ナイト・エージェント_納得感の薄いポリティカルスリラー【6点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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エージェント・殺し屋
エージェント・殺し屋

(2023年 アメリカ)
ネットフリックスで話題のドラマだけど、個人的には今一つだった。前半のミステリーは勿体ぶりすぎで、第7話でようやく加速するという立ち上がりの悪さ。また中心にある陰謀がかなり強引で、「目的達成のためにそこまでやる?」と言いたくなるものだったこともマイナスだった。

感想

暇つぶし程度のポリティカルスリラー

マシュー・クワーク著の同名小説が原作で、『ザ・シールド ルール無用の警察バッジ』『ザ・ユニット』など公務員系アクションドラマを得意とするショーン・ライアンが企画・制作総指揮を務めた全10話の連続ドラマ。

2023年3月23日の配信開始日の時点では注目していなかったのだが、英語圏で視聴回数1位を獲得し、早々にシーズン2の製作が決定と、景気の良い話が続いたので、試しに視聴してみた。

金曜夜から日曜夜までで全10話を見終えたのでそれなりに面白かったとは言えるのだが、あくまで「暇つぶし程度なら」というレベルで、他の面白いドラマに比肩するインパクトはなかった。

主人公はFBI捜査官のピーター・サザーランド(ガブリエル・バッソ)。

1年前にワシントンDCで発生した地下鉄爆破テロ事件で被害を最小限に食い止めるなどの活躍を見せたが、爆破犯の逮捕に失敗するなどスッキリしない部分も多い事件であるために英雄扱いを受けられず、現在はホワイトハウスに出向して夜間電話に対応する役職についている。

ホワイトハウス出向とは聞こえこそ良いものの、この電話が緊急対応用なので基本、鳴ることはなく、窓もない狭い個室で電話の前に座っているだけという、左遷サラリーマンのような扱いを受けている。

なのだが、ある晩、鳴らない電話が鳴ったことから、ピーターは巨大な陰謀に立ち向かうことになるというのがこのドラマの骨子。

電話をかけてきたのはローズという女性。元はシリコンバレーでネットワークセキュリティの会社を経営していたのだが、パートナーのミスで大口顧客に大損害を与えてしまったことから会社は倒産。

ローズ個人も経済的に追い込まれており、しばらくは叔母の家で世話になっていたのだが、その家が謎の殺し屋に襲われたことから、叔母に教えられたホワイトハウス直通ダイヤルに電話をかけてきたのである。

これが本作の導入部で、ローズの叔母は政府の仕事をしている人物だったということがわかるんだけど、そんな立場にいる人間が、堅気のローズを長期間家に寝泊まりさせるだろうか。自分の家に近づけると危険に巻き込んでしまうかもしれないので、せいぜい金銭的援助に留めるんじゃなかろうか。

また襲撃当夜の叔母は、2階の客間にいるローズにも聞こえるくらいの声で国家機密について話しているのだが、その不用心さも含めて違和感が凄かった。

ローズが危険に巻き込まれてくれなきゃ話が始まらないとはいえ、導入部はもっとうまくまとめて欲しかった。

現場にやってきたピーターはローズからの絶大な信頼を受けて、しばし彼女の警護を引き受けることになるんだけど、どうやらホワイトハウスに内通者がいるようで、2人は適当な理由をつけて拠点を抜け出し、独自調査を開始する。

その活動が図らずも陰謀の黒幕の痛いところを突いていたことから、殺し屋を送り込まれるわ、犯罪者扱いを受けるわと、どんどん酷いことになっていく。

なんだけど、公権力から逃げ回っている割に二人の逃避行はうまくいきすぎで、相対的に敵がショボく見えてしまっているのはマイナスだった。

また製作費を相当ケチられたのか、目を引くような見せ場が少ないうえに、爆破場面はアサイラムのB級映画ばりに合成丸出しだったりと、見た目の安さもガッカリ感を高めていた。

そんな理由でそんなことする? ※ネタバレあり

兎にも角にもピーターとローズは陰謀の核心部分に迫っていくのだが、その内容とは、1年前の地下鉄爆破テロ事件は、副大統領らが仕組んだものだったということだ。

イスラム過激派組織と繋がっているらしい外国政治家を地下鉄爆破でもろとも葬ろうとしたが、偶然その場に居合わせたピーターの機転で爆破予定地点からそれてしまい、暗殺は失敗に終わった。

事件後にピーターがホワイトハウス付きにされたのも、実行犯の目撃者である彼が捜査活動などを行わないよう、手元に置いて監視することが目的だったのだろう。

そして、ローズの叔母はその真相に辿り着いたので消された。

なんだけど、敵国の要人を暗殺するためとはいえ、自国内で自国民が犠牲になるであろうテロを起こすことが合理的な判断だとは思えない。地下鉄爆破で地上にいるターゲットを殺せるのかという点にも疑問がわいてきたし。

そして1年後にこのグループは再度同じ標的を暗殺しようとしてるんだけど、ローズの叔母に真相を掴まれるような状況で、なおかつ嗅ぎまわっているピーターとローズを片づけられていない中、新たな暗殺ミッションを継続しているという点もおかしい。

そこいらでボロが出まくっているのだから、いったん暗殺ミッションを仕切り直し、ピーター&ローズ対策に専念すべきじゃなかったのだろうか。

あと近年アメリカ文化で顕著なポリコレも悪い意味で効果を発揮しており、「有色人種はなんだかんだで悪い人じゃない」「黒幕は白人の誰か」という観点で犯人の絞り込みができてしまうのもマイナスだった。

ポリコレってエンタメを本当につまらなくしていると思う。こんな風潮、早くなくなればいいのに。

そんなわけで納得感の薄いポリティカルスリラーだったが、なんだかんだで見ている間はそれなりに楽しいので、期待せずに見れば暇つぶし程度には機能してくれる。

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