアンジェリーナ・ジョリーが演じたセナはキャプテン・マーベルと同等のパワーを持つとされたりと。
キャプテン・マーベル並の戦力を持つメンバーが10人も揃ったとなれば盆と正月を合わせたような凄まじい戦いが見れるかもと期待していたのですが、実際の戦いを見るとキャプテン・マーベルどころかキャプテン・アメリカ程度にしか見えませんでした。
しかもムジョルニアを扱えた『エンドゲーム』の時ではなく、ナチと戦っていた『キャプテン・アメリカ』第一作当時のキャップ。
エターナルズの任務は知的生命体を捕食するディヴィアンツという化け物から人類を守ることなのですが、ディヴィアンツはサノスの軍隊にいたザコ敵程度の戦力にしか見えず、エターナルズはそのディアンツと意外とどっこいの戦いをするのです。
ディヴィアンツ1体に対してエターナルズ3人でもサクッと倒せなかったりとか、普通に弱いでしょ。
しかも、戦闘フォームになったエターナルズがかっこよくないのもマイナスでした。全身タイツ姿で素顔出してるだけですからね。
アイアンマンとかスパイダーマンのように変身後の姿がとにかくかっこよくて、変身しただけでアガるということがなかったので、こちらもまたヒーローものとしてはしんどかったです。
筋が通らないエターナルズの不干渉主義
このエターナルズですが、人類の戦争に干渉するかどうかで仲間割れを起こします。
我々の力を使って戦争を止めるべきと主張するドルイグ(バリー・コーガン)に対して、リーダーのエイジャック(サルマ・ハエック)は不干渉主義を訴え、何となくエイジャックの方が正しい感じで終わります。
ただ、それを言えるのは彼らが人知れずディヴィアンツと戦っており、人類の前に姿を現さないことを徹底している場合のみであり、古代メソポタミア人に金属の武器を与えたり、バビロニアで農工具を与えたりと、別の場面ではがっつりと人類史に影響を及ぼしているわけです。
にも拘わらず、戦争を止めることだけはNGというのはよくわからん価値観です。
理念vs理念の戦いに説得力なし
中盤になると、実はエターナルズは人類を滅ぼすために派遣されていたということが明らかになります。
人類は次の銀河を生み出すための養分みたいなものであり、それなりの数にまで増やす必要があったので、捕食者であるディヴィアンツから守るためにエターナルズが派遣されていたという。
ただし人類を滅ぼそうとするセレスティアルズ側にも理念があって、人類が次の銀河の礎となり、その結果として何兆もの生命が生み出されることになるのだから、計算としては合っています。
しかも人類だってそのサイクルの中で生命を得たのだから、今度は生み出す側に回りなさいという話は宇宙の摂理でもあり、セレスティアルズはそれを忠実に実行しようとしているだけなのです。
ただしエターナルズのリーダー エイジャック(サルマ・ハエック)の考えは違っていて、人類を滅ぼすのはあまりにもむごかろうというわけで、セレスティアルズの計画を止めようとします。
一方、エターナルズでも最強の戦闘力を持つイカリス(リチャード・マッデン)は、あくまで指令を貫徹せねばならないだろうという姿勢を崩しません。
ここに理念vs理念の衝突が始まるのですが、エイジャック達が母星からの指令に反してまで人類側に肩入れする理由が希薄なので、どうにもこれが盛り上がりませんでした。
本作でちゃんとした人間のキャラクターはセルシの恋人、キンゴの付き人兼カメラマン、ファストスのパートナー&子供の4人だけですからね。
人類に愛着を持ったという割には、あまりにもエターナルズと人類との交流が描かれていないので、掲げる理念にも説得力がありませんでした。
しかも彼らはくだんの不干渉主義の結果、サノスの指パッチンを止めずに人類の半数が消滅する様も指を咥えて見てきたのに、なぜここにきて人類への愛着に目覚めたのだろうかという点にも不自然さを感じました。
盛り上がらないラストバトル
ついに発動した人類滅亡プロセスを止めるか止めないかを巡ってエターナルズは内部分裂を起こして内輪の戦いに入り、そこにエターナルズの養分を得て進化したディヴィアンツもやってきて三つ巴の戦いが始まるのですが、これもまったく盛り上がりませんでした。
強敵風に登場したディヴィアンツはアッサリと倒されるし、エターナルズ同士の戦いも、どうすれば一方がもう一方を倒せるのかという勝敗ラインが明示されていないので、とりとめのないものとなっています。
人類滅亡プロセスを一体どう止めるのかという方法もよくわからず、気づけばニアサードインパクトみたいな状態で終わっていたし。ラストの画は完全にエヴァでしたね。
キツめのポリコレ臭
エターナルズにはアジア系がやたら多く、またエターナルズ内で足を引っ張る役回りをするのはたいてい白人キャラクターという、現在の潮流に寄り添いすぎた作劇もしんどかったです。
私はアジア人なので配慮されている側なのでしょうが、ここまで有色人種ヨイショが過ぎると、逆に嫌らしさを感じます。文句を言われそうな要素を全力で消しにかかっているような。
ここまでやらんでもいいですよ。
MCUがしんどくなってきている
『エンドゲーム』でほとんどのドラマに区切りがついた後のMCUはしんどくなってきていますね。
フリーザ編で最高潮に達した後もダラダラと続き、パワーのインフレを起こして取り留めもなくなっていった『ドラゴンボール』のような状況に陥っていませんか?
