ロードキラー【6点/10点満点中_うまいオチが浮かばなかったのね】(ネタバレあり感想)

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(2001年 アメリカ)
長距離ドライブ中の兄弟がCB無線で女の声色を真似たイタズラを仕掛けるが、引っ掛かったトラック運転手はヤバイ奴だった。

6点/10点満点中見事な導入部とイマイチな本編

コンパクトによくまとまった青春ホラー

主人公3人が魅力的

本作の主人公はルイスとフラーの兄弟と、ルイスが恋心を抱く高嶺の花・ヴェナ。この3人がちゃんと魅力的なので、青春ものとしての基礎がしっかりとしています。

ルイス(ポール・ウォーカー)

ルイスは性格の良いイケメンなんだけど、奥手で不器用なので損をしているタイプ。

ちょっと間違えれば「こんなイケメンに彼女ができないなんてありえないだろ」と観客からの総ツッコミを受けかねないキャラだったのですが、魅力と芋っぽさを絶妙にブレンドすることで違和感のない存在となっています。

フラー(スティーヴ・ザーン)

フラーは警察のご厄介になることの多い犯罪者だが、手を染めるのは軽犯罪ばかりで腕っぷしには自信がなく、喧嘩になりそうな場面からは尻尾を巻いて逃げ出すタイプ。いわゆる「チンケな悪党」ってやつですね。

今回の騒動を引き起こしたトラブルメーカーなのだが、非常事態で頼りになるわけでもないという観客からの反感を一身に集めかねないキャラだったのですが、「憎めないバカ」という範疇にギリギリ踏みとどまっており、陽気なあんちゃんとして好意的な目で見ることができました

ヴェナ(リーリー・ソビエスキー)

おそらくルイスの好意に気付いているのに曖昧な態度を取り、暇な時の話し相手として利用しているフシもある高嶺の花。

このキャラには二つの条件が求められていました。一つ目は、誰の目にも美人として映るということ。二つ目は、美人だがイヤな女ではないと思われること。作品によってスクリーン映えが大きく異なるリーリー・ソビエスキーがキャリア史上最高の美人演技で見事にこのハードルをクリアーしており、ややエロいしずかちゃん役の具現化に成功しています。また、美人特有のキツさがなく、本人に男を振り回している自覚はないという天然ぶりも織り込めているので、観客からの好感を得られるキャラに仕上がっています。

じわじわとヤバい感じになっていく発端部分が良い

ルイスとフラーは、女の声色を真似たイタズラに引っ掛かったトラック運転手・ラスティを暇つぶしにいじって遊びます。その際の、ラスティの口ぶりがどんどんヤバくなっていく感じがなかなか良いのです。ルイスとフラーは「こんな低レベルなイタズラに引っかかるバカ」程度にしか思っていないのですが、これがサイコサスペンスジャンルの物語であるという先入観を持った観客からすると、「もうやめて~」となるんですね。まだ温度は上がり切っていないんだけど、このままいくぞヤバイことになるぞというハラハラ感の演出が非常によくできていました。

その後、ラスティの尋常ではない執念と行動力を目の当たりにして、ルイスとフラーもようやく「これはヤバイ相手かもしれない」と意識し始める展開もよくできており、サスペンス映画の導入部としては絶好調でした。

サイコキラーの戦力描写が適切

ラスティの犠牲者第一号は口が悪くゴツイおっさんなのですが、このおっさんを軽く仕留めてみせたことでラスティの腕っぷしが尋常ではないことが分かるし、下あごをもぎ取るというブルータルな所業により、主人公と観客に対してその残虐性が十分にアピールされます。

取っ捕まると大変な目に遭わされる相手であるということを本編に入る前に見せておくという当たり前のことがきちんとできている監督と脚本家の仕事の手堅さには感心させられました。

中盤以降の伸びがない点は残念

ただし、良いのは導入部だけなんですよね。

本作がスピルバーグ監督の『激突』をリファレンスしていることは明らかなのですが、得体の知れない敵に追い込まれる恐怖でラストまで引っ張った同作と比較すると、本作の場合はサイコキラーとのコミュニケーションが物語のど真ん中にあって、行動原理がはっきりした相手との戦いなので、恐怖の底が浅いのです。

作り手達も本作をどう終わらせるのかは迷っていた様子で、イタズラを仕掛けたルイスとフラーが今度はイタズラをされる側になり、裸でレストランに入れと命令されたりもするのですが、そこから因果応報的な教訓を読み取ることもできず、作品の着地点とはなりえていません。

画期的すぎたDVD版

2002年に発売された本作のDVDは超充実しています。特典満載のソフトは他にも多くありますが、本作が特殊なのは没キャストや没エンディングといった制作者側の手の内を全部オープンにしてしまっているということです。映画に関心のある人ならば必見ともいえる内容であり、所有している映画ソフトの中でもトップクラスに満足できました。

没キャストによるフッテージを収録

サイコキラー・ラスティはなかなか姿を見せず、無線から聞こえてくる声でどれだけのイパクトを残せるのかが勝負だったので、ラスティ役は慎重にキャスティングされました。そこで挙がった候補は以下の3名。

