ジャスティス・リーグ: ザック・スナイダーカット_頑張れ!ステッペンウルフ【8点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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(2021年 アメリカ)
ファン待望の仕切り直しは大成功でした。同じ話なのに、全体のトーンとディティールが変わることでここまで見違えるものかと驚いたし、キャラクター達の魅力も向上しています。特にステッペンウルフのサラリーマン人生には同情を禁じえませんでした。

作品解説

散々だった劇場公開版

『ジャスティス・リーグ』(2017年)はいろいろと辛い作品でした。

前作『バットマンvsスーパーマン』(2016年)が、ヒットこそしたもののその陰鬱な作風にファンが拒否反応を示したことから、ワーナーはDCEU製作陣に対して「次の『ジャスティス・リーグ』は明るい作風でいけ」と指示。

ただし監督は『ウォッチメン』(2009年)など暗い映画しか撮ってこなかったザック・スナイダーなので、これは中島みゆきに「ポップな楽曲を頼む」と言うに等しいほどの無理筋の要求でした。それでもスナイダーは撮影開始1か月前に脚本を書き直すなど全力で努力したのですが、ワーナーの要求値をなかなかクリアーできずにいました。

そんな折、スナイダーの身内に不幸が起こります。ただでさえ「映画を明るくしろ」という指示に悪戦苦闘している中で、余計に明るいことなど考えていられない状況となり、スナイダーはこれ以上の継続は困難としてプロジェクトを離脱しました。

代わって作品を完成させたのが『アベンジャーズ』(2012年)成功の立役者であり、ワーナーと『バットガール』の企画を進めていたジョス・ウェドンでした。

スナイダーの降板が2017年5月、そして映画の公開日は2017年11月であり、ウェドンは急ピッチで立て直しに入りました。脚本を書き直し、追加撮影を行い、音楽はジャンキーXLから『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』のダニー・エルフマンに変更。

かくして難産の末に完成した『ジャスティス・リーグ』ですが、その努力も虚しく批評家からの支持もファンからの支持も得られず、興行成績は5か月前に公開された『ワンダーウーマン』(2017年)を下回るという期待外れの結果に終わりました。

史上空前の製作費3億ドルがかけられたにも関わらず、全世界興行成績は6億5792万ドル。損益分岐点を超えられず赤字になったと報じられました。

当初は存在を否定されていたスナイダー版

劇場版の出来に納得しないファン達は、公開直後から「ザック・スナイダーのバージョンも見せろ」と騒ぎだしました。

あれだけスナイダーが叩かれたから苦労して作風を変えたのに、やっぱりスナイダーの暗いやつを見せろとか、ワーナーからすると「どうせぇっちゅーねん」って感じですが、ただしファン側の主張にも一理あります。

当初は前後編に分かれるとも180分になるとも言われており、未使用フッテージが膨大にあることはほぼ間違いない状況だったうえに、ワーナーには、途中降板させた監督に再々編集をさせて完成させた『スーパーマンⅡ/ドナー・カット版』(2006年)という前歴があったからです。

加えて、レーティングや上映時間といった制約条件にとらわれずに作った『バットマンvsスーパーマン アルティメットエディション』が、劇場版からは見違えるほどの出来だったことから、「全長版は面白いはず」という予断が走ったことも合理的でした。

そんなファンの思いの一方で、長らく公式はスナイダー版の存在を認めてきませんでした。

ウォールストリートジャーナルの2018年7月20日付けの記事で、同誌の独自調査の結果、スナイダー版は存在していないとの結論が付きました。

またスーパーマン役のヘンリー・カヴィルはイギリスのYahoo!のインタビューにおいて、ウェドン版とスナイダー版に内容面での大差はないので、ワーナーが追加投資をしてまでスナイダー版を復活させる可能性はないと答えていました。

やっぱりあった!スナイダー版

しかし納得しないファン達は執念の活動を行うようになり、ワーナーに新社長が就任すれば大量の手紙を送り付け、ワーナーがストリーミングサービス「HBO Max」を立ち上げればすかさずコンタクトを取り、クラウドファンディングで資金を集めてスナイダーカットを宣伝するための広告スペースを購入するなど、その熱意は只ならぬレベルに達していました。

2019年3月、ついにスナイダー当人がオリジナルカットの存在を認め、これを完成させるかどうかはワーナーの判断次第とコメント。

1年後の2020年3月、ワーナーのトビー・エメリッヒ会長はスナイダー・カットを進めることを決定し、2020年5月、HBO Maxでの公開が発表されました。

かくして7000万ドルという再編集版としては破格の予算が組まれて『スナイダーカット版』が製作され、2021年3月18日に日本と中国を除く全世界同時配信(こういう場合に後回しにされることが多いのが日本…)。

