ターミネーター0_審判の日inジャパン【7点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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キャラもの
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(2024年 アメリカ・日本)
ターミネーターシリーズの伝統を引き継ぎつつも、かなり大胆なアレンジも加わった初のアニメシリーズ。大胆過ぎるゆえにバランスが崩れてしまっている部分も多々あるが、シリーズのファンなら十分に見る価値がある。

感想(ネタバレなし)

ターミネーターはオワコン

これは映画ファンの共通認識だろう。

『3』以降のグダグダ加減(私個人は『3』を大いに評価しているが、あくまで一般論として)、毎回毎回リブートをぶち上げてはことごとく失敗し、「この前のあれはなかったことで」で何度仕切り直したことか。

2019年にはシリーズ生みの親であるジェームズ・キャメロン自らが脚本を書いた『ターミネーター:ニュー・フェイト』が公開されたが、これまたイマイチだった。

キャメロンがやってもダメなら、もう誰がやってもダメだろう。

そんな折にネットフリックスが製作を発表したのが、まさかまさかのアニメ版ターミネーター。しかも製作は日本のProduction I.G。

どうなることかはサッパリ予測できなかったが、少なくとも「面白そう!」と思った人は皆無だったろう。

私自身もまったく期待はなかったのだが、2024年8月より全国の劇場で行われた『ターミネーター2』(1991年)のリバイバル上映で、にわかにターミネーター熱が再燃。

その流れで8月29日より配信が開始された本作も鑑賞した。実に良いタイミングでイベントをぶっこんでくるものである。

なお8月29日とは、劇中で全面核戦争が起こる「審判の日」の日付である。

AIエンジニア マルコ厶一家を標的とするターミネーターと、彼らの保護を目的とする戦士エイコが、核戦争後の未来から1997年8月の東京に送り込まれるというのが、ざっくりとしたあらすじ。

理由は不明だがマルコムは審判の日の到来を知っており、その阻止をすべく、スカイネットに対抗する人工知能”ココロ”を開発中である。これがマルコムの狙われた理由。

未来から全裸でやってくる戦士たち、エンジン直結での車盗難、警察署襲撃、「死にたくなければついてこい」等、シリーズのお決まりは踏襲されているのだが、舞台は東京で、秋葉原や日本橋などよく知っているスポットが続々登場するので、都民としてはテンションが上がった。

登場するパトカーが江東ナンバーだったことから、今回の警察署襲撃が行われたのは江東区だと思われる。江東区住みの私としては、我が区にターミネーターが来てくださったことにも大興奮だった。

些細な指摘をすると、江東ナンバーが使われるようになったのは2020年からで、それ以前は足立ナンバーだったんだけどね。まぁ現実とは一線を画すSF設定なのでいいか。

SF設定と言えば、この世界線は我々が知っている1997年とはやや違う。AI技術やロボティクスは現実よりも進んでおり、街ではレイバーロボが働いている。この辺りはアレックス・プロヤス監督の『アイ,ロボット』(2003年)っぽかったね。

全8話の前半部分は、お馴染みのターミネーターvs戦士の追っかけで紡がれるんだけど、後半に差し掛かったあたりから独自路線が始まる。

注意!ここからはネタバレ全開で書きますよ

1997年8月29日、シリーズでお馴染み審判の日当日である。

海の向こうL.A.では式次第通りにスカイネットが自我に目覚め、ロシアに向けて核ミサイルを発射するのだが、東京のA.I.ココロが開発者マルコムの思いに応え、核攻撃をすんでのところで止める。

ただしココロはココロで「人間って下世話な生き物ですね」ということに気づき、街に溢れるレイバーロボを操って人類の支配を試みる。いよいよ『アイ,ロボット』っぽくなってきましたな

