ライオン・キング(2019年)_ダイジェスト版のような味気なさ【3点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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(2019年 アメリカ)
プライド・ランドと呼ばれるアフリカの大地は、ライオン・キングことムファサの善政の元、すべての動物達が平和に暮らしていた。しかしムファサの弟スカーはムファサを陥れて政権を簒奪し、世継ぎである幼いシンバも殺そうとした。しかしシンバは密かに生き延び、ジャングルで大人のライオンに成長していた。

©2019 Disney Enterprises

スタッフ

監督は『アイアンマン』のジョン・ファヴロー

1966年ニューヨーク出身。大学卒業後にウォール街で働いた後、スタンダップコメディアンになるためシカゴへ転居。その後俳優に転身してテレビドラマなどに多く出演。自ら脚本を書く人だったことから転じて映画監督・プロデューサーになったという、人生設計が何度変わったのか分からない人生を送ってきた人物です。

映画監督としては『エルフ 〜サンタの国からやってきた〜』(2003年)が中規模予算ながら全世界で2億ドル以上を稼ぐヒットとなり、冒険映画『ザスーラ』(2005年)は興行的には伸び悩んだものの批評家からのレビューは上々でした。

タランティーノ、ジョス・ウェドン、ニック・カサヴェテスらが関わるも決定稿を作れずにおり、製作が難航していた『アイアンマン』(2008年)の監督を引き受け、出演したジェフ・ブリッジスから「2億ドルかかった学生映画」と揶揄されるほど混乱した撮影現場をまとめあげて興行的にも批評的にも大成功させ、MCUの基礎確立に貢献したことから、監督としての評価を不動のものとしました。

今やテクノロジーと娯楽の巨匠であり、『ジャングル・ブック』(2016年)を全世界で9億6千万ドルも売り上げる大ヒット作にしたことが、本作の起用に繋がったと思われます。

脚色は『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』のジェフ・ナサンソン

1965年ロサンゼルス出身。1990年代より多くの娯楽作を手掛けており、『ツイスター』(1996年/ノークレジット)、『スピード2』(1997年)、『絶体×絶命』(1998年)、『ラッシュアワー2』(2001年)などを執筆しています。特にスピルバーグからの信頼が厚いようで、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』(2002年)、『ターミナル』(2004年)、『メン・イン・ブラック3』(2012年)の脚本を担当。またジョージ・ルーカスと共に『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(2008年)の原案を手掛けています。

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『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』(2017年)の脚本でディズニー作品を手掛けており、同作は全世界で8億ドル近く売り上げるヒットとなりました。

感想

門外漢の率直な感想です

私はあれだけヒットしたアニメもミュージカルも見たことありません。ライオン・キングと言われると大西ライオンのイメージしかないという体たらくです。すみません。

実写版(フルCG映画を実写と言えるのかは謎ですが)の本作についても、自分の人生には無関係な映画として積極的に見る意思はなかったのですが、上海出張へ行く際の機内上映のメニューに本作が含まれており、「このままいくと一生見ない可能性もある映画だから、これを機に一度見てみるか」ということで鑑賞をしました。

そんな程度の人間の感想だと思って、以下のレビューはお読みください。

フルCG動物とミュージカルの相性が最悪

フルCGの動物のクォリティは尋常ではないことになっています。実写と区別つきません。問題は、映像のリアリティがミュージカルというジャンルと馴染んでいなかったということです。「わくわく動物ランド」でも見ているかのような映像の中で、突然動物達が歌い出す場面の違和感には壮絶なものがありました。

リアリティを追及するため動物達には表情というものが与えられていないのですが、そんな無表情な動物達が物凄い歌唱力でコーラスする場面がとても変なのです。リアルでいくのかデフォルメでいくのかという作品の大きな方向性がここで大きくぼやけ、目の前の光景をどう処理すればいいのかが分からなくなってしまいました。

