ゴジラ-1.0_ドラマがかったる過ぎ【5点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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キャラもの
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(2023年 日本)
市井の人々にスポットを当てたゴジラという、ありそうでなかったアプローチは新鮮だったものの、日本映画特有のもっさり感や、俳優たちのねちっこい演技のせいで、上映時間以上に退屈させられた。なおタイトルは「ゴジラマイナスワン」と読む。

感想

初日にIMAXにて鑑賞。

怪獣映画を初日に、しかもIMAX料金を払ってまで鑑賞する層とくればある程度コアな客層で、場内は中年以上のおじさんだらけだったが、私の隣の席はデートでもなく一人で来ている若い女性だった。

一人で怪獣映画を見に来る女性なんて最高じゃねぇか!こういう人と若い頃に出会いたかった!お願いドラえもん!とか思ってるうちに上映開始。

ちなみに私は子供の頃に怪獣ファンだったので、昭和から平成VSシリーズまでは全部見たことがある。

それがミレニアムシリーズに入ると、「とっとこハム太郎」との同時上映等の配給側の戦略ミスもあって見る気を失い、『シン・ゴジラ』(2016年)まではゴジラに対する興味を失っていた。

そんな中途半端なゴジラファンだが、昭和のどうしようもないやつ(エビラのやつとか…)にも一応は目を通しているので、過去作品を過度に神聖化して「これはゴジラじゃない!」と騒いだりする気は毛頭ない。

で、本作の評価だけど、ゴジラの出る作品としてはハイレベル、映画としては赤点だったと思う。

まずゴジラの暴れ方は絶品。

怪獣は怖くてカッコいいし、破壊のカタルシスも存分に味わえる。

ゴジラが電車を咥える、銀座の建物を破壊するといった1954年版の見せ場を被災者目線で再構築したことで、怪獣というのはシャレにならん脅威であることを再認識させられた。この着眼点は素晴らしい。

浜辺美波が『ミッション:インポッシブル』ばりのアクションを決めたり、神木隆之介が逃げ惑う群衆の中から浜辺美波をピンポイントで発見したりと、さすがにどうかと思う描写もあるにはあったけど、前後できっちりハラハラさせられたのだから結果オーライだろう。

また有名なテーマ曲が流れるタイミングも完璧で、ゴジラ映画というものを知り尽くした人たちが撮ってるんだなぁということが見る側にも伝わってきた。

が、ドラマパートの出来が芳しくない。

ゴジラ対策に奔走する官僚たちが主人公だった『シン・ゴジラ』(2016年)の後ということもあり、本作はそれとは対照的に市井の人々にスポットが当てられている。

主人公 敷島浩一(神木隆之介)は太平洋戦争の復員兵で、戦後のどさくさで知り合った典子(浜辺美波)と、その連れ子 明子とのつつましい生活を送っている。

ゴジラ災害の被災者視点のドラマって、これまでありそうでなかったので、このアプローチ自体は良かったんだけど、問題はドラマの中身が全然面白くないということだ。

まず主演二人の朝ドラ感が凄い。直近の朝ドラとキャスティングが被ってしまうと、どうしてもそのイメージに引きずられてしまうのだし、意識して別のカップルを作るべきだったと思う。

またドラマの中身は結構いい加減。

特にひどいのが浜辺美波扮する典子の方で、彼女の個性はイマイチよく分からない。

敷島との出会いの場面では、闇市で何かを盗んで男たちに追われているところで、この時点では蓮っ葉な印象。彼女はその印象のまま、敷島の家に上がり込んで勝手に居候生活を開始する。

続く場面は数か月後なのだが、ここでは突如キャラ変して貞淑な女性となっており、敷島に対しても敬語で接するようになっている。この間に彼女に何が起こったのかは、特に説明されない。

さらに数か月後には「浩一さんにばかり頼っていられない」とか言って事務職として銀座に出て働きに始める。この段になると、登場時点での「生き延びるためなら盗みだって何だってやる」という人物像は微塵も残っていない。

彼女と比べると、戦場での仲間たちの死というトラウマを引きずる主人公 敷島のドラマにはまだ首尾一貫性があるのだが、それでも部分部分はおかしい。

現在の敷島は機雷除去の職に就いており、その絡みで政府からの特命を受け、外洋にてゴジラと遭遇。

彼らは何とか生き延びたが、パニックを心配する政府は、やがて本州に上陸するかもしれないゴジラの存在を公表しない方針であり、その人命軽視の姿勢に対して敷島たちは大きな疑問を呈する。

次の場面では敷島は家に戻っており、深刻ぶった表情をしていることを典子に心配される。

話の流れから考えて、ゴジラが東京に迫っていることを言うべきかどうか逡巡しているのかと思いきや、「戦時中は特攻隊員をやっていて…」と言い出して自分の心の問題に触れ始めるので、「そっちかい!」とつっこみそうになってしまった。

この通り、本作のドラマはどこかズレている。

その上、日本映画特有のもっさり感で非常に展開が遅いし、演じる俳優たちのねちっこい演技もあって、とにかく体感時間が長かった。

特に酷かったのが終盤の展開で、自衛隊もない時代なので日本政府はゴジラ対策を講じることができず、旧帝国海軍出身者を中心とする民間の有志が立ち上がってゴジラを倒すための最後の作戦に打って出る。

この展開自体は良いのだけど、観客を感動させたいという演出側の意図が見え見えで、ダラダラダラダラとにかく長い。

男気とか決意みたいなものはサラっと見せてくれるからこそ感動するのであって、観客の首根っこ掴んで強制的に泣かせようとする演出をされると、逆に冷める。

山崎努監督はVFXを活用した破壊場面を描く才能はズバ抜けている一方、ドラマ演出はさほどうまくない。

にも関わらず、本作では不得意な方で勝負しようとするものだから、作品全体のバランスが悪くなってしまっている。

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コメント

  1. 匿名 より:

    僕も昨日鑑賞しました。
    山崎監督は人間ドラマの演出能力が乏しいのに、泣かせに来るような映画ばかり撮るのでギクシャク感が半端ない印象です。