日本では2か月遅れの2021年5月26日より配信が開始され、またディスクメディアは2021年6月25日にリリース。

当初は数量限定の初回盤しかリリースされず、転売ヤーの暗躍もあって即座に売り切れて予約もできないという混乱状態が発生したものの、ワーナーが通常版の供給を始めたことから今では普通に購入することができます。

それにしても転売ヤーには困ったものです。

尋常ではない好評ぶり

かくしてリリースされたスナイダー・カットは大好評で、IMDBではDCEUで最高値となるスコア8.1を叩き出しています(2021年7月6日閲覧)。劇場版のスコアが6.1なので、もはや別の映画です。

この出来に興奮したファン達は当初ビジョン通りの続編制作を希望し、「#Restore the SnyderVerse(スナイダーバースを復活させろ)」というハッシュタグがトレンド入りしました。

ただしスナイダーによるとワーナーはスナイダーバースに対する関心を持っていないとのことですが、あの終わり方で「もうお開き」は殺生ですよ、ワーナーさん。

感想

まさかのスタンダードサイズ

上映開始直後に驚いたのが、画面がスタンダードサイズだったことです。映画の画角は大きく分けて以下の3つがあります。

  • スタンダード(1.33:1)
  • ビスタ(1.85:1)
  • シネマスコープ(2.35:1)

映画の画角はもともとスタンダードだったのですが、1950年代に入るとテレビとの差別化のためにビスタとシネマスコープが登場し、これらワイドな画角が映画の標準となりました。

その後、21世紀に入るとブラウン管テレビの消滅によりテレビもビスタサイズが標準となり、スタンダードサイズは目にする機会がめっきりなくなっていたのですが、ここにきての電撃復活。

しかもシネスコの映画ばかり撮ってきたザック・スナイダーがビスタを通り越してスタンダードに来たことはかなり意外だったのですが、『バットマンvsスーパーマン』を撮影する際に使用したIMAXカメラの1.43:1の画角をいたく気に入ったことから、劇場公開される見込みのない本作をスタンダードにしてみたとのことです。

その威力には絶大なものがあって、正方形に近い画角はアメコミのコマにようで、ヒーロー達のアップの絵がまぁ映えること。スタンダードサイズの映画がもっと作られればいいのにと思ってしまいました。

スタンダードサイズでアップを重視したスナイダー版。そして画面も暗い。
ワイドスクリーンで引きの画を重視した劇場版

同じ話なのに印象が全然違う

本作は新しく構築し直したバージョンではなく、あくまでワーナーやジョス・ウェドンの手で変更された映画を元通りに戻したというだけなので、おおまかなストーリーは劇場版とほぼ同じです。

ただしスナイダー印の彩度の低いビジュアルによって、別の映画かと思うほど全体の印象が変わっています。ちなみに本国ではモノクロ版も公開されており、スナイダーはそのバージョンが最もお気に入りだとか。

またジョス・ウェドンが付け加えたコミカルな場面はすべてカットされ、『バットマンvsスーパーマン』並みの暗~い雰囲気となっています。

加えて上映時間という制約を受けなくなったことから各キャラクターにフォーカスした内容となっており、特にサイボーグ絡みのエピソードは深みを増しています。

こうして物語がディティールアップされたことで同じ話でも随分違う見栄えとなっており、新鮮な作品として見ることができました。

作り手の違い、方向性の違いによって同じ素材でもここまで変わるというサンプルとしても、本作と劇場版には興味深いものがあります。

ステッペンウルフのサラリーマン人生

そんな中でもっとも印象が変わったのが、メインヴィランであるステッペンウルフです。

劇場版では、実現したところで一体何の得があるのかは分からないが、とりあえず地球を征服したくて仕方ない悪党というシンプルにもほどがある味付けのヴィランだったのですが、本作ではその壮絶な背景が描かれています。

実は彼にはダークサイドという上司がいて、元はその腹心の部下だったのですが、ある時魔がさしてダークサイドを裏切ってしまい、しかもその企みが成功しなかったものだから、以来、閑職に置かれているということが明かされます。

同業他社からのヘッドハンティングを受けようとしていたところ、そのことが会社にバレてしまった上に、肝心のヘッドハンティングの話もなくなってしまったサラリーマンのような状態に置かれているのが現在のステッペンウルフなのです。

出世コースから脱落したステッペンウルフ。君は悪くない!
DCEUの悪の総元締めダークサイド社長。サノスに似ているとか言わないこと!