宇宙の帝王フリーザを倒してきたが、地球に帰ってくるとフリーザよりも強いセルが育っていたとか、子供心にも「なんじゃそれ」と思いましたが、エターナルズなんてまさにそのパターンですよね。サノスと同等レベルの集団が実は古来から地球に生息してましたって。
そして、かつて『アイアンマン』『キャプテン・アメリカ』の第一作目にあったような、徐々に作品がつながれていってシェアードユニバースを形成していくようなワクワク感もなく、何年もかけてアベンジャーズを結成したあのステップを、また一からやり始めるんだという徒労感すら感じてきたし。
今も惰性で見ていますけど、そろそろ離脱するかもしれません。
コメント
シャンチーは見なかったんですか?
シャンチーは、まだ見てないです。
初コメです
エターナルズお疲れ様です!
やっぱ賛否両論ですね今回
とても的確な感想だと思いました
まぁホントに
これまでのMCUと全くスタイルが違って
撮影スタイルもガラッと変わってたし
やったことないことやろうって意気込みがすごかったなってのと
(ここの部分はシャンチーも一緒)
あと冒頭のMARVELロゴの入り方が完璧だったので
うぉおお!ってなりました笑
(DUNEでやれなかったことを
これでやっててびっくり
単にPink Floydのtimeが好きなだけってだけですが)
あとテロップはホンマにブレードランナーオマージュでしたよね笑
文字の出方も速度もフォントも
ほとんど同じだった気がする笑
渋いSFの影響受けた芸術寄りのアメコミヒーロー異色作
(神様群像劇)
+撮影スタイルはテレンス・マリック
+超多様なダイバーシティなキャスト
↓
はっきり言ってとんでもないもの作ったなと笑
映画ファン 及び批評家が騒ぐだけある笑
ただ一個不満としては
インド映画の踊りのシーン
全然本家っぽくないっていう…
もっと迫力ほしかったかなと
(キンゴのシーン)
ここだけははっきり言える笑
(もっとキレッキレのダンスね)
ノマドランドの監督だけあって
人間ドラマはシリーズで
一番繊細だったかな…個人的に
神様なんだけど
一番人間味のある神様
…後半ロボットってことが明かされますけど笑
ただせっかくだから
もっと映像美の方を強めにしてほしかったかな…
(ロケシーン全部マジックアワーの時に
撮影したと言ってました)
まぁあれ以上長くシーン撮ると
スタジオ側からも観客側からも怒られそうやけど
でもあれがちょうどいいのか
(人間ドラマ面では
ブラック・ウィドウもちょっと泣きそうになりましたよ
良かったあれも)
あとそのさらに
7000年前とかも描くので、
メソポタミア文明とかバビロン文明、
都市伝説好きにはすごい良かった
(まぁせっかくなら
都市伝説好きとしては
ギョベクリ・テペにも触れてほしかったけどね笑
知的好奇心満載で笑)
いろんな意味で感情ごちゃまぜですよ
サイズ感も実写版グレンラガンやし笑
アメコミ映画でやれることも
ここまで来たのかってなりました笑
ただ所々欠けてる部分もあったので
個人的大満足にはあと一歩って所でしたかね…
それはまぁしゃあない
やってることは傑作級ですけど(総合的に)
いろんな意味であと一歩って所が
何箇所もあったのはもう心がゆいです笑
シャンチー面白かったですよ
(アクション最高だったというのもあって
特に前半です!
