(2021年 アメリカ)
前作が苦手だったが、やっぱり続編もダメだった。相変わらずエイリアン側のスペックが弱すぎて地球侵略できるタマに思えないし、主人公側が要らん行動をとって、それで危険を呼び込んでしまうという自業自得の展開も無理だった。
感想
第一作がダメな人はこれもダメ
前作『クワイエット・プレイス』(2018年)は、ホラー映画としては記録的な大ヒットとなり、批評家からも絶賛されて良作と認識されている作品であるが、個人的にはイマイチどころかイマニ、イマサンくらい合わなかった。
視覚が使えず聴覚のみの侵略者って弱すぎ、人類にアドバンテージありすぎだろとか、物音を立てるのが御法度の世界で赤ちゃんを作るなんて一家心中してるのと同じとか、設定の穴がいろいろと気になり、面白い、面白くない以前のところで入り込めなかった。
で、その続編であるが、前作があんな感じなのでさほど興味がなかった。
しかしネットフリックスにアップされており、前作同様に上映時間が短かったこともあり、「今回はひょっとするかも」と思って見てみたが、ひょっとはしなかった。
本作は概ね前作の路線を引き継いでいる。商業的に大成功した前作の路線をわざわざ変える必要はないので、プロデューサーは至極当然の判断をしたまでと言えるが、こうなってくると前作に不満を持った人間は、本作も受け付けないのである。
相変わらず隙だらけにしか見えない侵略者に対して、ほぼ人災と言えるような騒動でドツボに嵌っていく登場人物達。
誰かに感情移入することも、展開に手に汗握ることもなく、「非常時にそんな行動取ってバッカで」と思いながら画面を眺めるのみであった。
前作と微妙に繋がっていないような
と、散々貶した後に言うのもあれだが、イントロの出来は素晴らしかった。
前作からさらに遡って、地球がエイリアンに侵略された当日が描かれるのだが、日常に非日常が侵食してくる前兆の不気味さ、平和な市民生活が破壊される瞬間の衝撃など、パニック映画として実によく出来ているのである。
この一連の地獄描写はクワイエット・プレイスシリーズにおける最大の収穫と言えよう。
とはいえ、腕だけが異様に長いクワイエット・エイリアンがアオレンジャイに見えて仕方なかったので、恐怖は感じなかったが。
そんな素晴らしいイントロが終わると、場面は現在に移る。
それは前作ラストの翌朝であり、設定上は前作とシームレスに繋がっていることになっているのだろうが、実際にはちゃんと繋がっていない。
まず気になったのが子役が成長しているということで、ブランクが数年空いてしまった以上は仕方のないこととは言え、ならばどうして前作直後という設定にしてしまったのだろうかと思う。
子役の成長を織り込んで、劇中でも数年の月日が過ぎていたということにしても良かったのに。
また前作ラストは、複数のエイリアンが主人公の屋敷に向かって走ってくる図と、弱点の周波数を見つけて「これからエイリアン狩りをしまっせ!」という感じでショットガンを構えるエミリー・ブラントの画で終わった。
その続きをやるのであれば、エミリー・ブラントによるショットガン無双じゃないといけないと思うのだが、相変わらず一家はエイリアンからこそこそ逃げ回っている。
しかも、屋敷に向かってきていた複数のエイリアンをどう捌いたのかは謎のまま。
期待感を煽った前作ラストと整合していない、『バイオハザード: ザ・ファイナル』(2016年)を見た時のようなガッカリ感があった。
身勝手な行動で事態を悪化させる面々
前作で屋敷を破壊されて、ここでは暮らしていけないと判断したアボット一家は、かつての人里を目指して移動を開始する。
程なくして元ご近所さんエメット(キリアン・マーフィー)の隠れ家付近に差し掛かり、そこでエイリアンに襲われたものだから、流れでエメット宅に逃げ込む。
ただしエメットは「昔のよしみで助けはしたけど、このご時世に子供3人の家の面倒なんて見られないよ」って感じで、滅茶苦茶に迷惑そうな顔をしている。当然のことである。
一方アボット家はしばらくご厄介になる気満々なので、ちょっとエメットが気の毒になってきた。
そんな折、ラジオ局が生き残っていることを知ったアボット家の長女は、ラジオを使って例の高周波を流せば、エイリアンを全滅させられるという作戦を思いつく。
でもママに言えば反対されると言うことで、長女は黙って出て行ってしまう。
今が緊急事態の真っただ中であるということも忘れ、身勝手な行動をとって自ら危険を呼び込むというホラー映画で一番やって欲しくないパターンが炸裂し、私のテンションは海よりも深く落ち込んだ。
しかも本作が凄いのは、ここから身勝手の玉突き事故が発生すること。
- 黙ってラジオ局を目指す長女
- 長女を連れ戻しに出たはずが、途中で考えが変わって二人でラジオ局を目指すことにするエメット
- 長男と赤ちゃんを置いて薬局に出かけるママ
- ここから動くなというママからの言いつけを破って外に出てしまう長男
赤ちゃん以外の全員が身勝手な行動をとるという異常事態に。ここまで来ると笑うしかない。
特にひどいのがママである。
赤ちゃんがいるから自分は動けないという理由でエメットに長女捜索を代行させたはずなのに、エメットが不在になると子供に留守番させて街に出ていくとか、迷惑この上ない。だったら自分で長女を探しに出れば良かったじゃないのと。
で、勝手な行動をとった連中は漏れなくエイリアンに襲われるのだが、自業自得なので彼らに助かって欲しいとは1ミリたりとも感じなかった。
もう全員死んでもいいかなくらいに思っていたのだが、生き残るんだよね、これが。
どれだけ危険なことをしでかしても、しぶとく生き延び続けるアボット家。この一連の流れが超ご都合主義に感じられたこともマイナスだった。
エイリアン、最弱を更新
一方、エイリアンはというと、実は泳げないという新たな弱点が発覚する。
表面の7割が水に覆われた惑星を水が苦手なエイリアンが襲うとか、『サイン』の侵略者並みのうっかりさんである。
で、ラジオ局は本土から離れた島にあるので無傷だったらしいのだが、そこが絶海の孤島というわけでもなく、本土からボートでちょっと行けば辿り着ける場所にある。
この程度のアクセスの島ですら無傷なら、侵略を免れた有人島なんて世界中に山ほどあるんじゃないの?
前作の時点でもそのスペックに疑問符のついたクワイエット・エイリアンだが、本作で彼らの実力への疑念は決定的なものになった。
お前らに地球侵略は無理だ。
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