「あんなことさえなければ今頃役員だったのに」なんて言われながら左遷先で頑張るステッペンウルフ。ダークサイドはもはや顔も合わせてくれず、デサードという奴が代わりにステッペンウルフからの電話に出ているような状態です。

しかもこのデサードが釣れない野郎で、ステッペンウルフが「頑張ってるって社長に伝えてくださいね!」と全力でお願いしても「ああ、言っとく言っとく」みたいな適当な対応。あれは絶対伝えていません。

そして、ステッペンウルフは地球をダークサイドへの手土産にしようとしているようです。

太古の昔、ダークサイドは地球を攻めたのですが、やたらと超人や神様のいる惑星だったので侵略は失敗。百戦錬磨のダークサイドにとって唯一の敗北の地であり、以来、組織内では地球について触れちゃいけないみたいな空気になっていました。

そんな中、捲土重来の機を伺うステッペンウルフは地球に目を向けていたのですが、すると大いなる脅威であったクリプトン人は前作『バットマンvsスーパーマン』(2016年)で死んでくれたし、『グリーン・ランタン』(2011年)がコケて続編が作られていないのでグリーン・ランタンも不在であることに気付きます。

雑魚しかいない今なら勝てる!

そう踏んで地球に攻めてきたわけですが、「これが成功したら本社に戻してくださいね!」とお願いするステッペンウルフの姿に私は猛烈に同情し、地球の一つや二つ、彼にあげちゃっていいのではないかと思ってしまいました。

しかしジャスティス・リーグがスーパーマンを復活させるというまさかの行動に出てステッペンウルフの目論見は外れ、『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』(1974年)に匹敵するヒーロー達からの一方的な暴行を受けて絶命(劇場版では敗走)。何とも悲しい最後でした。

なお、ダークサイドがMCUのサノスに似ていることが気になるのですが、コミックへの初出はダークサイドが1970年に対してサノスが1973年なので、サノスがダークサイドに似ているというのが正しい認識となります。

続きが気になって仕方がないエピローグ

ほぼスーパーマン一人の能力でステッペンウルフに勝利したジャスティス・リーグは日常生活に戻って行くのですが、バットマンことブルース・ウェインは前作『バットマンvsスーパーマン』で見た予知夢の続きを見ます。

やはりスーパーマンが闇落ちして地獄みたいになった世界。

「ロイス・レーンがあんなことになったから…」というセリフから察するに、スーパーマン不在中に地球人の不手際でロイスが絶命し、それによってスーパーマンは人類を守る意義を失ったという美樹を亡くしたデビルマン的なシチュエーションがあったのだろうと思います。

いつもニコニコしている奴ほどキレたらヤバいを地で行くスーパーマンのこと、ロイス亡き後には洒落にならない荒れ方をしたことが伺えます。

そしてバットマンと一緒にいるのがサイボーグ、フラッシュ、メラ(アクアマンの彼女)、デスストローク(DCのスーパーヴィラン)、そしてジョーカー。

スーパーマンというハイパーヴィランが現れたために町内で悪さをしている並レベルのヴィランが存在価値を失ったのか、今やヒーローと呉越同舟で行動を共にしています。

彼らがいかにして同盟(リーグ)を組んだのか、そしてどう見てもまとまりのない彼らがどうやって苦境を脱するのか、この続きはぜひとも見たくなります。

先ほど、ファンが続きを作れと騒いでいると書きましたが、確かにこれは続きが必要ですよ。実写が無理ならアニメでもコミックでもいいので、この話がどう終わるのかを見せて欲しいですね。

マーシャン・マンハンターから目が離せない!

そして、夢から覚めたブルースが家のテラスに出ると、マントを身に纏ったヒーローがやってきます。

シルエットだけだと「スーパーマンかな?」と思ったのですが、アップになると顔は滅茶苦茶不細工。でも彼はヴィランではなく、「この前の戦い凄かったよね!」「バットマンがリーグをまとめてくれたおかげだよ!」「何かあれば僕も手伝うよ!」と興奮気味に語り始めます。

彼の名はマーシャン・マンハンター。1955年から登場する割かし古参のヒーローのようで、スーパーマンに匹敵する超人的な能力を持つとのこと。

空気の読めないナイスガイ マーシャン・マンハンター

その話の内容から超絶ナイスガイだということは分かるのですが、朝っぱらから人の家に押しかけ、寝起きのブルースに対して一方的に喋る姿は、どう見ても空気の読めない人でした。

「早く帰ってくれないかな」という顔をして適当に受け流すブルースとの噛み合わない会話は、ラストの大アクションに匹敵する見せ場となっています。

マーシャン・マンハンター、彼から目が離せなくなりました。

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