タコピーの原罪_なんでいい子なのに、なんで悪い子なのか、わからないっぴ【10点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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ファンタジー
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(2025年 日本)
配信開始と同時に凄まじい反響と評価を受けたアニメ。テーマの置き方、問題の捉え方、そして描き方、どれをとっても桁違いの傑作だと思うが、あまりに衝撃的すぎて心の疲労が尋常ではないのがネックかな。体調の良い時にご覧ください。

地上波で絶対放送できないやつ

基本、私はアニメに疎い。

なのでこのアニメも、原作の漫画のこともまったく知らなかったのだが、「IMDbでどえらいスコアを叩き出した」という記事と、全6話というコンパクトさにひかれて、どんな話かも知らないままNetflixで見始めた。

『タコピーの原罪』がアニメ史上最高の評価、世界最大級の映像情報サイトIMDbで(Forbes JAPAN 2025/8/14)

可愛らしいタコ型のキャラクターが、何かしらの問題を抱えていそうな子供と空き地で出会う第一話。

児童向けアニメの定番を踏襲したスタートであるが、「問題」と言っても、成績が悪い、運動が不得意、ちょっとおっちょこちょいといった些細なものが関の山。

そこにきて、よれよれのTシャツを着た主人公しずかの状況は、まぁ異様である。

そして帰り際にランドセルを背負ったしずかの姿を見て戦慄が走った。

ランドセルには「馬鹿」「生活保護受給者」などの落書きが。

こんなことを自分で書くわけもなく、酷いイジメに遭っている貧しい家庭の子供という設定が見えてくる。

のび太をはじめとしたこれまでの児童向けアニメの主人公たちにもいじめられっ子設定はあったが、せいぜいそれはわんぱくなクラスメイトから乱暴に扱われる程度のものであり、ここまで陰湿なものはかつてなかった。

開始十数分で「見てはいけないものを見てしまった・・・」との後悔が走ったが、物語の陰惨さはさらに加速していく。

「さすがにそこまではやらんだろ」というレベルを軽く超えてくる展開。

製作にTBSが関与しながらも動画配信に留められている事情がようやく分かった。地上波では絶対に放送不可能なやつなのだ。

可愛い絵面とのギャップで、衝撃度はさらに高まっていく。

意地悪なまでによく計算された作品だ。

そしてあまりに陰惨な第一話の幕切れに「このままでは寝付けない」と思った私は、救いを求めて第2話も連続再生。

結局、全6話を一晩で見終わったのだが、リアタイ視聴していた人たちは、一体どんな気持ちで一週間を過ごしていたんだろうか。

なんでいい子なのに、なんで悪い子なのか、わからないっぴ

  • しずか:いじめられっこ
  • まりな:いじめっこ
  • 東:陰ながらしずかの力になろうとしている優等生

主要な登場人物はこの3人。

しずかは被害者、まりなは悪人、東は消極的な善人という図式が誰の頭にも思い浮かんでくる。

純粋無垢なタコピーが東と共にまりなを改心させ、しずかの心の傷を癒し、やがて3人仲良くなってめでたしめでたしという流れを期待するところだが、物語はそんな視聴者の淡い期待を次々と裏切ってくる。

被害者であるしずかにも、優等生である東にも、性格の悪い部分がある。

どうやらタコピーは何もやり返してこない底抜けの善人(しかも頭が悪い)ということが分かった時点より、彼らのタコピーへの接し方がはっきりと横柄になるのだ。

また、東は純粋な善意からしずかのことを気にかけているのではなく、彼女が美少女であるから何とかしたいと思っている。

そして東の好意を感じ取ったしずかは、意のままに彼を操り始める。おそらく彼女は本能のレベルで男の転がし方を心得ている。彼女が女子のクラスメイト達からの攻撃対象となっていたのも、同性からそうした面を見抜かれていたからだろう。

最終話、二人との日々を過ごしたタコピーは困惑して言う。

「なんでいい子なのに、なんで悪い子なのか、わからないっぴ」

それが人間というものの厄介なところなんだよ、タコピー。

完全な善も、完全な悪も存在しない。状況や立場が変われば正邪は簡単に入れ替わる。

それゆえに我々はほとんどの問題を解決できないのだ。

答えのない問い ※ネタバレあり

そして最も厄介なのがいじめっ子のまりなである。

第一話を見た時には、こんな野郎は早く死ねばいいのにと思った。

こんな感想を持ったのは『ミスト』(2007年)のババァ、『ゲーム・オブ・スローンズ』(2011-2019年)のバカ王子ジョフリー以来のこと。

そう思った矢先に、こいつがアッサリ死ぬのだから驚いたのだが(作者は俺の心を読んでいたのか?)、純粋悪だと思っていたまりなにも、同情すべき背景があったことが分かってくる。

彼女の家庭は機能不全を起こしており、親の虐待の被害者でもあったのだ。

「私はこんなに大変な思いをしているのだから、他人にアタっていないと気が済まない」

彼女の心境はこんな感じだったのだろう。

子供では受け止めきれないほどの不幸を毎日浴びていたのだから、そうなったって仕方ないよねと思う。

しかしその刃を向けられたしずかからすると、溜まったものではない。

そしてしずかはしずかで辛い家庭環境の中にいて、ただひたすら耐えながら生きているのだ。

「では何を変えればハッピーになれるのか?」

タコピーは頭悪いので分からないと言って自分を責めるが、しずかだって、優等生の東だって、視聴者だって、誰も答えを見いだせていない。

描写的にドギツすぎるのが厄介だが、いつかうちの子供たちにも見て考えて欲しいと思う傑作アニメである。

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