そしてマルコム家で異様に従順だった家政婦のミサキさんもロボットだったことが判明。

かくして、スカイネットの意を汲んだターミネーター vs ココロに操られるレイバーロボ軍団 vs 家政婦ロボ ミサキさんという三すくみの構図が出現する。

この辺りからSFとしての深彫りに入っていくのだが、シリーズで大事にされてきた直感的な面白さは、実はかなり犠牲にされている。

そこそこ集中して見ていないと、誰が何のために戦っているのかを見失ってしまうのだ。

また”ココロ”が自我に目覚める過程での禅問答がやたら長くて退屈なことにも参ってしまった。

人間の暴力性を批判するA.I.ってSF映画で何十回も見てきた構図なので、今さら丹念に描く必要もないだろうと思ったりで。

そしてマルコムとミサキの意外な正体も暴かれて、物語はより混沌としてくる。

なぜマルコムが審判の日を知ってたのかというと、彼自身も未来人だからだ。

未来世界において、マルコムは人類に友好的な人工知能を開発することでスカイネットに対抗しようと考えていた。

その際に開発したのがミサキだったのだが、人工知能に酷い目に遭わされ続けてきた当時の人たちにマルコムのプランが理解されるはずもなく、危うくミサキを破壊されそうになったので、二人はタイムマシンを使って1983年の東京に逃げ込んで1997年現在に至るというわけ。

さらには、未来戦士エイコはマルコムの母親だったとか、マルコムの息子ケンタは未来世界でスカイネットとの和平を結ぶこととなる重要人物であり、今回のターミネーターはココロの開発阻止と併せてケンタ保護も命じられていたとか(すなわち今度のターミネーターは『T1』『T2』両方の性質を帯びているのだ!)、矢継ぎ早に設定がぶち込まれてくるので私は軽くパニックになった。

特にエイコがマルコムの母親だったという話のタイムラインはいまだによく分かっていないので、誰か図に書いて説明してほしい。

兎にも角にも驚天動地の設定がいくつもぶち込まれた想定外の力作であり、いろいろやりすぎて娯楽作としてのバランスは壊れ気味だけど、見る価値のある作品であることには違いない。

私は十分に楽しめたし、可能であれば続編を作って、今回掘り下げが足らなかったエイコ周り、ケンタ周りの話をフォローしてほしい。

時系列をまとめてみた

一巡目【1997年】審判の日。スカイネットが人類に宣戦布告し戦争勃発
【2025年】エイコ、戦時下でマルコムを出産
【2045年】マルコム、ミサキを開発して1983年にタイムスリップ
二巡目【1983年】マルコムとミサキ、ココロを開発するため東京にやってくる
【1997年】ココロが稼働してスカイネットを止める(が、その後なんやかんやで戦争は起こる)
【2022年】どういうわけだが事情を知っている預言者の指示で、スカイネットの敵対者となるココロ開発を妨害されないよう、エイコが1997年に送り込まれる
【年代不詳】マルコムの息子ケンタがスカイネットとの和平締結。スカイネットとケンタを守るため、ターミネーターが1997年に送り込まれる
三巡目
(今回の物語)
【1997年】ターミネーターとエイコが東京にやってきて、ココロとマルコム一家を巡る攻防戦を繰り広げる

こうして整理してみると、スカイネットサイド(ターミネーター・ケンタ)vsココロサイド(マルコム・エイコ・ミサキ)の対立軸が置かれた壮大なサーガの幕開けのような気がしてきた。

『T3』にて、少年期に命を救われたことで、成人後もジョン・コナーはターミネーターに愛着を覚えていたという設定が付加されていたが、後々、ケンタも似たようなことになっていくのでは?

すなわち、機械への憎悪のみではないことで両者の関係を次の段階へと押し上げる新たなタイプのリーダーとなるのだが、そのことが別の軋轢も生み出すという。

第5話で預言者が言っていた「タイムトラベルによって別の時系列が誕生する」という話は実はダミーで、一つの時系列がタイムトラベルでどんどん上書きされていくという従前通りの設定が置かれているような気がしてならない。

1997年の戦いでエイコは右手を潰されるのだが、マルコムの幼少期の記憶の時点で母エイコの手はすでにロボットアームになっていたので、時間がループしているとしか考えられないのが、その理由。

そしてこの預言者、チョイ役っぽいが実はキーパーソンじゃない?

私の推測では三巡目の時系列を生きる老エイコと、二巡目の時系列を生きる若エイコの対話だったんじゃないかと思うけど、いかがだろう?

ともかくいろんな伏線が張り巡らされている作品なので、好評であれば続編が製作されるはず。

『センス8』を滅茶苦茶いいところで打ち切るなど、シーズン更新においては非常にシビアな判断を下すことで定評のあるNetflixさんだが、このシリーズは最後まで続けて欲しい。

≪ターミネーターシリーズ≫
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