  • エリック・ロバーツ
  • スティーヴン・シェレン
  • テッド・レヴィン

通常、没キャストはオープンにされないのですが、このDVDでは没キャストが演じるラスティの声も収録されており、視聴者は3名の声を聞き比べることができます。監督気分で収録素材を見られるDVDというのはなかなか貴重です。
3バージョンを聞き比べると、やはり正式に起用されたテッド・レヴィン(『羊たちの沈黙』のバッファロー・ビルの人)が合ってましたね。エリック・ロバーツはパンチ不足、スティーヴン・シェレンは良い声で聞き心地が良すぎました。

没エンディングを4パターン収録

未公開シーンや別エンディングを収録したDVDは多く存在していますが、本作が画期的だったのが「別エンディング①」の存在です。なんと28分もの長尺であり、当初は劇場版とはまったく異なる話だったことがこのバージョンで分かります。

ここまで大幅な再撮影を行ったことを普通はオープンにしないのですが、本作に限っては本来どんな話だったのかを全部見せちゃってるんですよね。しかも、なぜこのバージョンを却下したのかという理由も監督自身の口で説明されるので、非常に興味深く見ることができました。

上記の作品レビューの通り後半が良くないのですが、製作陣も同様のことを感じており、何バージョンも撮って最適解を探っていたという点でも興味深く感じました。

別エンディング①

内容

ルイスとフラーが裸でサービスエリアのレストランに入った直後から話が分岐する。

サービスエリアの駐車場にラスティのトレーラーが出現し、カーチェイスに発展。その際にルイスの車は横転して破損し、ラスティはそのまま逃走。ルイスとフラーは保安官事務所に拘留される。

その後、保安官事務所にラスティから自殺を仄めかす電話がかかり、逆探知して突き止めた発信場所に警官隊が向かうと、ショットガンで顔を撃ち抜いたラスティと思われる男の死体と、縛られ深手を負ってはいるが生存しているシャーロットを発見。警官達は一件落着と考えるが、ルイスとフラーはこの自殺が偽装でラスティは依然として生きており、ヴェナが狙われていると考えて、パトカーを奪いヴェナの元へと向かう。

案の定、ヴェナはラスティのトレーラーでさらわれており、ルイスとフラーはパトカーでこれを追跡。ハイウェイパトロールを装ってトレーラーを停車させ、荷台に拘束されていたヴェナの救出には成功するが、直後に偽装を見破られてトレーラーにパトカーを破壊される。3人はトウモロコシ畑に逃げ込み、ここから公開版にもあったトウモロコシ畑でのかくれんぼとなる。

ただし流れが異なり、本バージョンではここが最終決戦となる。ルイスとフラーは可燃性の農薬とピストルを使ってトレーラーの爆破に成功。その後3人は病院に運ばれ、ルイスとヴェナのキスを経て、ラスティの死を見届けて終了。

削除の理由

当初の脚本のエンディングはこれで、最初に撮影されたのはこのバージョンだったが、監督は緊張感に欠けると判断して不採用とした。全裸で全力疾走するポール・ウォーカーを見られる。

別エンディング②

内容

最初に撮り直したバージョンで、劇場版と同じくクライマックスの舞台はヴェラが閉じ込められたモーテル。

ただし、劇場版では足が杭に刺さって動けなくなったフラーにトレーラーで突っ込んでくるラスティと、フラーを救出しようとするルイスの描写に重心が置かれていたが、本バージョンでは正反対の流れとなる。格闘の末にラスティは身動きがとれなくなり、トレーラーの鍵を奪ったルイスがトレーラーを運転してラスティに突っ込み、ラスティは絶命。その後、劇場版と同じくショットガンの銃口を向けられたヴェナを救出して終了。

一件落着後にフラーが父親と電話で話し、疎遠だった両者が和解する。

削除の理由

格闘で殺したはずのサイコキラーが実は死んでおらず、しつこく反撃されるというホラー映画にありがちな描写の連続なので観客には見透かされると判断。また、フラーと父親の和解に観客は関心がないはずで、これをラストに持って来る必要がないとも判断された。

別エンディング③

内容

別エンディング②と同じくモーテルが舞台であり、身動きがとれなくなったラスティにルイスがトレーラーを運転して突っ込む。

異なるのはヴェナがショットガンから逃れる場面であり、本バージョンではヴェナが自力で脱出し、さらにはそのショットガンを使ってラスティを射殺する。そして別エンディング②と同じく、フラーと父親の和解で終了。

削除理由

本作の主人公はルイスであるにも関わらず、彼が幕引きをしないエンディングは誤りであると判断された。

別エンディング④

内容

別エンディング②③と同じくモーテルが舞台であり、身動きがとれなくなったラスティにルイスがトレーラーを運転して突っ込む。

トレーラー衝突後にもラスティはピンピンしており、ヴェナが拘束されている部屋でルイスと最後の格闘を行う。その最中に、ヴェナに向けられていたショットガンから放たれた弾丸が格闘をしていたラスティに当たって絶命する。そして別エンディング②③と同じく、フラーと父親が和解して終了。

削除理由

サイコキラーが自分の仕掛けた罠にはまるというオチはホラー映画にありがちで観客が容易に推測可能であり、インパクトに欠けると判断された。

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