ストレンジ・デイズ/1999年12月31日_長くてつまらない【4点/10点満点中】(ネタバレあり感想)

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(1995年 アメリカ)
他人の五感を体験できるスクイッドと呼ばれる闇ソフトを売買する主人公・レニーが、写っちゃいけないものが写ったディスクを入手したことからヤバイ話に首を突っ込んでいくというSFサスペンス。

キャスリン・ビグロー監督×ジェームズ・キャメロン製作・脚本

最近、『アリータ:バトル・エンジェル』を観たのですが、作品には常に全力投球で取り組み、自分の書いた脚本は自分で監督する主義のキャメロンが、心血注いできた『バトル・エンジェル(元のタイトル)』の脚本を友人のロバート・ロドリゲスに監督させたことはとても意外に感じました。

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『バトル・エンジェル』以前でキャメロンによる脚本を他人が監督したのはたったの2例。本作『ストレンジ・デイズ』と『ランボー/怒りの脱出』のみです。うち『ランボー/怒りの脱出』は『ターミネーター』の撮影が一時的に止まって収入がなかった頃のキャメロンがアルバイトで引き受けた完全なる雇われ仕事だったので、ここでは例外ですね。そう考えると、本作は唯一の先行事例だと言えます。

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監督を務めたのは1991年までキャメロンと婚姻状態にあったキャスリン・ビグロー。本作のプロダクションは1994年に行われたので、別れた夫婦で作り上げた映画だったということであり、ビグローとキャメロンの神経をちょっと疑いました。

ビグローの映像センスが炸裂する冒頭の凄さ

本作の見せ場はいきなり冒頭でやってきます。スクイッドとは何かを観客に対して説明するために、今でいうPOVスタイルの映像が冒頭の数分間続くのですが、この場面の尋常ではない臨場感は現在でも通用するレベルであり、ビグローの映像センスはここで炸裂します。

キャメロンが自分自身で監督しなかったのは、これをやれるのは自分ではなくビグローであると考えたためなのかとも思いました。

複雑すぎる割に面白みのない話

ただし、この冒頭が終わると作品は一気に精彩を失います。前半の1時間は舞台となる社会や登場人物の説明に使われるために話がほとんど動かないし、それほど大勢が関わる複雑な話でありながら、後半で明かされる真相に面白みがないために肩透かしもありました。

※ここからネタバレします。

無駄に複雑な話

一見すると無関係なふたつの事件が実は関連していたというサスペンス映画の王道パターンを本作も踏襲しています。娼婦のアイリスが猟奇的な殺され方をした事件と、人種問題を過激に訴えてきたカリスマ的な黒人ラッパーが何者かに射殺された事件が一つに繋がっていくのですが、この二つの事件の繋がりが分かったような分からないような微妙なものだったので、なぜこんなに複雑にしたんだろうかという気になりました。

アイリスは黒人ラッパーが射殺された現場におり、しかも書き込み用のスクイッドを身に付けていたことから、図らずも事件現場の記録を持ってしまったがために口封じに殺されたのですが、彼女を殺したのは口封じの直接的な動機を持った黒人ラッパーの射殺犯ではないんですよね。彼女の雇い主である音楽プロデューサーのボディガードの男が彼女を殺したのですが、この理由があまりに間接的すぎて、直感的に分かりづらくなっています。そこは、射殺犯に口封じされたという話にしてしまえばよかったのに。

面白みのない真相と面白みのない語り口

黒人ラッパー射殺の真相はというと、人種差別的な白人警官が職質した黒人ラッパーから煽られて頭にきたことから、つい撃ってしまったというしょうもないものでした。音楽業界や闇社会をも巻き込むような壮大な陰謀っぽく始まったものの、たったそれだけの話だったのかと落胆させられました。

また、ビジュアル偏重の映画であるにも関わらず、謎解きは基本セリフで行われるために、話が進み始めると画面がピタっと止まるという珍現象も起こっています。主人公から「お前だろ」と名指しされた犯人が長々と真相を話してくれる低レベルのサスペンスというものを久しぶりに見ました。

主人公を取り巻く三角関係

そんな感じでグダグダな本編ですが、随分前に離れていった元カノのフェイスをいまだに想い続ける主人公レニーと、そんなレニーを想うメイスの三角関係にはなかなかグっとくるものがありました。

「あの子はあんたを愛していない。使い古しの愛情にすがるのはもうやめにしたらどう?」と言うメイスに対して、「いくら愛しても相手が振り向いてくれなかったことはある?だからってそいつを愛するのをやめないだろ?命がけで守ろうと思うだろ?」と切り返すレニー。

このフェイスに対するレニーの感情は、まんまレニーに対するメイスの感情でもあり、レニーがフェイスのために命をかけるなら、私はそんなレニーのために命をかけるわよという熱くて切ない決意をメイスに抱かせるのです。このやりとりには胸が苦しくなりました。

ただし、この後のホテル潜入シーンにて、レニーに対してメイスが「あなたが好きよ」とはっきり言っちゃうんですよ。これが完全に蛇足でした。レニーに気付いてもらえなくてもメイスはレニーを愛していて、彼のためなら地獄の底にでも付き合うという関係性こそが良かったのに、こうはっきり言ってしまうと切ない自己犠牲の物語ではなくなってしまいます。

日本国内では鑑賞困難な映画のようです

1999年に発売されたDVDを最後に日本国内では廃盤状態が長期に渡って続いており、現在では中古商品に1万円弱の値段が付いています。おまけにDVDレンタルもされていないので鑑賞困難な作品となっているのですが、私はここまで価格が高騰する前に、ブックオフの中古コーナーにて500円で本作のDVDを購入していました。買った時の俺、グッジョブ!という感じですが、肝心の映画は繰り返し見るほど素晴らしい内容でもなかったように思います。

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