オートマタ【5点/10点満点中_テーマは良いが内容は雑】(ネタバレあり・感想・解説)

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5点/10点満点中

物凄く素晴らしい部分もあるのに、一方で雑な部分も多く、なんだか歪な映画だなぁという印象でした。

優秀なディストピアSF

全般的な世界観は素晴らしく、いよいよ人類の時代にも終焉の時が来たという絶望的な空気感が醸成されています。ディストピアSFとしてなかなか優秀であり、中規模予算でよくぞここまで世界観を作りこめたものだと感心しました。

ロボットの造形も素晴らしく、彼らはノロい動きに弱々しい表情で哀愁溢れる姿をしており、人類から虐待を受ける度に憐憫の情を禁じ得ないのですが、マスクを外すとこれが意外と武骨な顔をしており、人類に見せる顔と彼ら本来の個性には二面性があるという点がうまく視覚化されています。また、物語の中盤にて明かされるロボット・プロトコルの正体も興味深く、人工知能に対する考察にもエッジが立っています。

シンギュラリティがテーマ

人類側はロボットとの関係を対立構造で捉えており、「ロボットの繁栄は人類の衰退を意味するから何とかしなきゃ!」と焦っているのに対して、ロボットは「人類は種族としての寿命は尽きてるんだし、こっちゃ争うつもりなんかありませんよ」くらいにしか考えていません。ロボット達は人類からさんざんな虐待を受けて来たにも関わらず恨みなどは抱いておらず、それどころか「人類が滅んだ後も、我々はみなさんを創造主として敬い続けますよ」なんてことをサラっと言ってのけるわけです。

時代の必然として衰退する者と躍進する者の格の違いみたいなものが描かれており、シンギュラリティだの2045年問題だのと言われているこのご時世では、意外とありうる未来像ではないかと背筋が冷たくなりました。本作は『ブレードランナー』との類似性をよく指摘されますが、人工知能に対する考察という点ではブレードランナーよりも二歩も三歩も先に踏み込めていると思います。

雑なストーリーテリング

ただし、ストーリーテリングが物凄く雑だという点は気になりました。前述した通りロボット・プロトコルの正体は実に魅力的ではあるものの、これが唐突にセリフで説明されるためにサラっと流れてしまう点が残念でした。物語の核心部分にこのミステリーを据えた方が全体のまとまりがよくなったのではないかと思います。
人間側のドラマに至っては、これがまったくうまくいっていません。

主人公の心情描写が表層的

主人公が抱くかつての大自然へのノスタルジーは表層的で、彼が都会から離れたがる心境がうまく伝わってきません。また、主人公の奥さんの妊娠・出産がロボットの増殖と対になっているものの、この奥さんの心情がまるで表現できていないためにほとんど存在意義を示せていないし、主人公自身も「子供が生まれる」「愛する家族の元に戻りたい」などの人間的な感情をほとんど示せていないために、ロボットとの対比がほぼ成り立っていません。
そもそも初産を控えた父親役に50代のアントニオ・バンデラスはミスキャストであり、もっと若い俳優を配置すべきだったと思います。

企業側の行動原理が不明確

企業側については、その行動原理すら整理できていません。人工知能の進化を防ぎ、人類の優位性を維持するための唯一の安全装置はロボット・プロトコルであるが、当該プロトコルは人類を超える知能を持つに至った初代ロボットに作らせた代物であり、実は人類がその構造を理解できていないという危険極まりない安全装置だった。

企業側の行動原理は、そんなインチキを隠蔽するために秘密を知った者を葬ることだったのか、それとも全人類的な視点に立って人工知能の進化を止めることだったのかが定かではないため、終盤の銃撃戦にはかなり唐突感がありました。ミレニアムフィルムズの悲しい性か、めちゃくちゃ高尚に始まった話なのに、最後はB級になっちゃうんですよね。これは残念でした。

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