ブレイン・ゲーム_ドラマもミステリーも不発【3点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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サイコパス

(2015年 アメリカ)
超能力と犯罪者プロファイリングの食い合わせが思いのほか悪く、面白くありませんでした。下記「作品概要」にも記したのですが、映画そのものよりも製作過程の方が面白いくらいでした。

あらすじ

透視能力を持つジョン(アンソニー・ホプキンス)は、重病で娘を亡くしたショックで社会とのかかわりを断っていたが、友人のFBI捜査官ジョーから連続殺人犯の捜査協力を依頼され、引き受けることにする。

スタッフ・キャスト

監督のアフォンソ・ボヤルトとは何者?

1979年ブラジル出身。監督・脚本務めた長編デビュー作『トゥー・ラビッツ』(2012年)で国際的な評価を獲得し、長編2作目となる本作でハリウッドデビューを飾ったという大型新人でした。

ただし本作の不調で祖国ブラジルに戻り、以降テレビシリーズを中心に活動しています。

豪華な脚本家陣

本作の原案となった脚本は90年代後半にショーン・ベイリーとテッド・グリフィンによって執筆され、ジェームズ・ヴァンダービルドが初期稿に手を加え、最終的にピーター・モーガンが完成させました。

後のディズニー実写部門社長ショーン・ベイリー

本作の脚本家としてクレジットされているショーン・ベイリーは、2010年にディズニーの実写部門であるウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャー・プロダクションの社長に就任し、2020年時点でも現職の人物なのですが、1990年代後半から2000年代前半にかけては製作側にいた人でした。

『マッチスティック・メン』(2003年)や『ザ・コア』(2003年)がその時代の代表作であり、本作の脚本はそれら以前に執筆されました。

後の一流脚本家テッド・グリフィン

そんなベイリーとキャリア初期にコンビを組んでいたのがテッド・グリフィンで、『マッチスティック・メン』(2003年)などを共同で手掛けています。

グリフィンは1910年代~1950年代に活躍した映画監督ウィリアム・A・サイターの孫であり、単独では『オーシャンズ11』(2001年)や『マイレージ・マイライフ』(2009年)の脚本を執筆しています。

また脚本の直し屋としても活躍しており、ブラッド・ピット主演の『Mr.&Mrs.スミス』(2005年)、リドリースコット監督の『プロヴァンスの贈りもの』(2006年)、トム・クルーズ主演の『ナイト&デイ』(2010年)、マーティン・スコセッシ監督の『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2013年)などの脚本にノークレジットで参加しました。

娯楽脚本の大家ジェームズ・ヴァンダービルド

ジェームズ・ヴァンダービルドは20代の頃から大作にクレジットされていた早熟の脚本家であり、キャリア初期には『閉ざされた森』(2003年)や『ゾディアック』(2007年)などスリラーを得意としていました。

その後『アメイジング・スパイダーマン』シリーズ(2012~2014年)のメインライターとなって娯楽作の才能も示し、『ホワイトハウス・ダウン』(2013年)、『インデペンデンス・デイ リサージェンス』(2016年)ではローランド・エメリッヒとの共同脚本も手掛けました。

現在は『ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー』(1996-1997年)実写化企画の陣頭指揮を執っているとのことです。

伝記ものの重鎮ピーター・モーガン

最終的に本作の脚本を完成させたのは、伝記ものを得意とするピーター・モーガンでした。

モーガンはテレビシリーズの脚本家としてキャリアをスタートさせ、1990年代後半に映画界へ進出。『クィーン』(2006年)と『ラストキング・オブ・スコットランド』(2006年)の脚本で注目を浴びました。

その後は『フロスト×ニクソン』(2008年)と『ラッシュ/プライドと友情』(2013年)という二本のロン・ハワード監督作品の脚本を手掛けて成功させ、大ヒット作『ボヘミアン・ラプソディ』(2018年)の原案も務めました。

Netflixの人気シリーズ『ザ・クラウン』(2016年-)では脚本に加えて製作も担当しています。

主演はアンソニー・ホプキンス

1937年ウェールズ出身。元は舞台俳優で60年代後半より映画界に進出。『羊たちの沈黙』(1991年)でアカデミー主演男優賞を受賞し、『日の名残り』(1993年)、『ニクソン』(1995年)、『アミスタッド』(1997年)と、90年代にはアカデミー賞ノミネートの常連でした。

『羊たちの沈黙』の続編の『ハンニバル』(2001年)でレクター博士を続投したあたりから、重厚な演技派俳優というよりも頼まれればいろんな映画に出てくれるベテランになり、『マイティ・ソー』シリーズや『トランスフォーマー/最後の騎士王』などにも出演しています。

作品概要

『セブン』(1995年)続編のボツ脚本

1998年、ショーン・ベイリーとテッド・グリフィンは本作の原案となるオリジナル脚本をフォックス2000ピクチャーズに売却しました。

2001年、脚本はフォックス2000からニュー・ライン・シネマズへと売却され、ニューラインは大ヒット作『セブン』(1995年)の続編として書き直しました。タイトルは『エイト』。冗談のようですが、ニューラインは本気で映画化するつもりだったようです。

