スパイダーマン_前半最高、後半残念【7点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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マーベルコミック
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(2002年 アメリカ)
ヒーローのオリジンストーリーとしては破格の完成度を誇っています。これ以上の第一話って他に存在しないんじゃないでしょうか。ただし後半部分が月並みなものとなっていくので、全編を通して傑作ではありませんでしたが。

感想

前半は明晰で無駄がない

気弱ないじめられっ子がヒーローになるという皆さんご存じのお話を、実にてきぱきと片づけていく前半部分の構成は実に秀逸でした。

スクールバスや社会科見学といった集団行動を見せることで、主人公ピーター・パーカー(トビー・マグワイア)がどういう立ち位置の生徒なのかを即座に理解させ、開始後10分の時点でスーパースパイダーに嚙まれるという早業を披露。

トビー・マグワイアの一目でわかるのび太ぶりも素晴らしく、製作開始前にはレオナルド・ディカプリオやジュード・ロウの名前も取り沙汰されていたのですが、作品を見れば、それらスター俳優の出番はなかったことは一目瞭然です。

また敵となるグリーンゴブリンも開始後20分で誕生し、まったく無駄がありません。

そしてスーパースパイダーに噛まれた後のピーターがスパイダーマンになるまでの過程もドラマチックかつスピーディ。

手にしたスーパーパワーを使っていっちょ小遣い稼ぎをしようと考えたピーターは、プロレスの賭け試合に参加。

そこでさらに能力を開花させるのですが、悪徳興行主から賞金を取り損ねた腹いせに強盗を見逃したところ、その強盗がベンおじさんを殺してしまいます。

犯罪を見過ごしてはならない、それを止める力を持つ人間は特に、という教訓はここで強く刻み込まれ、その後のメイおばさんとの短いやり取りで、ピーターの運命は決定します。

ここにクライム・ファイターとしてのスパイダーマンが誕生するのですが、すべての構成要素がひとつのドラマを語るために機能しているという無駄のなさには改めて驚かされました。

ヒーローやヴィランのオリジンに長大な時間を要する最近の映画にこそ、この早業は見習ってほしいものです。

スパイダーマンの視覚を作り上げた功績は大

かくして本格的に活動を開始したスパイダーマンですが、摩天楼を縦横無尽に移動するビジュアルは圧巻の一言。

摩天楼の高度を体感させるかの如くカメラワークは激しく上下に動き、眼前でみるみる視界が開けていくような視覚的快感は相当なものでした。

二次元の住人だったスパイダーマンをいかにして奥行きのある世界で表現するのかという課題に対し、本作はほぼ完ぺきな回答を出しており、直近の作品にまで本作の発明は継承されています。

例えば『バットマン フォーエヴァー』(1995年)でも、摩天楼をダイブするヒーローの視覚化は試みられたものの、その出来は本作の足元に及ぶものではありませんでした。

それほど本作のビジュアルは革新的だったということです。

後半は地味で盛り上がらない

そんなわけで前半部分の完成度には凄まじいものがあったのですが、グリーンゴブリンとの戦いが本格化する後半部分はイマイチでした。

真っ昼間の摩天楼を駆け抜けるビジュアルと比較すると、主に夜間が舞台となる後半部分は視覚的インパクトが今一つだし、着ぐるみ同士の殴り合いでは安っぽさが出てしまいます。

またパワー描写にも一貫性がなくて、格闘場面では全力で殴ったところで壁や柱を破壊する程度がせいぜいだったのに、別の場面では大勢の乗ったケーブルカーを片手で支えるという猛烈な腕力を見せます。

こうしたパワー描写の不備は、戦いの緊張感を削ぐ要因となっています。

加えて、スパイディを捕らえながらもマスクを剥ぐことはしないグリーンゴブリンという、漫画の世界のお約束を3次元に持ち込んだことも、活劇面でのマイナスと出ていました。

≪スパイダーマン シリーズ≫
スパイダーマン_前半最高、後半残念【7点/10点満点中】
スパイダーマン2_良質な青春ドラマ【8点/10点満点中】
スパイダーマン3_豪快に破綻した最終章【4点/10点満点中】
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スパイダーマン:ホームカミング_バルチャーだけが良かった【5点/10点満点中】
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スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム_面白いけど微妙な部分も【7点/10点満点中】

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