ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ_ヴィランの無駄遣い【5点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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マーベルコミック
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(2021年 アメリカ)
前作は好きなのですが、本作はダメでした。エディとヴェノムの掛け合いは合間にあるから面白かったのに、これを全面に出し過ぎて胸焼けするレベルになっているし、そこで時間を使いすぎた結果、本来は複雑な個性を持っているはずのヴィランの扱いが超適当になっているし。

感想

エディとヴェノムの掛け合いがしつこすぎ

前作『ヴェノム』(2018年)は実に楽しい映画だったのですが、その成功に大きく貢献していたのは主演のトム・ハーディでした。

スター性は充分なのに寡黙なキャラを演じたり、かと思えば極端にエキセントリックに振れた役を演じたりで、なかなか観客の要望に応えてくれなかったトム・ハーディが、ようやく直球ど真ん中の人懐っこい役を演じてくれたのが前作『ヴェノム』(2018年)であり、トムハの魅力が炸裂していました。

で、続編の本作では前作で受けた要素の拡大再生産が図られており、トムハ演じるエディとヴェノムの掛け合いがメインとなっているのですが、こればっかりだと飽きるということが今回の気付きでした。

シリーズを重ねるごとにメルギブとダニー・グローバーの掛け合いばかりになっていき、まともな捜査をしなくなった『リーサル・ウェポン』シリーズみたいになっていますね。

なお、トムハはメルギブからマックス・ロカタンスキー役を引き継いでいるし、本編中には「リーサル・プロテクター(残虐な庇護者)」という言葉が出てくるし、実は製作陣も『リーサル・ウェポン』を意識していたんでしょうか?

エディとヴェノムが喧嘩別れして、そしてまたくっついて友情を再確認するという話が本作の中心部分をなしているのですが、エディとヴェノムのコミカルな掛け合いも、トムハのとぼけた演技も、ず~っと見せられると飽きますね。あれは合間にやるから面白かったんです。

ヴィランの扱いが限りなく軽い

その割を食ったのがヴィランのカーネイジでした。

カーネイジはコミックでの人気キャラであり、前作ラストより登場が示唆されていたわけですが、それにも拘わらず本作では充分な時間を使ってもらえておらず、消化不良のまま退治されてしまいます。

それは、かつて『スパイダーマン3』(2007年)でヴェノムが受けた扱いのようでした。

カーネイジとなるのは連続殺人犯のクレタス・キャシディであり、現在は死刑囚として収監されています。

このクレタスにはウディ・ハレルソンが配役されており、ハレルソンは嬉々としてこの役を演じているのですが、問題はハレルソンの演技の説得力に頼りすぎているということでした。

クレタスは父親から受けた虐待の影響で歪んだ人格が形成された人物であり、家族を殺した後に入れられた施設でイジメを受けたことで、歪みがより強化されたとのこと。

加えて、唯一の心の拠り所だったシュリーク(ナオミ・ハリス)とも引き離されてしまったという悲劇の過去もあって、語られる背景からは悲劇のモンスターらしきものを感じます。

恐らくは、クレタス自身も好んでやっている部分と、厳しい環境への適応でそうならざるを得なかった部分が半々の、複雑な個性を持つキャラクターだったのだろうと思うのですが、彼にかける時間が余りに少なすぎて、捉えどころのないキャラクターになっています。

演じるハレルソンの代表作『ナチュラル・ボーン・キラーズ』(1994年)から類推されるキャラクター像を参照してねということだったのかもしれないし、ハレルソンも良い演技を見せてくれるのですが、そうはいってもクレタスの基礎情報があまりに未整備なので、このキャラの魅力は伝わってきませんでした。

また、エディと軽く接触した事でシンビオートを体に取り込み、カーネイジになったという変身プロセスもよく分かりませんでした。あの原理で増殖するなら、そこら中シンビオートだらけになるだろうと思うのですが。

あと、シュリークが入れられたミュータント隔離施設みたいなのは何だったんでしょうか。いろいろとスッキリしない作品ですね。

鑑賞後に調べたところ、あそこはレイヴンクロフトといって、DCのアーカム・アサイラムに相当する組織とのこと。ドクター・オクトパスやエレクトロといったスパイダーマンのヴィランが収監されているらしく、今後のソニー・スパイダーマン・ユニバースでの要所となりそうな予感がします。

どこにカーネイジ(大殺戮)があったのか

そして、前作でも指摘されたレーティングに優しい作風は、本作でより強化されています。何せ前作のPG12(12歳未満の年少者には親又は保護者の助言・指導が必要)からG指定(年齢制限なし)に下がってますからね。

その結果、物騒な名前のヴィランが登場するにも拘らず、どこにもカーネイジ(大虐殺)がないという大問題が発生しています。

カーネイジがやったことって、シュリークを助け出すためにレイヴンクロフトを襲撃したことと、エディの元恋人アン(ミシェル・ウィリアムズ)と、かつてシュリークにケガを負わせたマリガン刑事(スティーヴン・グレアム)を拉致したことくらいですからね。

そもそもの目的が25年前に引き離された恋人シュリークと結ばれることなので、全然悪くないし。

そんな感じでヴィランの残虐性が強調されていないので、ラストバトルにもハラハラさせられませんでした。

カーネイジとシュリークの相性の悪さは如何なものか

もう一つラストバトルが盛り上がらなかった原因として、カーネイジとシュリークの特技の喰い合わせの悪さがあります。

2大ヴィランを登場させた以上は、こいつらが協力してヒーローを苦しめることが常套手段。

しかしシュリークの得意技である音波攻撃はヴェノムのみならずカーネイジにとっても弱点であるため、シュリークが技を使えばカーネイジも苦しみ出し、カーネイジに全力を出させるためにはシュリークが黙っておかねばならないという、何とも阿呆なことが発生しています。

なぜこんなおかしな組合せにしたんでしょうね。

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コメント

  1. 匿名 より:

    まあ主人公とヴェノムのBLだと見ればええんやないですか?