ダイジェスト版でも見ているかのようなお手軽ストーリー

本編は、「高貴な血脈に生まれ本来は高い身分にあるべき者が、不幸の境遇に置かれる中で冒険をし、正義を発揮する」という貴種流離譚的な王道のストーリーラインに沿っています。人間ドラマだと使い古された物語を、動物を主人公にすることで目新しく見せるという企画意図なのだろうと思うのですが、あまりにテンポ良くサクサクと進んでいくので、ダイジェスト版でも見ているかのような物足りなさを感じました。

主人公のシンバはいろいろあって生まれ故郷のプライド・ランドに居られなくなり、以降は世捨て人の如くジャングルで草食動物達との共同生活を送っていました。彼が不在の間にプライド・ランドは叔父スカーとハイエナ達による悪政によって荒廃し、残された者達は本来玉座に就くべきだったシンバの帰還を求めるということが物語の骨子。

『スター・ウォーズ』『デューン/砂の惑星』『ロード・オブ・ザ・リング』『ゲーム・オブ・スローンズ』、最近では『マイティ・ソー』や『アクアマン』など、この手の物語は数限りなく製作されているのですが、本作のシンバは映画史上稀に見るほど簡単に玉座を奪還してみせるので、主人公特権行使しまくりの物語にはまったく面白みを感じませんでした。

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シンバがプライド・ランドに居たのは幼少期のみで、しかもメスライオンのナラと同等レベルの知覚能力や運動能力を見せるのみであり、能力的に突出したところはありませんでした。プライド・ランドを離れて以降は「気楽に生きよう」を信条とするイボイノシシとミーアキャットとの共同生活を送り、肉食動物との喧嘩も、草食動物の狩りもしたことがないほどの軟弱な育ち方をしました。

そもそも強いわけでもなかった上に、能力を磨く機会もないまま成長したシンバには、好戦的な叔父スカーに対抗できる要素などどこにも見当たりません。軟弱に育ったシンバをどうやって鍛え直すのかが中盤のテーマになるものと思っていたのですが、ライオン・キングになるための訓練もロクになく、プライド・ランドに戻るやスカーやハイエナ達と同等に渡り合えるというご都合主義には眩暈がしました。王家の血筋という一点のみでシンバの強さに説明を付ける物語は、現代の価値観に合っていないようにも感じたし。

普通のライオンとは違う育ち方をしたことがシンバ特有の強さにつながっており、草食動物らとの共闘でスカーに対抗するという筋書きもこの設定からはありえたと思うのですが、プライド・ランドでの戦闘は意外と正攻法なのでシンバの特殊な経歴がほとんど反映されていないことは勿体なく感じました。

シンバが昆虫を食べて腹を満たすという逃げの理屈

冒頭、ムファサはプライド・ランドのすべての動物達からの尊敬と信頼を勝ち得ているが、肉食動物である以上は草食動物を食べなければならないという、自然の摂理にもちゃんと触れている辺りには感心させられました。「しましまとらのしまじろう」などで、肉食動物が捕食対象と馴れ合っている描写に猛烈な違和感を抱く私としては、捕食という問題にちゃんと向き合った本作の姿勢には好感が持てました(しまじろうのキャラ達は人間社会の投影であって、動物としての性質が追及されているわけでもないので目くじら立てても仕方ないのですが…)。

そうした筋の通し方があったからこそ、シンバの生育過程で草食動物と仲良くするために昆虫を食べて腹を満たすという逃げの理屈にはガッカリでした。ライオンが昆虫だけを食べて生きていけるはずがないし、逆にシンバのやり方で生きていけるのなら、他のライオン達も捕食をやめるべきではないかという理屈にも繋がっていきます。

冒頭にてサークル・オブ・ライフを高らかに歌い上げた以上、シンバも食べるべきものをちゃんと食べているということにすべきだったと思います。

まとめ

本作はアニメ版のファンが見るべき映画なんでしょう。懐かしのあの映画が、見た目を大きく変えてまた見られますよという。アニメ版を知らない人がいきなり実写映画として見ると、強引なストーリー展開やリアルだか何だか分からない映像について行けなくなります。

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