その内容はサマセット刑事(モーガン・フリーマン)が超能力を身に付けるというものでしたが、デヴィッド・フィンチャーがこのアイデアに賛同せずボツになりました。

リリースまでの苦節18年

脚本はニューラインの親会社であるワーナーの手元で寝かされた後、独立系の映画製作会社であるレラティビティ・メディアが購入。『セブン』とは無関係な単独作品として製作することにしました。

2013年に製作が開始されて撮影までを終えていたのですが、レラティビティの財政状況が悪化したため2年間に渡ってポストプロダクションが中断。

2015年に何とか完成にまで漕ぎつけ、4月にトルコで劇場公開されたものの、8月にレラティビティが倒産したため2015年末に予定されていた全米公開は白紙に戻りました。

その後、『ハンガーゲーム』シリーズなどで知られる独立系映画会社ライオンズゲートが権利を買い取り、2016年12月にストリーミングとDVD・Blu-rayでリリースしました。

登場人物

  • ジョン・クランシー(アンソニー・ホプキンス):人物の過去の行動の透視や、触れたものから所有者に関する情報を読み取ることができる超能力者。最愛の娘を重病で亡くして以来、妻とは疎遠となり、世間との関わり合いも断って生きてきたが、FBIより連続殺人犯の捜査協力を依頼され、引き受けることにする。
  • ジョー・メリウェザー捜査官(ジェフリー・ディーン・モーガン):連続殺人犯を担当しているFBI捜査官で、幸せな家庭を持ち、人格面でも優れた人物。捜査に行き詰ったことから古くからの友人のジョンを頼る。
  • キャサリン・コウルズ捜査官(アビー・コーニッシュ):ジョーの相棒の若い捜査官。元はニューヨーク大学で心理学を研究しており教授の座も狙えるほど優秀だったが、興味からFBIに転職したという変わり者。ジョンの超能力に対しては懐疑的な立場を取っている。
  • チャールズ・アンブローズ(コリン・ファレル):連続殺人犯。背後から延髄を刺し、痛みもなく被害者を殺害するという手口を使う。ジョンを上回る超能力を持つ。

感想

面白みに欠けるミステリー

超能力者という変わった素材をトッピングしているものの、基本的に本作はシリアル・キラーを追う捜査官達の物語です。

かつてアンソニー・ホプキンスが主演した『羊たちの沈黙』(1991年)のように、被害者や現場の状況から犯人の人物像を推測し、犯行の規則性から次の被害者を予測して犯行を未然に防ぐということがこのジャンルの定番の流れとなります。

すなわち、捜査過程の知的な分析や、次の犯行を防げるかというタイムリミットサスペンス的な演出がその醍醐味なのですが、残念ながら本作ではそうした要素がさほど追及されていません。

超能力を使っているので地道な捜査という感じがしないし、被害者間の関連性とは何かという分析が進まないままにテンポよく次の犯行が起こるため、次の犯行を推理して未然に防ぐという動きを作れていないのです。

超能力という飛び道具と犯罪者プロファイリングとの相性は驚くほど悪く、お互いに見せ場を食い合っているような印象を受けました。

中途半端に終わる安楽死の議論 ※ネタバレあり

殺人犯アンブローズ(コリン・ファレル)は将来難病を患い大変な苦痛を味わうことになる人を見つけ出し、痛みを与えない方法で殺害します。

直接話してみるとアンブローズには殺人者らしい異常性がなく、殺人を楽しんでいるわけでもなく、自分は罪人であるという自覚を持ちつつも、その行為は被害者のためになっているという確たる自信と信念を持っています。

助かる見込みのない患者を苦痛の中で生かすよりも、痛みのないうちに死なせる方が幸せではないのか。これはまさに安楽死の議論です。

そして「人を殺してはいけない」というありきたりな批判をぶつけたところで、そんなことは遠の昔に考え尽くしており、葛藤が一巡した末に今の方法に辿り着いたかのような落ち着きをアンブローズは纏っています。

確かにアンブローズの主張にも一理あるという中で、何が正義かを問うことが本作の趣旨だったように思うのですが、これに対するジョンの反応がどうにも中途半端なので議論が深まりませんでした。

ジョンはアンブローズの価値観に飲まれかけるのか、それとも理念vs理念の衝突が起こるのか。倫理的、社会的テーマを扱う以上は何らかの山場があるべきだったのですが、結局ジョンがアンブローズの価値観をどう受け止め、対決の中で彼の死生観がどう影響されたのかが明確にされないので、せっかくのテーマが死んでいます。

よくよく考えてみれば、若い超能力者の方が老熟しており、年を取った方の超能力者がそれに振り回されるという構図も面白いものであり、コリン・ファレルに翻弄されるアンソニー・ホプキンスという図は興味深いのですが、それを映画としての面白みには昇華できていません。

そういうところが本作の弱みなのでしょう。

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