TENET テネット_ちっちゃい事は気にするな【7点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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(2020年 アメリカ)
ノーラン作品でも最強クラスの難解作品だが、骨子の部分はシンプルなので、細かいことを気にせずザックリと捉えるという鑑賞スタイルが最も正しいのだろう。何も考えずに見ればド派手なアクションにも夢中になれる。

感想

難解映画だが基本的な話は単純

劇場公開時に見て、Netflixで見て、そしてセル版Blu-rayも購入してと、実は何度も見ている作品なのだが、いまだに細かいことはサッパリわからない。本作と比べれば『インセプション』(2010年)すら平易と言えるほどのレベルである。

ただし何度も見ていればわかってくることもあって、基本的なストーリー自体は恐ろしく単純だ。

地球上のすべての生物を死滅させるアルゴリズムという超兵器があって、破滅を防ぐべくTENETと呼ばれる謎の諜報機関が動いており、彼らは武器商人からアルゴリズムを奪い取ろうとしている。

007、特に『007は二度死ぬ』(1967年)や『ムーンレイカー』(1979年)といった荒唐無稽なものをモチーフにした話だと思われるのだが、硬派な演出と訳の分からないプロットの積み重ねによって、観客からバカにされないものを作ったというのが、本作の本質だと思う。

商業デビュー作『メメント』(2001年)もそうだったが、本来はシンプルな話を、見せ方の工夫で観客に見慣れないものだと錯覚させるのがクリストファー・ノーランの真骨頂である。

そしてスパイ映画へのこだわりもまたノーランの特徴であり、代表作『インセプション』(2010年)にしても夢を舞台にした大SFという前提はあくまでストーリーテリングの便宜上のものであり、本質はアクションのコラージュをやりたいだけだった。

そう考えると、本作はいかにもノーランらしい作品だと言える。

細かい部分の把握は本当に困難だし、原理がよくわからないものも多い。

銃口に戻ってくる弾丸の構造や、時間を逆行させる回転扉などはどうなってんだかサッパリだが、序盤に登場する科学者(フィアナ・ドゥーリフ)が「考えるな、感じろ」と言っているのだから、ノーラン自身も細かい設定を詰め切れていないのだろう。

設定を詰め切れていないのだから、どれだけ考えても腑に落ちることはない。

「ちっちゃい事は気にするな」(©ゆってぃ)という姿勢こそが、本作の正しい鑑賞スタイルなのだろうと思う。

wikiの該当ページにかなり詳細にストーリーが記載されているので、どうしても気になる方はそちらをご覧になればいいと思う。

主人公自身も何をやってるんだかわかっていない

もう一つ本作を難解にしているのは、主人公自身も自分が何をしているのだかわかっていないという点である。これもまた『メメント』(2001年)と共通した構造だと言える。

どうやらTENETは未来から時間を逆行してきているチームと、現在から未来へと時間を順行しているチームの二班体制のようで、ジョン・デヴィッド・ワシントン扮する主人公は順行チームに所属している。

そして劇中で何度も繰り返されるが、結果を知っている未来人に対抗すべく、TENETは無知であることを武器にしており、時間を順行しているチームには作戦の全体像が伝えられていない。

よって主人公の動きはかなり場当たり的で、それを逆行チームが本人にもわからないよう巧みにサポートしてあるべき方向へと導いているという関係性なので、主人公目線だと何の話だかサッパリ分からんというわけである。

よくよく考えてみると、主人公はアルゴリズム強奪よりも、キャット(エマニュエル・デビッキ)のために動いている場面の方が多い。

フリーポートに輸送機をぶつけるという前半の見せ場にはアルゴリズムが全く関係なく、彼女のためにゴヤの贋作を盗み出すことが主目的である。

また中盤の大カーチェイスにて、プルトニウム241(アルゴリズムの構成パーツのひとつ)の強奪にいったんは成功するものの、キャットを人質に取られると主人公はアッサリとブツを敵に引き渡してしまう。

こんな具合で話が進んでいくので、「何がしたいんだコラ!」と長州力ばりに言いたくもなってくるんだけど、ギリギリのところで観客の関心を引き留めているのがロバート・パティンソン扮するニールの存在である。

こいつがとにかく爽やかで格好よく、最後の最後まで献身的な姿勢を崩さないので好感度マックス。

そういえば、ニールはキャットの息子マックスではないかという説があるらしいが、ちっちゃい事を気にせずに見た私にはその点がどうだか分からなかった。次の鑑賞ではニールにもより注目したいと思う。

やけっぱちな未来人

あと本作を分かりづらくしているのが、この戦いの背景にいる未来人が、結構ダイナミックな理論で攻めてきているという点である。

何世代後かの地球はかなりのダメージを受けており、後先のないところにまで追い込まれているらしい。

後先がないとすれば過去に戻るしかない。そこで未来人は時間を逆行させる装置を作ったのだが、当然のことながら過去には先祖たちが住んでいるので生存領域が重なってしまう。

未来人と現代人が重なったところで第三次世界大戦が勃発するのだが、これに勝利すべく未来人が開発したのが例の装置アルゴリズムというわけだ。

これを発動させると巡行する時間軸にいる生き物がすべて死滅し、時間を逆行している未来人が居住可能な地球ができあがるらしい。

なんだけど、彼らが持っているのはタイムマシーンではなく時間逆行装置なので、未来人自らが過去に戻ってアルゴリズムを起動させることができない。そこで危険な武器商人セイター(ケネス・ブラナー)に未来からお手紙を送り、巨万の富を与えることと引き換えにアルゴリズムの起動をさせようというわけである。

ここで疑問なのが、先祖を殺すと未来人がそもそも生まれてこないのではないかってことだが、彼らは「多分大丈夫だろう」という豪快な割り切りの元で本件を進めている。

緻密に見えて核心部分が結構アバウトなのが、本作の理解を難しくしている原因である。

余談であるが、時間逆行装置やアルゴリズムを開発した未来人は、『インターステラー』(2014年)の世界の住人であると私は脳内変換して見ている。

マシュー・マコノヒーが新天地を探しに出て行ったっきり音信不通となった数十年間で、地上に残された人類は過去への侵攻を決意したのではないかと。

両作にマイケル・ケインが出ていることはどうすんだという問題はあるが、ちっちゃい事は気にせずに見るのが本作の作法である。

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コメント

  1. 匿名 より:

    これと比べると初見でも話についていけたインセプションって凄い作品だったなとしみじみ思います。
    余計なドラマを省いてやりたいことを詰め込むための思い切った主人公のキャラ造形にはもはや感心するしかありませんでした。
    インターステラーの外伝説は面白いですね。