ただ後半CG粗いのが目立ったかな…うん
そこはちょっと不満足だった
だけど総合的に考えて個人的大満足)
今回のエターナルズも
シャンチーと同じくらい異色作でした
(偏見ぶっ飛ばせってエネルギーが双方強い)
シャンチーでCG 映像面で不満足の部分を
エターナルズで補えたと考えればまぁね笑
逆にエターナルズで映像的に
あとストーリー部分で不満で
そこをシャンチーで補える人もいると思うし
今回は
総合的に最高なんだけど
総合的に不満足という笑
総合的に最高なら
これはもう満足でいいんやないか?
いやでも勿体無いよな…
そうそこなんだよ…
よく156分でまとめた素晴らしい
よしじゃあ今度は未公開シーン入れた
エクステンデッド版作ってくれ…
もうちょい説明付け足したverの
(僕みたいな人しか需要ありません)
まぁでもそのぐらい今回のドラマシーン良かったです
ここまで来るともっと見たくなりました笑
3時間Ver全然観れます笑
かなりの長文失礼しましたm(_ _)m
追記
ザ・スーサイド・スクワッドでは
感情爆発して涙ボロッボロ出たんですけど
今回そこまで行けなかったので
(※個人的には涙ボロッボロ出ましたあれで…)
質は良いけど 音楽 演出面でもあと一歩って所でした…
感情爆発できる要素あったと思います笑
コメントいただき、ありがとうございます。
満足された方のご意見も拝見できて、大変参考になりました。
いただいたコメントで気付いたことがいくつかあって、まず神話的な物語であるという点が、MCUでは異色だったんですね。
よくDCコミックは神話的、マーベルコミックは社会的と言われますが、マーベルでDC的な題材を扱ったのが、本作のチャレンジだったのかなと。
スーパーマンネタに結構しつこく言及していたのも、そのチャレンジが意識的なものだったことの証左だと思います。
あと、グレンラガンというご指摘もその通りですね。
戦いはエヴァみたいに終わるんですけど、その後にセレスティアルズが地球の近くにやってきて、
あまりにでかい図体なので世界中からその姿が観測されるという図は、グレンラガン最終回そのまんまでしたね。
この監督が古今東西のコンテンツにとにかく精通しており、
アカデミー賞をとれる手腕でそれを豪快に料理した作品ということはよく理解できました。
エターナルズに限らずですが、アベンジャーズ以降の作品は他作品とのクロスオーバーありきで作られてるから、単独作品としての際立ちが薄い気がしますよね。
結局アベンジャーズのスピンオフのような立ち位置になってる感じで、1つのキャラクターをあまり深く描かなくなってる気がします。
あと、スターウォーズもそうでしたけど、ディズニー傘下に入っちゃったのも面白くなくなった要因かも
シェアードユニバースものの弱みですよね。単独作品をきっちり作り込むということはしないという。
未消化の部分が残っていても、続編でやるという空気感さえ出していればお咎めなしですからね。
こんにちは、今日エターナルズを見てこちらのレビューに辿り着きました
自分も、登場人物が過剰に出てきて、初めて聞く用語が立て続けに説明されるのにはゲンナリしました
エターナルズから見て人類は救うべきという判断基準も、7000年間ずっと見てきてからという数字でしか語られてないような感じがして、そこの不満も共感できました
ただ一個擁護するとすれば、戦争は兵器やら医療技術を促進するので、エターナルズは人類の知性を育てるという意味で、戦争に介入すべきではないという説明が一応映画にはありました
この記事では「筋が通らない」とされていましたが、個人的にはそこまで不自然に感じませんでした
まぁどっちにせよ他作品との繋がりが希薄だった事もあって、MCUの中で1番つまらなく感じましたね
確かに、戦争は科学や医療技術を発達させると言うセリフがありましたね。
私は聞き流していましたが、重要な理由付けだったと思います。
教えていただいて、ありがとうございます。